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弁理士不足の記事を見て感じたこと

こんにちは、知財コーディネート広場です。



「後継ぎがいないから、店を畳むことにした」
「農業は大変だから、なかなか若手が来ない」
「時給を高くしても採用することができない」



著者の住む埼玉県北部の近所でちょこちょこ聞く話、すなわち「人手不足」です。
実際に近所の歴史ある店が閉店してしまったり、採用に苦戦していたりと本当に苦労されているなと感じます。
近所の地域密着の焼き肉屋の店主は、アルバイトも採用できないと嘆かれていました。



人手不足の波は弁理士の業界にも広がっている

人手不足は、埼玉県北部だけの話ではなく全国的に問題となっていますし、人手が足りずに困っている業界も多いでしょう。そしてそれは弁理士にも当てはまります。
2024年2月14日の日経クロステックでは、以下の記事が掲載されていました。


特許庁が弁理士業界を取り巻く現状と将来予測を公開した。特許事務所に所属する弁理士の人数を予測したところ、10年後に最大で約1400人減少30年後に75歳未満の弁理士は最大で約3500人減少するとの結果が出た。背景には、弁理士の志願者が減っていることに加えて、若い弁理士が企業の知財部門を志望することがある。

出典元:日経クロステック


近い将来、特許事務所が弁理士不足に苦しむことを危惧しているのですが、以下、昨年末にNHKが公開した2050年人口減少・高齢化の最新データでは全国的に人口が減少し、高齢化が進む可能性は避けられないわけで、個人的に弁理士が不足してしまう状況に陥るのも致し方ないかと思います。




弁理士不足の解消のために今できることについて考える

人口減少による弁理士不足は避けられないことではありますが、一方で減少の度合いを少しでも下げたり、若い弁理士が企業の知財部門へ移るのを防ぐための取り組みはできるかもしれません。


今回、著者が現場にいた際に中小企業のお客様から人手不足の解消法や他社への流出を防ぐために何を行うかについて協議した際の情報や知人の人事部の話を踏まえ、3つに絞ってまとめました。業界は違いますし一部主観も入っておりますので、これが答えというわけではありませんが、、1つでも参考になれば幸いです。


1:キャリアプランとキャリアパスのバランス
若い弁理士が企業の知財部門を志望する理由の一つに、一人一人が己の生き方、あるいは働き方について、将来どのようになっていたいか?そのための具体的な目標を立てる…すなわちキャリアプランが描きやすい環境であることが挙げられます。



企業に知財部門があるということは、規模としてはそれなりに大きなところでしょうし、そういうところほど、優秀な人財の囲い込みの1つとしてキャリアプランを描くことに注力されている傾向があります。



もしくは将来的な成長や昇進の見込みを示すキャリアパスも必要かもしれません。この辺りをうまく活用することで、進むべき方向をより明確にさせ、モチベーションの向上に繋がることが期待できます。



なお、自分の同僚は社員1人1人に1年後、3年後、5年後…に仕事・プライベートでどうなっていたいかなどを紙に書いてもらっていました。ここに書かれたことは今自分がいる会社で実現することができるか?どのようにすれば実現に近づけるのかなどを話すことでモチベーションの向上と維持に繋がったそうです。



2:さらなる多様な働き方の実現へ
「ワーク・ライフ・インテグレーション」という言葉がここ数年「ワーク・ライフ・バランス」に代わり注目され始めています。



そもそも、ワーク・ライフ・バランスとは仕事とプライベートを両立できるように考えられた概念だと著者は理解していました。その背景には2008~09年頃に参加した株式会社ワーク・ライフバランスの社長の小室淑恵さんの講演会があります。



日本の生産性の悪さ、女性は出産や育児で仕事を辞めてしまうことも少なくないという話から、ワーク・ライフ・バランスを社内で実現させたことによって、結果生産性も高まり、家族との時間も増え、今自分のお腹には
2人目の子供がいるのだと幸せそうにされていた姿が印象に残っています。



しかし時代は変わり、仕事と生活は相反するものではなく、両方が人生の一部であり、統合的に充実させていくべきものだという考えが出てきており、それは若い世代ほど多い傾向にあるようです。



そのため、ワーク・ライフ・バランスだけではなくワーク・ライフ・インテグレーションが重要な要素となっています。ポイントは「柔軟な働き方」。弁理士の業界でも、リモートワークなど、働き方自体は昨今の新型コロナを機に変化をしておりますが、そこにフレックスタイム制などさらに進化させることで、若い弁理士たちの関心を引くことができるかもしれません。



すべてを行うのは大変です。そのため、できるところから段階別で行うことが大切になるかと思います。



3:より魅力的なイメージづくり
以下、特許庁が公開している令和に入ってからの弁理士試験の結果をまとめましたが、毎年合格率10%を切るほどの難関資格です。受験者の減少に伴い、最終合格者も減少しているのも分かります。



受験者をいかに増やすことが1つのポイントとなるでしょう。
(良質な教育制度を充実させることも必要になるのでしょうが、これはハードルがあがってしまいますのでここでは割愛いたします。)



2024年2月15日にPR TIMSで以下のプレスリリースが発表されていましたが、未来を担う子供たちに商標登録の仕事を体験させることで、興味・関心を持ってもらうためにとても大切な取り組みの1つだと思います。



キッザニアのように企業との連携を積極的に行うこともこれからはより大切になるかと感じました。



今できることと、将来的に必要となることへの準備の両輪で未来に備える

繰り返しですが、これらを行ったからといってすべての解消に繋がるわけではありません。そしてこの人手不足問題はあらゆる業界において共通の課題です。



とはいえ、何もしなければ、何も変わることもありません。
有名な言葉で「成功の反対は失敗ではなく何もしない」がありますが、今回もまさにそれだと思います。



弁理士の魅力を様々な方法で伝え続けることと、時代の変化に適応した働き方の実現。そして、人手不足を技術で補う=将来のAI(人工知能)の積極的な活用を考えていく必要もあるでしょう。



決して簡単なことでないのですが、まずは意識を持つこと。それで1つでも何か実践することができれば、それも大きな前進だと考えます。

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