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Electric Light Orchestra(感想)1976-1986年_作品が充実していく全盛期から活動休止まで

ELOおよびJef Lynneがソロでリリースしてきた1976-1986年までのアルバムの感想などを。
1975年までアルバムについての感想はこちら


A New World Record

[1976年] (全英6位・全米5位)
ELOを代表する曲をどれか1曲選べと問われたら、私の最も好きな「Telephone Line」(全英7位/全米8位)の収録されている1枚。

そのほかにも「Livin' Thing」(全第4位/全米13位)、「Rockaria!」(全英9位)、「Do Ya」(全米24位)と、シングルヒットが多く、構成はドラマチックでバリエーション豊かだがアルバムとしてのまとまりも良いので耳馴染みが良い。

キャッチーな曲が多く、未だに稀に聴きたくなる愛聴盤ではあるのだが、少し評価に悩むアルバムで、それはコーラスやアリアなどのアレンジが、本作の前後に発売されたアルバムと比較してしまうと、少し野暮ったいというか洗練されていないからだと思われる。なので、個人的には好きだけれども他人には推奨しづらいアルバム。
なお、ELOのカラフルなトレードマークが、今作ではじめて登場。



Out of the Blue

[1977年] (全英4位/全米4位)
オリジナル盤となるレコードでは2枚組でリリースされ、本作以降ストリングスの使われる曲が減っていったことも含め、ELO絶頂期にしてひとつの到達点となる1枚と思われる名盤。

1曲目の「Turn To Stone」 (全英18位/全米13位)」の疾走感から期待感を煽る掴みとして完璧の導入。いわゆるレコード盤時代のA~D面それぞれの構成だったり、全曲を通しての流れもよく出来たアルバムで捨て曲無し。

「Sweet Talkin' Woman」(全英6位/全米17位)のメロディーラインは美しいし、動物みたいな声やパーカッションなどが混沌として楽しげな「Jungle」も好き。

特に好きなのは、レコード盤C面、Concerto For A Rainy Dayと題されたパートで、ドラマチックな展開の「Standin' In The Rain」で仕切り直し、「Mr. Blue Sky」(全英6位/全米35位)なんかは、未だにラジオで稀にかかるのを耳にするのはアレンジも緻密に考えられて、楽曲として洗練されているからだと思う。

そうしてD面のはじまり、「Sweet Is The Night」(全米17位)のポップセンスも素晴らしいし、ラスト曲の「Wild West Hero」(全英6位)の哀愁を含むエンディングまで飽きさせない。

本作では声をロボットボイスに加工するボコーダーが多用されていて、かつては古臭いエフェクトのイメージがあったと記憶していると思うのだけれども、時代が回ってそういうイメージが払拭されたのも本作が聴きやすい理由のひとつ。
Daft Punk「One More Time」あたりが転機だったかもしれない。


Discovery

[1979年](全英1位/全米5位)
グループからストリングス担当メンバーを解雇し、シンセサイザーを多用したことで、過去作のような壮大な曲は無くなる。アルバムタイトルが「very disco」をもじったものというだけあって、ディスコ調の楽曲が多い。

これだけの路線変更を行ったら従来のファンから見放されそうなものだが、4曲のシングル・カットを含み、ELOとしてのチャートアクションやセールス面では最も成功したとされるアルバム。『Saturday Night Fever』が1977年だったことを考えると、うまくディスコ・ブームの時流にのっかって、新規ファンを取り込むことが出来たのかもしれない。
いずれにせよ、前作に続き捨て曲無し。

本作で一番好きなのが「Last Train To London」(全英8位/全米39位)で、印象的な低音のイントロ、そして美しいストリングスとキャッチーなメロディーが調和している。
「Shine a Little Love」(全英8位/全米6位)も高揚感のある曲で、少し古臭さを感じるがむしろ、それがかえって良い。ボコーダーが多用された「Confusion」(全英8位/全米6位)も印象的な曲。

本作には全米でのELO最大のヒットシングル「Don't Bring Me Down」(全英4位/全米3位)も収録されている。
そのせいか、本作以降の作品ではヒット狙いのロック路線の曲がシングル・カットされるようになり、それなりにヒットもする。
しかし、いわゆるストレートなロックンロールを聴きたい気分のときに、「じゃあELO聴こうかな」とはならないから、私個人としてはポップ路線に振り切った作品の方が好みなのでそこだけは残念。


Xanadu

[1980年] (全英2位/全米4位)
同名映画のサントラとなり前半4曲がELOの曲で、5曲目以降はOlivia Newton-Johnの担当となっている。

楽曲の路線は前作『Discovery』の延長線にあって、「I'm Alive」(全英20位/全米16位)、「All Over the World」(全英11位/全米13位)、「Don't Walk Away」(全英8位)がシングル・カットされてヒットしているが、4曲全てが充実した作品になっていると思う。
ポップでドラマティックな構成、そして甘美で完成度の高いメロデイーは、これぞELOともいうべき作品で、あらゆるELOの楽曲のなかでもかなりお気に入り。

シングル・カットされた「Xanadu」(全英1位/全米8位)はOlivia Newton-John & ELOとクレジットされており、Olivia Newton-Johnの担当する6曲目以降には、ヒットした「Magic」(全英2位/全米4位)なども含むのだが、無難にまとまり過ぎているのがアルバムトータルとして惜しい。
映画も数年前に昔DVDをレンタルして観たはずなのだが、内容が頭に入って来なくてほとんど記憶に無い。


Time

「Twilight」(全英30位/全米38位)は後期のELOを象徴するような曲で、透明感のあるシンセサウンドとコーラスが特徴的。

ディスコ風の曲は無くなってポップ路線に振り切った作品となる。丁寧につくりこまれたシンセサウンドは聴きやすく、Jeff Lynneの声の良さが際立つスロナンバーの「Rain Is Falling」や、エレクトロ・ポップな「Here Is The News」など、好きな曲も収録されているが、アルバムとしての評価を考えたとき前作までの勢いは失っているように思う。

「Hold On Tight」(全英4位/全米10位)はヒット狙いのロック路線となるが、アルバムトータルの流れからすると少し違和感があるのも残念。


Secret Messages

[1983年] (全英4位/全米36位)
前作同様にエレポップ路線をさらに押し進めている1枚だが、前作よりも暗い曲が多い。
つくりこまれた「Secret Messages」 (全英48位)や、犬の吠える声が突如挿し込まれる「Loser Gone Wild」の美メロや、素朴な哀愁のバラード「Letter From Spain」は好きだが、通して聴きたい気分になりづらい。
私の好みとしてはELOにロックンロールを求めてはいないので、シングル・カットされた「Rock 'n' Roll Is King」(全英19位/全米13位)、「Four Little Diamonds」(全英84位)のような曲に違和感を感じるからかもしれない。

Jeff Lynneは本作をレコード2枚組でリリース予定だったがレコード会社からの反対にあったらしい。
そのため、2018年にはオリジナル盤のリリースから35年ぶりに未収録だった6曲の追加されたバージョンが発売されている。
「Hello My Old Friend」は佳曲だと思うが、1990年に発売された3枚組のベスト盤『After Grow』に収録済だったこともあって残念ながら目新しさは無いから、ファンのためのコレクターズアイテムだと思う。


Balance of Power

[1986年] (全英9位/全米49位)
前作から3年のブランクの後にリリースされたアルバムで活動休止前のアルバムとなる。
メンバーはJeff Lynne、Bev Bevan、Richard Tandyの3人だけになってしまい、ベーシストのKelly Groucuttと指揮者のLouis Clarkも本作には参加していない。
シンセサイザーメインの尺が3~4分程度のポップソングの寄せ集めで、キラキラした80sサウンドのため、そういうのが好きな人にはむしろ聴きやすい1枚。

ストリングスが多用されなくなり、シンプルなつくりの曲が多いため、70年代後半のELOが好きな人にはとっつきづらいかもしれないし、ヒットしたのは「Calling America」(全英18位/全米28位)くらいで他人に薦めづらい。しかし、私がELOのアルバムの中で最も繰り返し聴いてきた1枚でもある。

明るい曲調で疾走感のある「Heaven Only Knows」から「Sorrow About To Fall」に向けて徐々にトーンダウンして行き、海の底に沈んでいくような「Without Someone」が聴き応えあって好きな曲。そこから一転して軽快だけれども男女のすれ違いを歌った「Calling America」へ繋がり、ラスト2曲もポップでそれなりに聴ける。

Jeff Lynneの声にはハリがあるし、シンプルなポップソングのお手本のような楽曲はメロディーの良さも際立つ。
私の場合、アナログシンセ特有のピコピコした音が好きなせいか、何かELOを聴こうという気分になったとき、気軽に聞き流せる本作を選択することが多い。
うまく説明しづらいのだが、例えるならば物凄く旨いとは思わないが、ついつい通ってしまいがちな中毒性の高いカレー屋のようなものか。

ちなみにカバーデザインの、EとOが目で、Lが鼻になっていることに気付いたのは購入してから数年経ってからだった。

ページが長くなってきたので、続きは次回以降。

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