【知財塾】商標権利化ゼミの感想
こちらの記事は、実際にゼミに参加された受講生に寄稿いただきました。知財塾ゼミへの参加をご検討されている方の参考になりましたら幸いです。
本ゼミは終了しておりますが、演習問題とゼミ動画のセットを、WEBサイトにおいて引き続き販売しております。ご興味がある方は、ページ最下部のリンクよりご確認ください。
1.はじめに
今回、知財塾の商標権利化ゼミ(以下、単に「ゼミ」とします)を受講しました、10ruといいます。アパレル企業で企業法務を担当しており、今回は、機会を頂いて、2021年5月から受講しました「商標権利化ゼミ」の感想をお話できればと思います。
私自身は、文系大学院卒(知財系)で、学生時代に弁理士試験の学習経験がありますが、実務としてのかかわりは、けして多くなく、自社のブランド名の登録にかかわる弁理士さんとのリレーション、出願・登録商標の管理、商標にかかわる相談(他社の権利侵害回避、侵害対応等)といったところです。
「けっして素人ではないけど、調査・出願実務の経験値を多く有しているわけではない」という中途半端なキャリアです。
そのような私がこのゼミを受講した理由・目的は以下の通りです。
・新規商標の調査を一次調査レベルで内製化して社内へのフィードバックを早めたい。
・侵害回避を目的とした調査は内製化しコスト削減を図りたい。
つまり、商標権利化の分野でプロになろうとしているというよりは、プロ(弁理士さん)にお願いしているところのスリム化を図って、業務効率・コスト削減を図りたいというものでした。結論からいうと、ほぼこの目的は達成できた、もしく、できそうな見通しがたったという感触があります。
2.ゼミ内容について
私が受講した2021年5月開講のゼミは、全7回(週1回)で最初のガイダンスを除けば、知財塾の一般的なカリキュラム通り「演習」が中心でした。なお、私は、過去のゼミも他の知財塾のゼミも参加したことがないのですが、少し日程的には、短い(詰め込まれた)日程とのことです。
初回は、ガイダンスで、ゼミ全体の流れや参加者(ファシリテーター、チューター、受講生)の自己紹介、ゼミのポイントの説明があり、以降の回は、基本的に、前回出された宿題をみんなで見せあい、ファシリテーターのフィードバックを受けつつ、質疑という流れです。宿題は、ファシリテーターが実際に実務で対応した生の事例となっていて、とても勉強になります。前半3回が類似商標調査(調査報告書の作成含む)、後半3回が意見書作成です。
なお、商標の基礎や特許庁DBの使い方は、習得している前提で進んでいきます。この辺りが不安な方は、事前にお伝えされたほうがいいと思います。
私が参加したゼミのファシリテーターは、Toreruの土野弁理士でした。土野先生は、物腰が柔らかく、丁寧な語り口で、とてもわかりやすく、お話も聞き取りやすかったです。質問もしやすい雰囲気でした。各人が提出する宿題に対しても、けして否定せず、どうやったら、この方針を維持しつつ良い報告書・意見書になるのかを一緒に考えてくださるようなフィードバックで、コーチング面でも、優秀な方なんだろうなと思いました。
また、文章の論理性・一貫性については、(受講者全員が思っていると思いますが)かなりしっかりと指摘を受けます。これが非常に良いと思います。報告書を書く側になって改めて実感したことですが、商標は、感性的な領域に踏み込みやすい、似ている・似ていないを取り扱うための、その適否に関して文章の論理性が非常に要求されます。説得的であるかという意味です。ゼミで取り扱う実務スキルも当然重要ですが、この論理性を磨くことができるというのが、このゼミの大きなメリットのひとつではないかと思います。
受講者は、4人で、技術系弁理士さんが2名、企業で商標実務を担当されている方1名でしたが、このバックグラウンドが異なる方々と学べるというのもゼミ形式ならではと思います。様々な論理展開、文章の工夫に触れることができ、また、そのバラエティに富んだ内容を踏まえて、先生のフィードバックがはいるため、先生の様々な知見に触れることができます。4人という人数も適切だったように思います。
宿題の内容は大まかに言って以下の通りです。
・調査編
弁理士又は企業の知財担当者となってクライアント・社内向けに、(例)〇〇〇〇という名称で、アパレルブランドを始めたい、〇〇〇〇の登録可能性について、調査を行い報告する。といった形です。最初から調査報告書を作成するというわけではなく、知財塾が用意する演習ステップに従って、検討項目に取り組んでいくと、報告書の骨子ができあがるようなカリキュラムになっているため、しっかりと段階を踏んで取り組めます。
・意見書編
シチュエーションは調査編と同じで段階として特許庁から既に拒絶理由通知(1回1通)が届いていて、これに対して、意見書で登録に進めていくというものです。こちらも演習ステップに従い取り組んでいく形になり、無理なく取り組めます。ここで、なぜ、意見書?という方がいらっしゃると思います。ここは私も最初少し「?」と思ったところですが、ゼミを通してみると、この意見書作成という演習があって、初めて調査編が血肉となっていくことを実感できます。
意見書は、審査官を説得するというプロセスであるため、調査段階の網羅的な情報を論理的に組み上げていく必要性が高まります。この情報を論理的に組み上げていくというプロセスを演習していくことで、調査すべき項目・集めるべき情報の取捨選択が洗練されていくと感じます。調査がより適切な範囲にチューニングされていくイメージです。土野先生はこのあたり強い拘りをもっていらっしゃり、今、わたしも同じ考えです。
全回、非常に質問も多く、毎回30分程度は延長していたと思いますが、こういったことができるのも、オンラインならではだったかなと思います。
3.ゼミへの私自身の取り組み方
私自身は、子供もおり休日は家族の時間も取りたかったため、可能な限り平日の休憩時間や終業後の時間を宿題に当てていました。私のような実務経験のない人間にとっては、宿題はけして楽なものではありませんでしたが、その分、得られたものも大きいと感じています。
仕事に関係する勉強には、幸い家族の理解も得られ、支障なく、本当に感謝していますが、ご家庭にはいろいろな事情があると思いますので、ご家庭のある方は、ちゃんと理解を得る必要があるかなと思います。オンラインということで、自宅で受講される方が多いと思いますし、夜8時30分スタートという時間は、子供を寝かせたり、明日の学校の宿題をみたりと、何かとそういう時間になりがちだと思います。私にとっては、子供と食事をいっしょにとることができる時間帯だったのでありがたい時間設定でしたが、人それぞれかと思います。
宿題に取り組むにあたって、特段、必要な参考書はなく、特許庁で公開されている審査基準・DB、無料の審決DB等でほぼ対応できます。ただし、私はこの機会に関連付けてインプットをしたかったので、宿題の内容に応じて、以下の3冊を参照していました。
商標審査基準の解説
商標の類否
商標登録制度の解説と意見書27例
こういった書籍を参照すると陥りやすい(実際、前半で失敗しました)のが、調べることに注力してしまって論理がよろしくないものになってしまうことです。調べた情報はどうしても書きたくなってしまうもので(普段の仕事もそうですが)、あくまで論理の裏付け・補足する情報として利用するという主眼を忘れず利用することが大事かなと思います。
また、宿題に取り組む際は、初期はやみくもに調べたり、自己流に書いてしまいがちです。
しかし、このゼミでは、先生の模範解答や同じ受講生の回答がGoogleドキュメントで公開されていますので、私は、よいなと思った文章・論理構成をコピペして、それをフレームとして、各項目を埋めていくという形で宿題に取り組んでいました。これは非常に有益だったと思います。写経のような感覚です。
加えて、仕事も家庭もあるなかでの受講であったため、なるべく、疑問点は、ゼミの中で質問することで解消するようにしていました。ほかの受講生の方も、そうされていたように思います。なお、ゼミのSlackチャンネルでも質問をすることはでき、この辺りのサポート体制も素晴らしいと思いました。
ちなみに、私は、ゼミの復習を、出社日の電車の中で、iPadで講義を聞くという形でしていたのですが、ゼミ中に質問をしておくと、動画にその部分が残るため、よりよく復習することができました。
4.企業法務担当が受講する価値
最後に、調査・意見書実務を主たる業務とされている弁理士さんではなく、企業の法務担当(知財も扱う)が受講する価値について触れたいと思います。私が受講しようとおもった目的については、先述の通りですが、受講してみて、私のようなキャリアの人間が受講する価値は、非常にあるなと感じました。
私の目的は前述のとおりだったのですが、上記の視点からは、弁理士さんの報告書を適切に確認できるようになる(素養ができる)点に、価値があると感じました。もちろん、プロの仕事ですので、その内容の正確性は前提として、本当に自社にとって適切な調査範囲・内容なのか、目的のビジネスにマッチしているのかという企業実務に落とし込むスキルがより磨かれたように思います。これを責任もって行うには、弁理士さんが、どういう工程で調査をし、意見書を書いているかを体感してみることが、実は一番の近道だと思いましたし、これを徹底して演習できる点に価値があるように思います。はじめる前には、あまり思っていなかった部分ですが、終えてみて、かなり重要な経験だったなと感じています。特に私のような中途半端なキャリアは、このあたり独りよがりになりやすいと思います。
審決、判例、アカデミックな知見を学ぶ場は、商標協会等、実はわりとあるのですが、それは商標実務の後工程であり、本当に大事なのは、前工程である「調査(付随する意見書作成)」であり、これを学び・習得することで、より価値のある商標の業務を所属組織に提供できるようになると実感しています。
以上、雑駁な内容になってしまいましたが、参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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