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ティル・ナ・ノーグⅡ カオスの警鐘(感想)_前作からのキャラクター引き継ぎが嬉しいRPG

『ティル・ナ・ノーグⅡ カオスの警鐘』は1988年にシステムソフトからPC-9801用に発売されたRPGで『ダーナの末裔』の続編。前作を所持しておらずともプレイは可能でそもそも物語の連続性は薄いが、前作のクリアデータからキャラクターを持ち越せるのが最も良いところだと思う。
以下、感想などを。

主人公キャラの3人組み込みが可

シナリオをランダムに生成させるか、10桁のコードを入力することでゲームをプレイすることは可能だが、本作では『ダーナの末裔』のクリアデータを引き継いでプレイが出来るから、自分で育てたキャラを持ち越せるからその方が楽しめる。
データを引き継がずにプレイしても主人公がLV20でスタートするからゼロから育てる楽しみも薄まる。

データを引き継いでも一旦パーティは解散しているからかつての仲間たちとの再会は冒険中に偶然出会うことになるが、自分で名前を付けたり育てたりしたキャラクターが不意打ちで登場して、仲間に入れてくれと懇願されると少し嬉しい。
基本的には主人公1人でのプレイ開始となるが、前作クリア後のエピローグで結婚したキャラクターがいたなら、初期パーティーへ組み込まれていたりもする。

しかも、クリアしたシナリオデータは3本まとめて引き継げるため、かつて主人公だった英雄妖精を3人同時にパーティへ組み込み可という、これがドラクエだったらひとつのパーティへ勇者が3人というカオスな状態だが、このゲームの英雄妖精は抜きん出て強いわけでもないため、ゲームバランスに影響は無い。
むしろ仲間に加えようものなら戦闘時のアイコンが被るために戦況を把握し辛いというデメリットの方が大きいくらい。

バランスは前作の方が良かった

大まかなゲームシステムは前作の延長線となるが、いくつか目立つ変更点がある。

  • 世界が結界によって分断されている

  • 冒険中イベントの増加

  • 城や町がマップ表示に

本作で最も残念なのは結界によって世界が分断されたことで、フィールド上の探索範囲に制限が出来てしまったこと。

前作では地上のフィールド上であれば障害物さえ無ければどこへでも好きに行けたので探索する楽しみがあったが、本作の結界内はせいぜい迷宮が2つと城または町がひとつある程度の狭い範囲内をウロウロしなくてはならない。
結界を越えるのは基本的にはワープポイントのみとなり、ゲームとしてはほぼ1本道を進むことになるから自由度はむしろ前作よりも減った。
そのため、消費したアイテムがよろず屋で手に入れたものだったなら、在庫は購入した町に復活するため、再度そのアイテムを手に入れたいと思ったら一本道を辿って元の町へ戻ったりと面倒だ。

冒険中のイベントが増加したこと自体は単調になりがちなゲームへの刺激として良いことなのだが、生成されるシナリオごとにほぼ似たイベントが発生するため繰り返しのプレイには向かない。
城や町が視覚化されたことで、迷宮の隠された入り口があったりするのは良かったが、並びが違うだけで画一的なので欲を言えば町ごとに規模を変化をつけてもらいたかった。

ゲームの難易度は相変わらず高く、コボルトやダークエルフのように仲間を呼んで無尽蔵に湧いてくる敵に出会うと戦闘に終わりが見えなくてかなり厄介なのと、前作よりも麻痺や病毒などの状態異常にしてくる敵が多いために序盤は半分以上の確率で状態異常にさせられて、いちいち魔法で治癒させるのが面倒。
その上戦闘AIあまり賢くなくて、状態異常は治癒してくれないくせに火力の低い攻撃系の呪文を乱発して魔力を消費するため、面倒でもいちいち行動の指示をした方が効率は良い。しかしそれも手間なのでお任せで放っておくとすぐに全滅するから、戦闘をお任せにするなら一戦ごとにセーブすることになってテンポが悪い。

そのためフィールドや迷宮の探索は、全滅を避けるためヤバそうな敵からは撤退することが多くなるし、宝箱はキラーボックスばかりとなんだかストレスがたまる。
さらに、迷宮は至る所に階段があるために来た道を記憶しておかないと、同じところをぐるぐる回遊する羽目になって、そんな時に状態異常になってしまうと来た道を忘れて発狂しそうになる。
戦闘系の魔法は消費量の割には効果が弱くて魔力の回復手段が少ないため、パーティの種族が戦闘系に偏りがちになるのもなんだか納得がいかない。

前作からのデータ引き継ぎ

そんなにも不満があるならプレイしなければ良いのだが、当時はこういう理不尽なゲームバランスのゲームはたくさんあったからそういうのに比べればむしろ楽しめた方だと思うし、現代よりもゲームの単価が高かかったら多少の不具合には辛抱強くプレイしたものだ。

それにデータを引き継げるメリットがやはり大きくて、前作で一緒に戦ったキャラクターと偶然どこかで出会えるのはやっぱり嬉しい。
プログラムを実行するシステムディスクとは別に、冒険の記録をフロッピーディスクへ保存出来るおかげで、愛着のあるキャラを続編でも使用出来る仕組みというのは画期的だった。
当時、ファミコンなどのゲーム機では純正だとハードウェア側にセーブ機能が無い。だからROMカセット側のバッテリーバックアップでセーブすることになるが、その場合ゲームを跨いでのキャラクターのやり取りは出来ない。

また、同時代のPC-98のゲームのキャラクターの引き継ぎ出来るゲームというとソーサリアンやウィザードリィがこれに近いが、『ティル・ナ・ノーグ』には種族のバリエーションの多さやそれらとの偶然の出会いなど独特の魅力がある。
各キャラたちの背景の解説やセリフが最小限で、突発的に起きるイベントはあっさり終わるために物語性は皆無に等しいが、そのあたりはプレイヤーが頭の中で補完すれば良いし、むしろその方がプレイしていない時に想像が膨らんで楽し合ったりする。
物語の終焉となるラスボスを討伐後のやりこみ要素(ウィザードリィのレベルUPやレアアイテム集めなど)や、さらなる続編にもキャラクターを持ち越せたらなお良かったと思うが、残念ながらそれほどは売れなかったのかもしれない。


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