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【映画感想】パーフェクトデイズ

ジャン・レノの「レオン」と、ちょっと重なった。

レオンは、毎朝、観葉植物の鉢を大事に外に出して、なんとも無邪気な嬉しそーな顔で、映画を観るのが楽しみの殺し屋。

パーフェクトデイズの平山さん(役所広司)は、毎朝、小さな木の鉢たちに霧吹きで水をやって嬉しそうに微笑み、毎晩寝落ちするまで、浅草の古本屋で買った本を読む、慎ましい暮らしの公衆便所清掃員。

どちらも、人が眉をひそめる汚れ仕事を、完璧に遂行する。
そして、若い女の子に生きる力を与えていくところも。

出勤前の早朝の空や、清掃中のトイレに人が入ってきて、一旦外に出てちょっと見渡す景色、ベンチに腰掛けて昼のサンドイッチを頬張りながら見上げる木漏れ日‥ そういう時に、ふわっと微笑む平山さんの顔がとても好き。

植物の葉がゆれるのを見つめ、小鳥のさえずり、ハチの羽音に耳を傾けていると、この世界は、何とすばらしいもので満ちているのでしょう、と思います。

ターシャ・テューダー

ターシャさんのこの気持ちを感じる。
ドリアン助川さんの「あん」の映画を思い出す。徳江さん(樹木希林)が、生きていること、この世界の美しさを、ハンセン病の施設の片隅で、そうやって静かに一人愉しんでいらっしゃる美しい姿が、とても印象的だった。

でも平山さん、玄関のドアは、もうちょっと静かに閉めましょうね(汗)

たくさんの辛い事を経験して、日々、嫌なことがありながらも、だからこそ、小さなことに目を向けて、大切に温めている。

役所広司さんは、相変わらずかっこいいところへ、これまた、かっこいいお爺さま登場。三浦友和さん。

二人とも、久しぶりの煙草に盛大にむせるシーンは笑ってしまう😅お二人とも、散々喫煙の撮影シーンはあったでしょうけど、そんなカットは初めてじゃないかしら。そんな時代になったんだ、とも思った。

影は重なると濃くなるのか、というのを、実際に街灯で確かめようとしたり、その流れでかっこいいお爺さん二人で、影踏みを始めるシーンは、笑えて泣けてもう‥

かっこいいお爺さん、癌でも笑った‥ 良かった。
きっと忘れられない影踏みだと思う。そう、こういうのを、バカにしないで、恥ずかしがらないで、大事に本気なって楽しめばいいんだよね。公衆トイレの⚪︎✖️ゲームもびっくりだったけど。
ベンチから見上げる木を「友達」と言った。そう、自分が一方的に好きなもの、嬉しくなるものは何でも、「友だち」と思えばいいんだと思う。

スマホもパソコンも持たず、ネットを離れた暮らしの平山さん。
カセットテープでかける音楽はどれも好きだった。こんな音楽は、なんて世界と時間を素晴らしいものにするんだ!とつくづく思った。

平山さんが読んでいた本‥ 幸田文の「木」、ウィリアム・フォークナー「野生の棕櫚」を読んでみたいと思った。
古本屋の主人(犬山イヌ子さん)は、おそらくこの店内のどの本を取ってきても、的確な寸評をあの声でちらっと添えるんだろうな〜と思った。
平山さんのよく行く所は、そんな、いい場所ばかり

noteの方のつながりのおかげで、上映中のこの映画を知って、スクリーンで観ることができて、本当に良かった。
ここからまた、世界が自然に広がると思います。



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