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私のドタバタ婚活記①

私が婚活することを思い立ったのは30台も半ば、世間ではギリギリとか手遅れとか言われている年齢のときだ。
私はその頃実家暮らしというか家事手伝いとは名ばかりのニートだったのだが、30歳を過ぎた辺りで家庭内のゴタゴタが片付き、一息つけたのが結婚を意識しはじめたきっかけだ。
うちは両親が不仲で、子供は私のほかに障害者のきょうだいが一人いて、私が20歳の頃に一時的に精神を病んで、その流れでニート化していた。
そんな中、私が20代前半の頃に母方祖母、つまり母の実母の介護問題が発生した。
私の母と祖母は折り合いが悪かった。
母がかつて今で言うところのヤングケアラーであったことが主な原因だ。

そういう事情であったから、その頃の母の精神的負担は多大だった。
母は主婦としては優秀だったが、精神的ストレスを感じると私に依存する癖があった。
もしここで母のケアを怠れば、介護が必要な祖母、障害者のきょうだい、家事でも介護でも碌に役に立たない父、倒れた母を抱えるという、詰みルートに入ってしまう。
祖母が亡くなり、障害者のきょうだいがいずれグループホームに入ることを希望し、ニートで時間だけはあったため、両親が不仲や所謂きょうだい児だったことによる精神的な傷を、内省し続けることである程度治したと実感できた頃には既に30代半ばを迎えていた。

今なら配偶者になる人にそれほど迷惑を掛けないかもしれない。
私は地方在住で周りに独身男性が少なかったので、まずはネット婚活をすることに決めた。
立てた作戦はこうだ。
まず最終目標は長期的な関係を築けるパートナーを得ることだ。
条件は二つ。
・人として好きになれることと、相性が良いこと。
幾ら相性が良くても、付き合っていくうちにすれ違うこともあるだろうから、そのとき関係改善・維持のモチベーションを保つのに相手のことを好きだという感情が重要なると考えたからだ。

プロフィールは正直かつ自分の特徴がよく出るように書く。
相性の良し悪しを判定するのに、無難に誤魔化すのは意味もなく効率も悪い。
登録するサイトは安全性、信頼性はもちろんだが、会員の人数が出来るだけ多いところにする。
私が一般ウケしないスペックなので、出会う可能性の母数が多くないと難しいからだ。

良さげな婚活サイトを調べ上げ、候補を2つに絞ったところで、1つに絞るのにどちらも決め手に欠けて、私は迷った。
こういうことは不慣れなので、最初は出来れば1か所だけに登録したかった。
どうしようかとサイトのトップページを眺めていたとき、登録前に既に登録済みの会員のお試し検索が出来るシステムが目についた。

そういえば、結婚相手を探しているのであって、サイトと結婚するわけじゃないんだから、いい感じの人がいそうな所がいいよね、結婚後に就職しやすいように都会に住んでる人がいいかな、せっかく不利になるのを承知で身軽さ優先で無職の状態で始めるんだから…

そんなことを思いながら検索をかけると、興味深い人がいた。
お試し検索ではプロフィールの書き出しの部分が見れるようになっているのだが、真面目なのが多い中で、一人だけ「やっほ~い☆」みたいなノリの男性がいた。
一見ふざけているが、よく読むと洗練された計算が感じられた。
私はここのサイトに登録することに決めた。

まず手始めにプロフィールの項目をきちんと埋めた。
自由形式の部分は、誰かには受けるだろうが引く人は引くだろう、自分の特徴を書いた。
相手への条件は、自分より低身長ok、バツあり子ありokと緩めにした。
自分が低スぺなのは自覚しているが、それでも出来るだけいい人とマッチングしたい。
いい人なんだけど、ここだけがネックで、なかなか相手がいなくて…という男性も視野に入れるためだ。
年収は少し迷ったが、最初は400万以上で。
高望みかなと思ったが、婚活している女性たちの経験談では、希望収入をだんだん下げていくと、そのくらいの収入辺りからまともな男性が増え始めると聞いたので。
駄目そうだったらもっと下げようと思っていた。
それと私のプロフィールをきちんと読むと、現時点で収入はなさそうだが、かと言って家事をしっかりやるタイプでもなさそうという、地雷ポイントが分かるように書いておいた。
そうするのがお互いのためだ。

一通り自分のプロフィールを書き終わると、当初のここのサイトに登録するきっかけになった、件の男性のページを見にいった。

……は?

私は困惑した。
例えるなら、婚活というフィールドに出て、まずはレアなスライムを探そうとしていたら、ラスボスを攻略しないと出現しないはずの裏ボスがいたときの気持ちである。

私の当初の計画は、まず自分の特徴を強調したプロフィールを書いて、どんな男性からメッセージが来るか傾向を調べ、それを参考にして相性が良さそう且つ好きになれそうな男性に、自分からメッセージを送るというものであった。
すぐに見つかるとは思っていなかった。

いきなりこんなのがいるとは思いもしなかった。
私は真剣に立てた計画が音を立てて崩れ去るのを感じた。

②に続く

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