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コロナがもたらす産業二極化

 6月に入り会社もようやく通常営業になった。

 とは言っても以前と全く同じではなく、出社時間の時差化やオフィスの占有率低下(全員が同じ時間に事務所にいない様に)と言った対策は残った。「通常営業」ではあるが「通常出勤」ではないのだ。客先でも同様のことが起きており、実態経済が復活したとは感じられない印象で、会社によってはアポイントすらなかなか苦慮しているのが実情だ。

 我が社でも様々な業態の顧客と話をする機会があるが、業態によってそのニュアンスは驚くほど異なる。当たり前と言えば当たり前だが、観光、飲食店と言った業態はかなりトーンが低い。

 その反面、清掃や消毒、メディカルの様な業界はコロナ禍により注文や仕事が激増しており、受注単価を含めてうなぎ上りになっており口調にも勢いがある。

 リーマンショックと比較されることがある今回のコロナ禍だが、業態や企業によりその影響が異なっているため、一口に比較しづらいのではないかと言うのが私の感想だ。

 コロナ禍がもたらしたものは「人の移動の減退」であり、消費の減退はその「結果」として出てきた影響だ。例えば電鉄や空輸などの人の移動に関わる業態は、リーマンショック時は影響が少なかった。もちろん多少の消費抑制はあっただろうが、移動については特に控えるものでもなかった。

 鉄道業の方に話を聞くと輸送客の減少が如実だが減便は許されないため非常に厳しいとのことで、「今回はリーマンショックを超えている」との話であった。ところが、同じ運輸でも「物流」と言う観点では全く逆で、店頭で販売する小売りが激減した結果インターネット通販による宅配はすこぶる調子が良く、ぐんぐん伸びている。

 不動産についても同様に物流は調子が良い。住宅も特に変化は今のところ感じられない。

 消極的な意味で最も変調を感じるのはホテルや民泊と言った観光セグメントや外食産業だが、オフィスも一部減床の兆しがある。

 オフィスについてはコロナによる業績不調で人員削減や事業縮小ももちろん出てくるとは思うが、現段階では減賃交渉以外の面で大きな下落が見えているわけではない。しかしながら業績自体は変わっていなくとも今回のコロナ禍をきっかけに半ば強制的に進んだ「働き方改革」により、オフィススペースが今ほどなくても充分に事業がまわることを実感した企業も多い。

 特にIT系企業では今回のコロナ禍により需要が爆発的に伸びた企業もある一方で在宅ワークとの親和性の高さも目だった。会社に来なくても仕事できるじゃない、と言う声を最近はIT系企業でなくとも良く聞く。以前であれば会社のおじさま方が自らのサラリーマン観から猛反発していたかもしれないが、そんな反対勢力の声を聞く間もない非常事態だったため一斉に移行し、馴染んでしまった。

 もちろん業態によっては馴染まないし、在宅すると効率が落ちる仕事もあるので一律で論じることはできないが、働き方がまるっきり変わってしまった業態があるのは事実だろう。

 ようやく緊急事態宣言も解除され、企業活動も復活に向かっているが、コロナ禍を契機に色々な観点で二極化が進行したのは事実ではないだろうか。

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