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“桃尻”供養をいつの日か─ももんが忌に寄せて

「我々は、一千年の昔に、たった一人でこんな物語を書き終えてしまった『紫式部』と呼ばれた女性に対して、こう言えばよいのです。
『紫式部さん、どうもご苦労さま』と。
そのつもりで私は、この文章に対して、『源氏供養』という題を与えました。
『紫式部さん、どうもご苦労さま』と、私は多分、この一言が書きたかったのだと思います。」

橋本治『源氏供養(下)』

橋本治の『源氏供養』が復刊したので、読み返している。
これが復刊したのも大河ドラマ「光る君へ」のおかげだろうけれど、今のところ私の中では橋本治の『源氏供養』は「光る君へ」を食っている。橋本治の『源氏供養』は源氏物語論であるはずなのにそれにとどまらず、読んでいると「紫式部」という人間の体温を感じられるような気がする。難解な言葉もなく、読むのに一年もかからないのに紫式部その人を感じられるような。
橋本治は紫式部についてこんなにすごい文章を書いたのに、橋本治が紫式部を書いたように橋本治を書く人はまだいない。それに最も近いのは千木良悠子さんだろう。『はじめての橋本治論』が3月に出版予定だ。

「橋本治が紫式部を書いたように橋本治を書く」というのは言わば「橋本治になる」にも近いことだから、今の私からしたら果てしなく遠い道。でもいつか必ず自分の文章で橋本治に『ご苦労さま』って言えるくらいになりたい。

今日この日だからこそ素直に言いたい。『源氏供養』はとてもいい本だから読んでください。


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