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好きなものだけあれば後はなんにもいらない
「『金色の他には、自分の好きな燕子花しかない』─なんという思いきりのいい絵であろう。そういうものを見てしまった10歳くらいの橋本治は、『この絵だけあれば他になんにもいらない』と思って、その他の日本美術なんかないことにしてしまったのである。自分で言うのもなんだが、これほど《燕子花図屏風》の本質を射貫いてしまった感想もなかろう。『好きなものだけあれば後はなんにもいらない』である。バックが金色だと、その『なんにもいらない』が許される。すごい思いきりである。尾形光琳の《燕子花図屏風》を見た10歳頃の私は、そのインパクトによって、『思いきりだけで生きて行ってもいい』という、無謀なるその後の人生方針を確立してしまったらしい」
(『ひらがな日本美術史4』)
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