[コラム] 言語の海原を渡る:オノマトペの話
ダウン症の息子の繋がりで面白い絵本を教えてもらった。
「あいうえオノマトペ:ことばを育てる絵本」
元はカードだったそうだ。
オノマトペというのは、風がびゅーっと吹く、とか、犬がワンワン鳴く、とかの、音を言葉で表現したものだ。
日本語だと擬声語という。
オノマトペは言語を習得中の子たちに入って行きやすい。
小さい子とお話するときは、「雨降って来たね」と言うより「雨がザーザー降って来たね」と言う方が伝わりやすいのだ。
言葉の習得がのんびりな息子は3歳のころから言語指導を受けている。
言語指導というのは、言語聴覚士の先生が遊びながら言葉の発達を見てくれるもので、特にそれで言語の勉強をしたり能力を伸ばしたりするものではない。
なんだけど、先生と言葉に繋がる遊びをしているうちに、少しずつ成長してるのが見れて面白い。
その言語指導の時間でもオノマトペが多様される。
「コップ取って~」と言われても「?」という感じが、「コップ、ごくごく、コップ取って」と言われるとわかる。
そんで、それを何度もやってると、そのうち「コップ取って」だけでわかるようになってくる。
この絵本の著者の石上志保さんは言語聴覚士であり、ご自身のお子さんもダウン症だということだ。
そんな親子の生き生きとしたやりとりの経験が、この本の中に反映されている。
子どもたちはアッとゆう間にこの絵本に夢中になって、何度も「読んで~」と持ってくる。
もうすぐ3歳の娘にもぴったりの絵本だった。
ひらがなが大きく書かれていて、五十音全て出てくるので、文字の練習が始まっても活躍しそうだ。
絵もわかりやすくて、息子はすぐにポーズを真似し始めた。
とってもおススメなので、ぜひどうぞ。
ただし、尋常じゃない盛り上がりを見せるので、寝る前に読むと大変なことになる(我が家では)。
・・・・・
というわけで、今日は、オノマトペについてちょっと掘ってみたいと思う。
日本語はオノマトペが多い言語だそうだ。
韓国語はさらに多いそうだ。
極東は多いとかあるのかな??
我々の生活の中にはオノマトペが溢れている。
あまりに当たり前に使っているので、普段は全く意識してないよね。
学生時代、イギリス人の先生に、日本語のオノマトペ、特に同じ音を繰り返す言葉を集めてるんだけど教えて!と言われたので、どんどん出してたら「何なの!?無限にあるの!?」と驚かれた記憶。
英語にもオノマトペあるでしょう?と聞くと、同じ音を繰り返す言葉はこんにはない、かわいい…とのことだった。
英語で日常的に使っているオノマトペは200前後という情報もあったけど、実際はどうなのだろうか。
汽車の音は choo-choo(チューチュー)、ちりんちりんは tinkle-tinkle(ティンクル ティンクル)。
これらは歌にも出てくるから馴染みがある。
英語でも繰り返しの言葉はいろいろありそうだけど、何となく子どもが使う言葉が多いイメージがある。
日本語のオノマトペは正確にはわからないが、4000~5000語ほどあるらしい。
日常で使っているのは1500程度だとか。
そのうち、繰り返し言葉はどれくらいあるのかな?
とにかく大量にあるね。
あわあわ
いがいが
うずうず
えんえん
おどおど
かちかち
ガビガビ
きりきり
ギザギザ
くるくる
グスグス
けばけば
ゲラゲラ
ころころ
ゴボゴボ
さらさら
ザクザク
しくしく
ジンジン
すべすべ
ズルズル
そわそわ
ゾクゾク
たんたん
ダラダラ
ちりちり
つるつる
てかてか
デロデロ
とろとろ
ドクドク
なでなで
にかにか
ぬるぬる
ねばねば
のろのろ
はらはら
バクバク
ひりひり
ビンビン
ふわふわ
ブクブク
へろへろ
ベシベシ
ほくほく
ボウボウ
まるまる
みしみし
むらむら
めらめら
もふもふ
やれやれ
ゆらゆら
よれよれ
らんらん
りんりん
るんるん
れろれろ
ろ…?
わらわら
をろをろ
んがんが
あれ? 「ろ」がないのか?
「ろうろう」はオノマトペじゃないよね。
と言いつつも、「ろれろれ」とか無理やり作ることも可能だ…。
この類のオノマトペを揚げ連ねて傾向を調べたら、何か法則みたいのはありそうな気もするが、やる気は起きない。
まじで無限にあるのでは…。
そして、これらのオノマトペは永遠に繰り返しても意味が通じたりする。
ガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシガシ…とか。
・・・・・
繰り返し言葉以外のオノマトペもいろいろある。
私は「ギャーン」とか「ずーん」とか「どじゃーん」みたいな言葉が好きだ。
こちらが思い描いている情景をうまく表現してくれる言葉だと思う。
このように、ふざけた言葉はあまり真面目な文章には出てこないけれど、それでも我々の心身にはオノマトペが染み込みまくっている。
学術的な内容の文章にもオノマトペは出現する。
意外とこれ、オノマトペじゃん、という言葉も大量にある。
「あっさりした味付け」
「がっかりしたよ…」
「もう、うんざり」
「あたふたしてる」
「うっとりと眺めた」
「どんよりとした空」
「ひんやりとした感覚」
オノマトペはどこにでも出てくる。
何しろ古事記にも出てくる。
これらは韓国などから入って来た言葉もたくさんあるだろうし、縄文人たちが使っていた言葉もあるだろう。
前に縄文遺跡で、縄文人たちが作った縫い針や釣り針などを見て、「これを作った5000年前の人の脳は既に我々と同じだな」と感じたことがあった。
何故なら、それが今でも使えるくらいに同じものだったから。
同じ文脈の中にいる…と強く感じたんだ。
現代人の私が見ても、すぐに用途がわかるそれらの道具。
これを作った人となら、話ができそう!
そう思うと、縄文人たちがどんなふうに喋っていたのか、俄然知りたくなるよね。
それはもう、タイムマシンを使わないと知りえないことなんだけど、私の妄想は暴走する。
縄文人たちが作ったものをガン見しながら、彼らと会話したい!と思うのだった。
彼らに「つるつるだね!」とか「トゲトゲだね!」とか言って通じるだろうか?
ぐぬぬぬ~。
そして私は世界中のオノマトペが知りたい!!!!!!!
誰か私に全時代の全言語をインストールしてくれ。
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