憧れの成城石井くん

年が開けた1月20日のこと。
たまたまかかっていた「坂上&指原のつぶれない店」で成城石井の特集が組まれていた。
主に特集されていたのはお惣菜とスイーツだった。

今まで成城石井=高級スーパーのようなイメージを抱いていた。
一般人の私が踏み入れたら
「ひいっ、そんな高いもの買えない!」としっぽを巻いて店から逃げ出すしかないだろうと信じて疑わなかった私は好きな子に声をかけることができない少女のように成城石井くんを憧れの眼差しで見ていた。

だけどテレビで特集されていた商品の価格をよく見ると驚くような高さではなかった。
百貨店のお惣菜のほうが断然高いし、なんなら最近のコンビニのサラダやスイーツとほぼ同じくらいの価格じゃないか。テレビのおかげで成城石井くんのハードルは跳べるくらいの高さまでぐんと下がった。

キムチにウインナー、チーズケーキetc.
どれも美味しそう……。製造工程を見ているだけでパブロフの犬のように自然と唾液が口の中に現れてくる。もはや私には成城石井くんにアタックする以外の選択肢はなかった。会社帰りに行ってみよう! と思い店舗を調べたのだけれどなんと、自宅と会社の間には店舗が一切ないではないか! なんということだろう。成城石井くんへの恋、破れたり……。
残念だけれど今回はご縁がなかったということで一旦諦めることにした。

だけど運命の女神が突然私に舞い降りた。
それが昨日のことである。

仕事の関係で京都に行っていた私。仕事が終わって時計を見ると時刻は20時半を回っていた。今から自宅に帰ると22時は確実に過ぎる。朝から働いていた私に夜ご飯を作る元気なんて皆無。
「コンビニでスープでも買って帰るか」
そして地下鉄の改札にPitapaをタッチしようとしたその時、目の前に成城石井くんの姿を目撃したのである!

「これぞ運命!」
次に気づいたときには成城石井くんの目の前にいた。

店内に足を踏み入れたのはもちろん、人生で初めて。冷蔵ケースはまだ半分以上が商品で埋まっていた。夜ご飯を調達することに決めた私は早速、惣菜売場を探した。
この前テレビで放映されていたもので覚えているのは単品ばかり。コメンテーターのみんなは何が美味しいって言ってたっけ……? だいぶ薄まっている記憶を必死に手繰り寄せる。

「成城石井はお惣菜のレベルが高い」とか「スープが美味しい」とか言っていたような気がしたので、この時間だし、電子レンジで暖められるスープを一品、購入することにした。
数あるスープの中から私が選んだのは『12種具材のみぞれ汁』。
その日は朝から野菜をほとんど食べていなかった。昼の定食にキャベツの千切りがちょこっと乗っていたくらいだった。ということで、野菜がたっぷり入っていそうな、寒い夜にあたたまるスープを持ってレジへと向かった。

だけどその途中に成城石井くんは巧妙な罠を仕掛けていた。スイーツコーナーだ。成城石井くんに試されているとしか思えない導線。それに、洋菓子関係の仕事をしている私にとってスイーツコーナーは避けては通れない場所。
「……これも仕事の一貫だ」
正当性のありそうな理由を自分の中で立ててじっくりと冷蔵ケースを見る。
食べてみたい……。しかし時計を見ると時刻はまもなく21時。
夜中にスイーツを食べるのか、私!? 
ケース前で葛藤すること数分。私はある一つのポップを見つけてしまった。

テレビで紹介されました!

そのポップがついていたのは『生プレミアムチーズケーキ』。
気づいたら私の手にすっぽり収まっていた。
そしてスープとチーズケーキを両手に私はレジに並んでいた。恐るべし、成城石井くん。

お店は時間の割に大賑わいでレジに列ができていた。仕事の疲れを全く感じさせないような元気なお姉さんがお会計をしてくれ、ホクホク気分で電車に乗り込んだ。

このように見事、成城石井くんに出会った私。
自宅に帰って早速スープを温めた。
500Wで4分。次第にいい香りが漂ってくる。
電子レンジに呼ばれ、扉を開けると美味しそうなスープが完成していた。
大根、人参、ゴボウ、里芋、ネギ、こんにゃく……。根菜たっぷりの冬らしいスープ。みぞれ汁ということもあり、大根おろしがスープと絡む。あっさりめのスープは22時を過ぎた私のお腹に優しく入っていき、体の芯から温まった。

間髪をいれず、私は生プレミアムチーズケーキへとシフトする。
まずは上のビスケットをスプーンでひとすくい。ザクザクとした食感の素朴な味がする。続いて真ん中くらいまで生地をひとすくい。ビスケット、クリーム、チーズクリームが口の中で混ざり合う。これは、チーズケーキではない。これは、どちらかというと、チーズクリームだ!! というのが率直な感想である。
だけど生クリームをひたすら食べ続けることだって苦ではない超絶甘党な私にとって、生プレミアムチーズケーキはごちそうでしかなかった。
一口、二口とスプーンが進む。
生地には沢山のスライスアーモンドとレーズンが入っており、どこをすくっても必ず二つの食感に出会える。生地がほぼクリームだからこそ二つの素材が引き立っていた。

突如目の前に現れた成城石井くんは両手を大きく広げて私を迎え入れてくれた。
幸福感に溢れるお土産までくれるなんて、なんて素敵なんだろう!

これが私と成城石井くんとの出会い。

明日は梅田に繰り出す。その目的の半分は成城石井くんに会いに行くことというのは、夫には内緒だ。

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