見出し画像

【書籍紹介】新・家庭医療専門医 ポートフォリオ実例集

家庭医療専門医の認定試験で必要となる『ポートフォリオ』。

レポートとも違う様式で何を書けばよいのか、何を評価されているのかと戸惑う方も多いのではないでしょうか。
そんな方々の悩みを解決してきた頼りになる1冊が、このたび改訂し、さらにパワーアップされました!

画像1

前版『総合診療専門医 ポートフォリオ実例集』は2018年の刊行で、日本プライマリ・ケア連合学会の書籍展示で第1位の売り上げに輝いたり、毎年受験される先生や指導される先生にご愛顧いただいてきた書籍です。

しかし刊行後、ポートフォリオの対象領域に変更がなされたり、総合診療専門医の2階建て部分として新たな家庭医療専門医制度がつくられたりということを受けまして、現行制度に沿うように今回アップデートを行いました。

独特な本書の特徴とともに注目ポイントを紹介させていただきます!

『実例』だからわかりやすい

書名にあるように、本書は新・家庭医医療専門医試験で提出対象となっている全領域のポートフォリオを実例で掲載しております。

はじめに「最初に書いたポートフォリオ」として推敲前の粗削りなポートフォリオを示します。まずはこれを"直すべき点はないか”という視点で見てみましょう。

画像2

ページをめくると「ポートフォリオ改善のポイント」が解説されています。カバーレターは適切か、事例を選んだ理由は的を得ているか、書きたい情報がたくさんあるなかで重視するべきポイントはどこなのか、といったことが書かれています。
ここを読むとポートフォリオとレポートの違いも理解できてくるはずです。領域ごとに抑えるポイントが変わってくるので家庭医として何が求められているのかを考えるきっかけになるでしょう。

最後に「改善したポートフォリオ」として最初に書いたものから修正した提出バージョンのポートフォリオを提示しています。修正が入った点は赤字で示されているのでどういう点が加わったのか考えながら見ていきましょう。
今回からは各領域の評価基準(ルーブリック)も上部に掲載しておりますので、どんなかたちで評価のポイントを押さえているのか確認しながら読むことができます!

画像3

ポートフォリオを作成時の疑問にばっちり答えます!

本書のメインコンテンツとなる実例集はⅡ章となるのですが、それ以外の章ではポートフォリオってそもそもなんなのか、どうやって書き進めていくのか、専攻医の疑問を解決する内容が揃っています。

Ⅰ章では総論的にポートフォリオがなぜ家庭医療研修で用いられているのか、ポートフォリオの意義や基本的な書き方について解説されています。
研修が始まったばかりの方やこれからポートフォリオを作っていくという方はまずはここからしっかり読んでいきましょう。

Ⅲ章ではポートフォリオ作成プロセスモデル集ということで、専攻医が実際に研修の中でどのようなスケジュールでポートフォリオを作っていくとよいか、モデルケールを提示しています。自分のスタイルやプログラムにあわせて、研修中にすべての領域のポートフォリオが作れるように計画を立てる際にお役立てください。

画像4

Ⅳ章はQ&Aとなっています。ポートフォリオに空きができてしまう、事例をどのテーマに対応させればいいのか迷っているなどなど、作成上の疑問に答えていますので、困ったときに確認してみましょう。

画像5

より深く勉強するための文献リストを新設

今回の改訂によって新たに「より深く勉強するための文献リスト」を追加しました。ポートフォリオの提出範囲となっている領域ごとに、関連するトピックを学ぶための文献情報をまとめています。

よりよいポートフォリオを書くためには背景の知識が必要です。ここに記載された文献からどんどん学びを深めていきましょう!

画像6

本の目次

Ⅰ章 ポートフォリオをつくるまえに
ポートフォリオの意義:どうしてポートフォリオ?
ポートフォリオの書き方
評価基準(ルーブリック)について
ポートフォリオの活かし方:生涯学習に活かすために

Ⅱ章 ポートフォリオ実例集
1. 未分化な健康問題
2. 予防医学と健康増進
3. 慢性疾患のケア
4. 多疾患併存
5. 長期的な全人的関係に基づくケア
6. 患者中心の医療
7. 家族志向のケア
8. 地域志向のプライマリ・ケア
9. 障害とリハビリテーション
10. 臨床における教育と指導
11. EBMの実践
12. チーム医療・ケアの調整や移行
13. システムに基づく診療
14. メンタルヘルス
15. 健康の社会的決定要因とアドボカシーおよびアクセス
16. 医療者自身のケア
17a. 複雑困難事例のケア
17b. 統合されたケア
18a. 高いプロフェッショナリズムに基づく行動
18b. 倫理的に困難な意思決定を伴う事例のケア
19a. セクシャルヘルス/性を考慮したケア
19b. 思春期のケア
20a. 緩和ケア
20b. 人生の最終段階におけるケア

Ⅲ章 ポートフォリオ作成プロセスモデル集
日々の継続的なケースログから抽出して作成する
定期的な振り返りから作成する
追い込み型で作成する

Ⅳ章 Q&A
いい症例がみつからないときは?
どのエントリー項目で書けばよいのか迷ってしまう
文章が足りないときはどうしたらよい?
文章が長すぎてしまう、だらだら書いてしまうときは?
文章を校正するコツ,わかりやすい文章にするには?
指導医に時間を取って見てもらえないときは?
参考にすべき本はありますか?

付録 より深く勉強するための文献リスト

編集部目線の編集後記

今回めでたく改訂となりましたが、この本は前版のときからその独特なつくり故に、いかに「ありのまま感」を残すか、よくよく考えながら作っていった本になります。

通常、原稿を校正する際には“いかに整えるか”に神経を巡らせるわけですが、本書は実例であっても唯一無二の答えではない、という点を示したくて、たとえば参考文献の表記やポートフォリオ内に設けられた見出しの付け方など、あえて項目間でバラつかせたままにしています。
これを読んだ方に、「考察を書くときは見出しをつけて改行しないといけないのか」などといらぬルールを感じ取らせまいと、四苦八苦していたのです。

なかなかとっつきにくいポートフォリオですが、家庭医療を学ぶうえでは非常に相性の良い評価対象だと思います。ぜひ研修・指導のお供に手に取っていただければ嬉しいです。

文責:カーター

リンク
南山堂
版元.com
Amazon
楽天
電子書籍
医書.jp
M2PLUS


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?