[詩] 発掘された死
吸血虫
小刻みに体を震わしてお前が私の腕に止まった。
別にそれ程うっとうしくもなかったので
お前のしたい様にすればよいと、
私はお前が私の血液を吸う様を見ていた。
お前が私の血液を吸ってふくれてゆく。
お前がそうして私の体内の血液を吸ってふくれてゆく。
私の精神が私の血液と共に、お前の方へと流れて
お前の横で私の体は老人のようにしゅうしゅうとしぼんでしまう。
そういう光景を見ていながら、
お前も私もそれを止められなかったのは、
じりじりと夜がせまっていたからだろうか。
私の血液を吸いつくしてお前は、
その巨大にふくれあがった体を
ふらふらともちあげてもどってゆく。
私の血液を消化しきれずにお前は
そのほとんどをはき出してしまって
ふらふらと自分のおさまる場所へもどってゆく。
お前はお前でもう何処かへ行ってしまった。
そんな事でも、
私は私でここにこうして
ミイラの様に横たわっているだけだった。
夢
暗幕がおりている。
私の横には女がいて
彼女は絶え間なく喋っている。
私は彼女の話に耳をかたむけようと
一応は努力する。
しかし、
彼女があまりに早口なものだから
聞き取ることができない。
それでどうも彼女が鬱陶しく
思えてくる。
幕はまだあがらない。
幕があがれば
舞台の中央に立って、
私は私の芝居をすればよいのだ。
そして彼女の喋っていたことは
すぐに忘れてしまうだろう。
死
彼女はいつでも私の真後ろに立って
まっているのです。
長いおさげを自慢気にたらし、
赤いワンピースを着た彼女。
右手には大きな風船をもって
私がそれを見るのを
まっているのです。
彼女の風船は空へのぼってゆくでしょう。
私はいっその事、
それを見てしまおうかと思うのです。
手ばなした風船は高く高くのぼって
もう二度と
もどらないのです。
穴
午前三時二十五分。東京のとあるオフィス街で、コンクリートの壁にあいた穴に人差指をつっこみ、気難しい顔をしている男がいた。
ゆびがぬけない!!
穴は直径約二・五センチ。不運にもこの男の人差指と全く同じ太さだったのだ。
彼は三時間以上もこの穴と戦っている。
じりじり指を動かす方法で抜こうと思うのだが、指がびったり穴に張りついてびくともしない。おまけにうっ血がひどくてますます窮屈になってくるしまつだ。
男は意を決して力任せに引っぱった。
バリっとものすごい音がした。
彼はぎゃっと声をあげ、息をのむ。
大失敗だった。
今や彼の人差指は小さな穴の中で、二倍にも三倍にもふくれあがり、ドクドクと波うつ異様な生命体へと姿を変えた。
ああ、誰かはやく、はやく助けて!
そうして男はさめざめと泣くのだった。
この最後のやつは、詩ではなくてショートショートです。
何て雑誌か忘れちゃったんだけど、文芸雑誌の投稿コーナーで毎回お題が出てそれに沿った文章を投稿する、というのをやってました。
割と採用されて載っていた記憶…。
これは「痛い」ってお題だったような気がするけど、そんな危険なお題出すかな???忘れちゃったww
当時はハガキに書いて出したりしてたな。
でも今とやってること同じwww
以上、発掘された死詩でした。
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