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最初で最後(?)のとしまえん

私が通っていた大学は、
比較的としまえんに行きやすい場所だった。
しかし、いつでも行けるというのは
逆にいつまでも行かないもので……
(京都の人は世界遺産を巡らない、みたいな……)

先輩たちから遊びに行った、
という思い出話だけを聞いていた。
だから、振り子のように大きく揺れる
バイキングの乗り物があることだけは、
行く前から知っていた。
そのアトラクションに乗り続け、
とある先輩が酔って吐いた、という話を
飲み会の度に聞かされていたのだ。

そんなとしまえんが閉園する。
と知ったちょうどその時、
友人から行こう、と誘いを受けた。
そろそろ外に出て友達と会いたい。
そんな気持ちが手伝ったのと、
先輩たちが楽しそうに話していた思い出に、
ちょっとだけ触れてみたかった。

久しぶりのとしまえん駅は賑わっていた。
としまえん自体は、
実は冬季にやっている釣り堀だけ行ったことがある。
流れるプールでニジマスが泳いでいたのは驚いた。
しかも、餌はトウモロコシとビギナーもやりやすい。

豊島園駅の隣には映画館もあって、
学生時代はそこにもよく映画を観に行っていた。
ちなみに酔って吐いた例の先輩とも、
偶然駅でエンカウントしたことがあり、
流れで一緒に映画を観たりもした。
何かと思い出深い土地である。

乗り物はこのご時世、やはり回転が悪い。
間隔を開けて座るため、列はなかなか進まなかった。

代わりに満喫したのはあじさい園だ。
水色の丘と名付けられたそこは、
酸性の土らしく、水色のぼんぼんが咲き乱れる。
徐々に坂を登っていき、上から見下ろした時の
葉の緑と花の水色のコントラストは美しかった。

湿度は嫌いだが、水分を過分に含み、
潤む空気の中でこそ、
この花は美しいのだと思った。

唯一乗ったコースターは、360度回るというものだ。
せっかくだし思い出話のバイキング……
とも思ったが、時間が足りなかった。
何せひとつのアトラクションを乗るのに結構待つ。
仕方ないのだけれども。
それに何より、私は酔いやすい。
先輩と同じ末路を辿りかねない。

久しぶりに、健康的な汗のかき方をした1日だった。
歩いて、笑って、楽しんで。
帰る頃にはすっかりお風呂が恋しくなった。
これを書いてる今もめちゃめちゃ眠い。
それくらい、久しぶりな1日だった。

先輩は、としまえんに遊びに行くのだろうか。

今は連絡も取れないけれど、
8月31日まで開いているそうだし、
お盆でも間に合いますよ。

その時は楽しんでくれたらいいな、と。
優しくて面白くて、サークルの女房役だった先輩を
私は思い出す。


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