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[ショートショート:SF] アオレス - 解凍 - #春弦サビ小説
小説のサビ部分。つまり盛り上がるところだけを抜き出して書く試みです。
唐突にいろいろ出てきますが、物語の前後を妄想しながら読んでいただければ幸いです。
soundwsさんの楽曲『アオレス』からインスピレーションを得て物語を書いてみました。
いつ明けたのかわからない
オハヨで始まる四角い世界
重ねるメッセージ
ゆるむ口元
どんな顔してるのかな
おしえてくれ 好きな歌
きかせてくれ 君の物語
僕らはまだまだ
知らないことだらけ
今日は何をしよう oh yeah
こちらの歌には、元となったお話もありますので、ぜひこちらも読んでから。
アオレス - 解凍 -
その日も目覚めると同時に僕は四角い部屋に入った。
K&Rの生体情報モニタは相変わらずこの二つの個体が深い眠りについていることを示している。
観察窓から覗き込むと、二つの塊が手を握り合って体を寄せ合うようにガチガチに固まっているのが見えた。
「お姫さまたちはまだ目覚めないか…」
つぶやきながら僕はギターを構える。
それから昨日の夜に思いついたリフレクションを弾いてみた。
それは彼らの音楽でもよく演奏されていた変則的な反射を使った技法だ。
僕の出した音が四角い部屋を飛び交い増幅してからK&Rの外部音取込装置まで届く。
中では相当な音量となっているはずだ。
だけれども彼女らの脳波は微動だにしなかった。
これも違うか…。
僕は一旦ギターを降ろすと端末を取り出し資料室を呼び出した。
種類別に整理された彼らの音楽の中から、彼女らが奏でたと思われる範囲のリフレクションをランダムに取り出す。
今回取り出されたのは僕も初めて聞くようなリフレクションだった。
フィルターを通しても精神に作用してきそうな強烈な振動。
さっそく僕はそれを何度も聞き、コピーした。
彼らの音楽は難しい。僕らの音楽とはそもそも概念がまるで違っている。
僕のような専門家にも再現できないものはたくさんある。
だからこそ、僕はK&Rがどんなリフレクションに反応するのか知りたいのだった。
彼女らの琴線に触れる音とはいったいどんなものなのか。
「おしえてくれ 好きな歌 きかせてくれ 君の物語」
僕は言いながら覚えたてのリフレクションを弾いた。
かなり激しい音だった。ギターの弦が切れるかもと思った。
それでも僕は弾き続けた。
僕は見逃さなかった。
Kの脳波が少し反応したことを。
ほんの少しだけど、一瞬。反応した。したように見えた。
あまりに激しく弾き過ぎて、僕の指から血がしたたり落ちた。
すごく痛かったけれど、僕の口元はゆるんでしまった。
いけるかもしれない! ここで止めてはダメ…!!
そう思った瞬間、バイーンと音がして弦が切れた。
モニタを見ると、Kはまたいつもの状態に戻っていた。
そもそも、脳波が変化して見えたのも気のせいだったのかもしれない。
そう思えるほどに、KもRもいつものままだった。
僕はがっかりして部屋に戻った。
弦を張りなおす気力はひとまずなかった。
薄暗い部屋の中で端末を起動すると、K&Rを取り巻く周辺の情報をダラダラと閲覧した。
こいう何てことない中にヒントがあったりするんだ。
僕はもう一度、K&Rが作ったとされるリフレクションを見返した。
情報の隅に映り込んでいた音楽の破片。
僕はしばらくK&Rが書いたとされる記号を眺めて、ふと思いついて、音楽を表しているとされている他の記号と見比べてみることにした。
彼らは音楽を奇妙な図面で表現することが多かった。
はっきりと音楽のものだと解っている図面だけでも膨大にある。
そもそも音楽を図面で表すなんて正気の沙汰ではない。
解読する方の身になってほしい。
音楽の図面には長い横線がよく出て来るのだが、K&Rが書いたものにはなかった。
K&Rが残した音楽の情報は、記号だけで構成されている。
これが解読が困難になっている原因の一つでもあった。
音楽は図面以外でも表されることがある…。
ズラズラと並んだ記号の上に「E」とか「A」とか他でもよく出てくる記号が書かれている。
…これがヒントなのは間違いないが…。
その時、僕の頭に一筋の閃きが舞い降りた。
僕は端末を操作すると、図面と実際のリフレクションが正確に紐づけされている音楽を探した。
そして、それらを図面を見ながら、同じ記号が出てくる部分を繰り返し演奏してみた。
そして僕はわかってしまった。
この「E」とか「A」とか、その他「D」や「E」といった記号は音を表しているのだ。
時々「A」や「B」とあるのに違う音が鳴っているリフレクションもあったが、概ね、「A」とあれば、この音…。
ジャーンと僕はギターを鳴らした。
僕はついに、K&Rが書いた暗号の謎を解いたのだ。
これは本当にK&Rを目覚めさせることができるかもしれない。
僕は希望に胸を膨らませながら、再びK&Rの元に向かったのであった。
いつ明けたのかわからない
オハヨで始まる四角い世界
重ねるメッセージ
ゆるむ口元
どんな顔してるのかな
おしえてくれ 好きな歌
きかせてくれ 君の物語
僕らはまだまだ
知らないことだらけ
今日は何をしよう oh yeah
あとがき的な
soundwsさん、はじめましてです。
よろしくお願いします。
soundwsさんの曲を聞いて、「四角い世界」というところに興味を持ちました。
四角い真っ白な部屋にいるところを想像したんですね。
そこから発展して思いついたのは、四角い白い部屋で、まだ見ぬ君が目覚めるのを待っている君のお話でした。
そんな妄想を繰り広げていると、この歌には元となったお話があるのだとsoundwsさんの記事から知りました。
早速よ見に行くと、遠く離れた二人の女の子が音楽を通じてコンタクトを取り、実際に会いに行くというお話でした。
この要素は盛り込まないといけないよな…と思いながらこんなお話になりました。
もっと続きを、K&Rは目覚めるのか…とか、K&Rはどんな者たちなのか…とか、soundwsさんの物語「アオバス」とどう繋がるのかとか、そもそもここはどこ? とか、いろいろ考えたのですが、サビには入りきりませんでした~。
soundwsさん。インスピレーションをありがとうございます。
何でもSFやファンタジーに変換してしまう癖があります。
飛躍御免です。
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