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[ショートショート] どうする?睦月行っちゃう? - 釜揚げ師走

「師走がいない」

 霜月が慌てた様子で入って来た。

「トイレじゃないの?」

 葉月が言った。

「いや、どこにもいないんだ」

 やれやれと、みんなはゾロゾロ連れ立って師走の部屋へ向かった。

 霜月が言う通り師走はどこにもいないようだった。

「どうする?睦月行っちゃう?」

「いやまずいっしょ」

 みんなが集まってくると、急に師走の部屋のテレビがついて不鮮明な映像が流れ始めた。

 徐々にピントが合い始めると、それは煮えたぎる巨大な釜であることがわかった。

「あ!師走だ!」

 弥生が言った。

「何やってるんだ?あいつ…」

 師走は釜の上に逆さに吊るされていた。そして次の瞬間、師走を吊るしていたロープが伸びて、彼はドボンと煮えたぎる湯の中に入ってしまった。

 あまりの光景にその場にいた全員が凍りついた。

 数秒後、師走をくくりつけているロープがが上がって師走が湯から出て来た。彼は真っ赤な顔をして「はぁあぁ〜んん」と妙な声を出した。

 その表情はなぜだか恍惚感に浸りきっていた。

 みんなは黙ってその光景を見届けると、くるりと向きを変えて師走の部屋から出ていった。

「あ、ちょっとみんなどこ行くの?師走を助けないと」

 霜月が慌てて言った。

「大丈夫、ほっといても帰ってくるよ」

 葉月が振り返って言った。

 みんなはため息をついて元いた場所へ戻って行った。

 霜月が振り返って再び画面を見ると、ちょうど師走が熱湯からもう一度持ち上げられて「はぅううわぁ〜」と声を出しているところだった。

 …釜揚げ師走…

 霜月は、師走が帰って来たら何をしていたのか問い詰めようと心に誓うのだった。

(666文字)
トリプルシックス…


たらはかに(田原にか)さんの『毎週ショートショートnote』に参加します。

※画像は「師走」でAIに作ってもらった中で意味不明だったやつです。

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