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逃げ道づくり

健診で対応した保護者の方から、苦情まではいかないまでもご意見をいただきました。

自分の担当しているお子さんではなかったので、同僚や先輩にフォローをしてもらうという…。

「健診の時の保健師に、うちの子に障害があると言われた」

(もちろん 障害 という言い回しはしていないですが)自分としてもそれなりの信念を持って、健診時の対応をしているので、正直堪えました。

こうなってくると、自分の信念が間違っているのかも…と揺らいで久しぶりに帰宅途中に泣きました(汗)

それが昨年末のお話。


私が目指すところは、決して保護者を追い詰めることではないはず。なのに結果として保護者を追い詰めて、保健センターにご意見せざるを得ない状況に陥らせてる。

そういう保護者もいる、と簡単に片付けられるかもしれませんが、ここを素通りしてしまうと、これからも同じことを繰り返す気がする…。

思いが強すぎる?

以前、上司に「思いが強すぎる」と指摘をされたことがあります。

日常の業務内で、私が一番関心がある分野は、発達支援です。他の職員と比べると、たしかに思いが強すぎるのかもしれません。

その強すぎる思いが、支援に支障をきたしてるのかも。

自分で振り返ってみます。

・子どもさんの特性を伝えたい
・健診の場で出来る限りのことをしたい
・保健師だから言えることがある
・保護者を傷つけることだって当然ある
・自分の子どもの育ちを指摘され不快にならないわけがない
・それでも「大丈夫」という言葉は絶対に使わない

改めて考えると、傷つける覚悟を持って伝える という姿勢は、保健師としては立派?なのかもしれないけど

その覚悟を持っている保健師に指摘される保護者は、私を恐ろしく感じるでしょう。だって怖いもの知らずで、保健師としての正義をぶつけてくるわけですから。

正論を武器にしない

ご意見をいただいた保護者には共通点がありました。

それは健診の場面で、お子さんの育ちを私と共有できていたということ。

私が感じたお子さんの特性を伝えると「私もそう思ってました」「ああ…なんか納得できます」と反応されていた親御さんだったのです。

私も「あ、伝わったな」と安心してしまい、こんな教室があるよ、こんな相談があるよと、伝えられることを伝え切ってしまいました。


話が変わりますが、私は図書館戦争という小説が好きで、何度も読み返しています。そのシリーズの中で印象に残っているセリフがあって。

「正論は正しい、だが正論を武器にする奴は正しくない。お前が使っているのはどっちだ?」

今回の自分の失敗を振り返ってるときに、ふと頭に浮かんできたのです。私が使っているのは、どっちなんだろう。

ホイ

以前の記事でも紹介させてもらった、中田洋二郎さんの書籍があります。

昨日、少し読み直してみたのですが目に止まった文章がありました。

すべての保護者が障害のある子どもの支援を何よりも優先できるとは限らない

そうなんですよ。お子さんの育ちを気にしているどころじゃない家庭もたくさんありますし、一見大丈夫そうに見えても、とても繊細な保護者の方もいらっしゃいます。

私が良かれと思って身につけた覚悟は、逃げたいと思う保護者をしつこく追う という態度につながったのだと思います。結果として保護者を追い詰める結果となりました。


また話が変わるのですが、私は守り人シリーズというファンタジー小説が大好きです。何度も読み返しています。今回の出来事でその内容を思い出した箇所がありました。


ある商人一行を護衛している主人公。盗賊が潜んでいると思われる街道を通る際、商人達に指示をします。

「ある程度相手を痛めつけて、向こうに弱気が見えたら合図をするので、慌てたフリをしながら、荷物を1つ、2つわざと道に落として逃げてください」

「ホイ(捨て荷のこと)は、迷っている盗賊の気持ちを、うまく後押ししてくれる大切な役割を果たす。やられっぱなしの無駄骨ではなく、多少荷が手に入れば、盗賊の頭の面目もたつ。」

「面目を保ったまま退却できる道をつくってやるのです」


今の私に必要なのは 保健師から退却できる道を残すこと なのかもしれません。

正当化しない

市民の方からご意見をいただくと、どうしても自分達を正当化したくなります。

こちらにはこちらの事情があったのだから…まったく。

でも、正当化してたら何も変われないんですよね。

自分達が間違っていたのではないか
もっと良い方法があるのではないか

公務員てだけで、何を言っても良いと思ってるお客様住民の方の対応をすることが多いので、正当化の癖が身についてしまっているのも良くないですね。


時には凹むこともありますが、凹まないまま無敵の保健師になるのは本意ではないので…

これからも偉そうに意見を述べてみたり、ブーメランで自分に返ってきたり、言ってることが変わったりすることがあると思いますが、

未熟なちいたろを、2020年もよろしくお願いいたします。


参考