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裏庭でささやかに ワイン造り

ジョージアのワイン造りの根底にある考え方が、私たちのやろうとしていることにとても近い。大酒飲みらしいジョージア人は、”自家消費用のワインを自分たちで造る”という。世界最古のワインとワイン文化発祥の地は、ワイン造りという考え方に、とてもシンプルで、気持ちがよいのです。

FireShot Capture 001 - Gaioz Sopromadze  - (株)ラシーヌ  RACINES CO,.LTD. - racines.co.jp

ジョージアのクヴェヴリワインと食文化という本を手にとってページをめくるたびに心が晴れていくような気がしました。家裏の庭に、花や他の植物と一緒に育っているブドウたち、ブドウを育てる支柱も、森や林から切り出してきたような自然のもので、しまいには、コンクリート造の醸造所なんぞはなく、裏庭の地中にクヴェヴリを埋めて、そこでワインができるまで待つという姿。

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よく勘違いされるのですが、私たちワイナリーをつくることにあまり興味がありません。日本の場合は、ジョージアみたいに簡単にワインを造ることができないから、ワインを造る=ワイナリー(酒類製造免許)となってしまいます。

酒類製造免許
酒税法第7条第2項において、種類別に1年あたりの最低製造見込数量(法定製造数量)が定められている。免許取得後1年間に製造しようとする見込数量がこれに達しない場合は、免許を受けられない。また、実際の製造数量がこれを3年間下回ると、免許取り消しとなる。ワイン(果実酒)の場合は、年間6キロリットルという数量が定められています。750mlの瓶に換算すると8000本を造ることで免許がおりるのです。

そのためには、原料であるブドウを集め、醸造量と保健所の検査に耐えうる設備を整え、生産過程におけるあらゆる投資が必要になってきます。最初からボトル詰めしたワインを販売することが目的であれば、避けては通れぬ道なのです。

シンプルにささやかなワインを造る

私たちは、もっとシンプルにささやかなワインを造ることに興味があります。自分たちの手でブドウを育て、発酵させ、アルコールへと変えて、身近な仲間や、旅の人たちと、その恵みを分かち合い、宴をともにする。古い時代から人々の暮らしや文化に根付いてきたことをやってみたい。

ジョージアのように、「今年は村の〇〇のワインが一番美味かったから、空の容器を持って分けてもらうぞ」と量り売りで地域に根付いたワインができたら楽しそう、そんなことを思ってブドウを育てています。

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ワイン造りの抜け道

今年ようやく農家民宿として自宅に人を泊められるようになりました。前の話に戻るのですが、酒類製造免許にはちょっとした抜け道があるのです。

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特区法による酒税法の特例 

農家民宿や農園レストランなど「酒類を自己の営業場において飲用に供する業」を営む農業者が特区内の自己の酒類製造場で「濁酒」又は「果実酒」を製造しようとする場合、には、一定要件の下、1から3までは最低製造数量基準を適用しないこととされ、これら特区法上の酒類の製造免許を受けるためには、特区法上の要件と酒税法上の最低製造数量基準以外の要件を満たす必要があります。

要するに、うちに泊まりにくるお客さま向けに造られるワインは最低製造数量基準を適用しない=ワイナリー的な規模や設備でなくてもワイン造りができるということ。

焦ってワインを造っても

うちにいる子たちは、まだまだ”ひよっ子”のブドウたち。例えワインができたとしても、ボトル詰めして販売するなんて、おこがましいのです。旧世界のワインや新世界の開拓の姿を見てきても、美味しいワインは時間をかけてゆっくりと育てていくもの。私たちは、焦ってできたワインを、世の中に送り出すよりも、まず自分たちや周りの人たちに届けながら、あーでもない、こーでもないとその年の出来を語り合い、高めていくようなワイン造りを行っていこうと思っています。

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とはいえ、まずはブドウをしっかり育てることから。ワイン醸造はもう少し先ですが、歩くようにゆっくりと進む私たちでよければ、グラスをともに語らうことはできるので、気が向いた方は、佐渡へ遊びにいらしてください。

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