はてしない物語の先に
本との出会い、本がその人の性格までも変えてしまう。主人公バスチアンは冴えない男の子。そんなバスチアンが一冊の本との出会いによって、めまぐるしく変化していきます。これは本の中のはてしない、はてしない冒険物語です。
この本に出会ったきっかけは、元々読もうと思っていた、ミヒャエル・エンデの作品『モモ』を探していて、気になって一緒に購入しました。本をネットで買う時には、できるだけ内容を知りすぎないように、レビューを最小限に見て購入するのですが、『はてしない物語』は装丁の美しさに触れている方が多かったので、ハードカバー本を購入しました。届いた本は重厚で、ワインレッドのカバーがとても綺麗な本でした。この中にどんな冒険があるのかと、読む前からワクワクします。
実際に、本を読み進めていくうちになぜ、この装丁になったのかがわかります。ちなみに日本語版の装丁が一番だと、作者ミヒャエル・エンデは言っていたとか。
物語序盤はゆっくりと現実世界と本の中の世界を行ったり来たりしながら、進んでいきます。物語が進むにつれて、主人公バスチアンは本の中の世界に入り込みはてしない冒険の旅に出ます。そして冒険の過程で彼はみるみる変わっていきます。それは、望みと引き換えに記憶をどんどん無くしていくから。最初は変わりたいと思っていたバスチアンが、どんどんなりたい自分になって、明るく前進していく姿に快感を感じるのですが、記憶を無くすのと同時に彼の中にあった大事なものもなくなっていきます。
自分の中にあるコンプレックス。忘れてしまいたい、辛いことや悲しいことも、それがあったからこそ乗り越えようと努力したり、新しいことに挑戦できたり、喜びを感じたりする。だから、忘れた方がいいと思えることもきっとなんらかの栄養源になっているじゃないかなと一人考えました。
最後自分自身すら忘れてしまったバスチアンが本当に大事なものに気づくことができた瞬間涙が出ましたね。感情も無くなってしまう恐ろしさから、こうして何気なく過ごしている日常こそ大事なものだと感じさせてくれます。
『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ作 上田 真而子/佐藤真理子訳
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