見出し画像

橋本治『二十世紀』

上巻・下巻とも1ヶ月ずつかかって読みました。まだ戦争は終わらない。
この戦争は長期化するだろうということがわかってきました。戦争というのは、始まってしまえば、“どう終わらせるのか”が重要で、早く終わればいいというものでもないジレンマもあることも。

侵略戦争なんてもう死語だというのが世界の共通認識だと思っていたところに、この前時代的な侵略戦争は始まりました。しかも、今回は日本も知らないふりをしていられないほど近く、いつの間にか巻き込まれるかたちでどんどん渦中に入っていくようです。
この戦争は今になって突然始まったものではなく、長い歴史の延長線上にあって、私はその歴史を知りませんでした。知りたくて、この本を読みました。戦争はまだ終わらず、歴史にはまだ知ることがあると感じます。この本が描く100年は、歴史の中ではあまりにも短いので。

未来を考えるために、過去を知りたい。私にできることはあまりない。日々仕事に邁進し、自分と周りの人を考えて、本を読む。できることは少なくても、目は閉ざさないように、自分の声を大事にしたい。声を出すべきときに、ちゃんと声を上げられるように本を読んで、知って、考える。その日々を積み重ねていくことを大切にしたいと思います。

「この本は、私がこれまでに書いた本の中で、最も個人的な本です。どう個人的かと言えば、子供の頃の私が、『自分の生きている社会はどっかがへんだ』と思っていて、『どんないきさつで“こんな時代”になったのだろう』ということを、最も強く知りたがっていたからです。」
「私の二十世紀論はそこからしかスタートせず、そこに戻って行くだけのものです。もし自分の一生で本が一冊だけ書けるのなら、そのことを書きたいとだけ思っていた──ということが、この仕事を引き受けた時に分かりました。」
「『なんかへんだ』と思い、どうやって自分と時代との間で折り合いをつけようかと思い、結局は、『独自の道』と言われるような方向にしか行かなかった。『行くんなら“そっち”じゃないの?』と言うのは、私の中に健在の子供の声で、大人になった私は、いつも『二十世紀』とは一線を画して、と同時に、それでいいのか悪いのかを検証し続けていました。私にとっての二十世紀はそういう時間で、二十世紀が終わった時、『やっぱりあの疑問は正しかったんだ』と言えるようでありたいと思っていました。その結果がこの本です。私にとって、この本はそのように“個人的な本”なのです。
書き終わった今、『もう安心して二十一世紀を生きていけるな』と思います。それが、二十世紀を終えた私の一言です。」

橋本治
『二十世紀』


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?