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かんがえーる!

高校の頃、皆が恐れる名物先生がいた。年齢的には一度退職して再雇用されていたと思うから、おそらく70歳近い先生だったと思う。

その先生の口癖が「考える!」だった。「〇〇さん、あなたはどう思いますか?」と生徒を当てて、生徒が黙ったり、わかりませんというと、「考える!」「考える!」と連呼した。当てられた人がなにか答えるまでは授業が進まなかった。
発音も独特だし(「かんがえーる!」という感じに近いだろうか)、もともと目力が強く顔の濃い先生だったので、その人にじっと見られて「考える!」と連呼されると、相当プレッシャーだった。みんな当てられないようにと願っていたと思う。目をそらすとたいていその人が当てられるし、かと言って真剣に聞いてます!感を出しても当たるし、どういう態度で臨むかが難しい。
さらにあくびをすると、「お前はいま、二酸化炭素を余分に出したんだぞ、わかるか」と、すごい剣幕で怒られた。本当は半分ジョークだったかもしれないが、真顔で言われるので怒っているのか、そうでもないのかよく分からなかった。

高校の頃は正直とても苦手な先生だったが、「かんがえーる!」が、あのすごいインパクトのお顔と共に、社会人になってから、ふとしたときに浮かんでくる。肝心の授業の内容は全然覚えていないのだけれど。

コロナで社会の流れが変わり始めて、これからどうしたらいいんだという不安がみんなを襲った。コロナ以前からだったが、ネットでの見えない攻撃も加わって、ギスギスしてどんよりとした空気が取り巻いていた。
どうしよう、誰の言ってることが正しいんだろう、ということばかり考えると人間はダメだ。自分で考えないとダメなんだ。検索して出てくるものはある人にとっては正しいかもしれないけど、ある人にとっては間違いだ。参考にはできるかもしれないけど、鵜呑みにすると、自分は何を大事に考えてていて、何を本当に良いと思うのか、わからなくなる。
だから「考える」なのだと思う。私はどうしたいんだろう、、、考えなきゃ、考えなきゃ、と思うと、「かんがえーる!」と大きな声が聞こえてくる。本当にそのとおりだ。先生の言っていたことは正しかった。

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