見出し画像

[詩] 発掘された死

本棚を整理してたら、古いノートが出て来た。
開いてみると、たぶん二十歳前後に書いた詩などが書いてあるノートだった。

昔書いたポエムとか恥ずかしいものなのかもしれないけど、あまりに昔すぎて、もはや自分が書いたものとは思えず。

このくらいの年齢にしか書けないものってあるよなーと感慨深く読み返すのでした。
自虐的というかなんというか。

それから、今よりずっと字がキレイで驚きだった(これでねww)。
このころはまだ、パソコンはあったけどスマホはないし、基本的に紙に字を書いてたんだなと思う。

ちょっとそれっぽく加工したりしてみた。
よかったら見てください☆


吸血虫

小刻みに体を震わしてお前が私の腕に止まった。
別にそれ程うっとうしくもなかったので
お前のしたい様にすればよいと、
私はお前が私の血液を吸う様を見ていた。

お前が私の血液を吸ってふくれてゆく。
お前がそうして私の体内の血液を吸ってふくれてゆく。
私の精神が私の血液と共に、お前の方へと流れて
お前の横で私の体は老人のようにしゅうしゅうとしぼんでしまう。

そういう光景を見ていながら、
お前も私もそれを止められなかったのは、
じりじりと夜がせまっていたからだろうか。

私の血液を吸いつくしてお前は、
その巨大にふくれあがった体を
ふらふらともちあげてもどってゆく。
私の血液を消化しきれずにお前は

そのほとんどをはき出してしまって
ふらふらと自分のおさまる場所へもどってゆく。

お前はお前でもう何処かへ行ってしまった。
そんな事でも、
私は私でここにこうして
ミイラの様に横たわっているだけだった。



暗幕がおりている。
私の横には女がいて
彼女は絶え間なく喋っている。
私は彼女の話に耳をかたむけようと
一応は努力する。
しかし、
彼女があまりに早口なものだから
聞き取ることができない。
それでどうも彼女が鬱陶しく
思えてくる。

幕はまだあがらない。
幕があがれば
舞台の中央に立って、
私は私の芝居をすればよいのだ。
そして彼女の喋っていたことは
すぐに忘れてしまうだろう。



彼女はいつでも私の真後ろに立って
まっているのです。
長いおさげを自慢気にたらし、
赤いワンピースを着た彼女。
右手には大きな風船をもって
私がそれを見るのを
まっているのです。

彼女の風船は空へのぼってゆくでしょう。
私はいっその事、
それを見てしまおうかと思うのです。
手ばなした風船は高く高くのぼって
もう二度と
もどらないのです。



 午前三時二十五分。東京のとあるオフィス街で、コンクリートの壁にあいた穴に人差指をつっこみ、気難しい顔をしている男がいた。
 ゆびがぬけない!!
 穴は直径約二・五センチ。不運にもこの男の人差指と全く同じ太さだったのだ。
 彼は三時間以上もこの穴と戦っている。
 じりじり指を動かす方法で抜こうと思うのだが、指がびったり穴に張りついてびくともしない。おまけにうっ血がひどくてますます窮屈になってくるしまつだ。
 男は意を決して力任せに引っぱった。
 バリっとものすごい音がした。
 彼はぎゃっと声をあげ、息をのむ。
 大失敗だった。
 今や彼の人差指は小さな穴の中で、二倍にも三倍にもふくれあがり、ドクドクと波うつ異様な生命体へと姿を変えた。
 ああ、誰かはやく、はやく助けて!
 そうして男はさめざめと泣くのだった。



この最後のやつは、詩ではなくてショートショートです。

何て雑誌か忘れちゃったんだけど、文芸雑誌の投稿コーナーで毎回お題が出てそれに沿った文章を投稿する、というのをやってました。
割と採用されて載っていた記憶…。

これは「痛い」ってお題だったような気がするけど、そんな危険なお題出すかな???忘れちゃったww

当時はハガキに書いて出したりしてたな。
でも今とやってること同じwww

以上、発掘された詩でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?