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【書籍紹介】徹底深掘り! 蜂窩織炎 ―ジェネラリストのための皮膚軟部組織感染症診療ガイドー

皮膚軟部組織感染症、と聞くと、
日々の診療の「モヤモヤ」や「あちゃ~」という感情がよみがえってくる方もいるのではないかと思います。

皮膚軟部組織感染症(SSTI)という括りでいうと、誤嚥性肺炎や尿路感染症に匹敵するくらい頻度の高い疾患となっています。
外来でも、入院管理でも、在宅医療でも出会うこの疾患、‟いつもの対応”だけ覚えて満足していてはもったいないと思いませんか?
SSTI診療を深掘りし、得意になれば、一味違った臨床医になれるはず…!

そんな思いからSSTI診療の深淵を探る書籍が完成いたしました!

徹底深掘り!蜂窩織炎 ジェネラリストのための皮膚軟部組織感染症診療ガイド
佐藤直行,長野広之(編) B5判 263頁 5,000円(税抜き)

君たちはどう見切るか

SSTIというと、誤診が多いことも特徴です。
好発部位の足は服を着ていると診察しにくい部位のため、医療者側も億劫になるかもしれませんが、疑った場合はしっかり診ていく必要があります。
診たうえでこれは丹毒か?いや蜂窩織炎…?もしかしたら壊死性かも!?と病巣の深さや重症度を探っていく必要があるわけですが、原因菌の推定とあわせて、SSTI診療の醍醐味ともいえます。

本書では画像検査や培養検査、診断プロセスに関してなどまとめているほか、蜂窩織炎と間違えやすいミミッカ―に関しても深掘りしておりますので、「そうだったんだ!」と思える記述が見つかるはずです。

治療戦略やマネジメントについても頼もしい

感染症の治療で悩ましいのが抗菌薬の使い方。
原因菌はいつでも正確に調べられるわけではありませんが、各疾患でどんな菌が想定されるか、耐性菌への配慮や稀な原因菌を考えた場合などもフォローしていますので、不安を感じた時に本書が頼もしい味方になってくれるはずです。
SSTIはコモンディジーズでありながら、これまでまとまった書籍がほぼなく、困ったときはその都度、論文検索やほかの医師に相談していたという方が多いかと思います。まだまだ不安の多い方にも、診療の型がある程度できているという方にもどっしりとバックアップできる1冊です。

本の目次

Ⅰ章 総 論
1 落とし穴にはまらない蜂窩織炎診療を心がけよう
2 蜂窩織炎の診断プロセスを深める
Ⅱ章 蜂窩織炎/丹毒の診断編
3 蜂窩織炎/丹毒の背景因子・重症化リスクを見極める
4 蜂窩織炎/丹毒の臨床症状 ─部位や全身症状に特徴はありますか?─
5 Tips 両側性の蜂窩織炎はありますか?
6 蜂窩織炎/丹毒の身体診察を深める ─発赤以外に何をみたらいいですか?─
7 蜂窩織炎/丹毒の一般的な原因菌 ─年齢と罹患部位によっても変わりますか?─
8 基礎疾患・曝露歴と蜂窩織炎/丹毒 ─稀な細菌はいつ考えますか?─
9 Tips 真菌性・抗酸菌性の蜂窩織炎を考えるとき
10 培養検査を深める ─血液培養はどういった患者で採取すべきですか?─
11 画像検査を深める ─診療に役に立つ検査は何ですか?─
12 Tips 蜂窩織炎患者はDVTを合併しやすいですか?
Ⅲ章 蜂窩織炎mimickers編
13 うっ滞性皮膚炎
14 皮膚膿瘍
15 深部静脈血栓症(DVT)
16 単〜少関節炎(結晶誘発性,化膿性)
17 トキシックショック症候群
18 結節性紅斑
19 Sweet病
Ⅳ章 蜂窩織炎/丹毒の治療,マネジメント編
20 蜂窩織炎/丹毒の入院適応を見極める ─内服と注射どちらで始めたらいいですか?─
21 蜂窩織炎/丹毒に対する抗菌薬の初期選択 ─コモンな細菌に対するempiric therapy─
22 MRSAをカバーするのはどんなとき?
23 稀な原因菌に対する抗菌薬の使い方
24 蜂窩織炎/丹毒の治療効果判定・経過観察の仕方を深める
25 蜂窩織炎/丹毒の治療期間を深める ─何を指標に治療期間を決めますか?─
26 蜂窩織炎の在宅治療戦略
27 蜂窩織炎/丹毒の非薬物治療と抗菌薬以外の薬物療法
28 蜂窩織炎/丹毒の再発予防を深める ─誰にどんな予防ができますか?─
29 白癬のみかた
30 糖尿病性足潰瘍を疑ったときの評価とマネジメント
31 糖尿病のフットケア ─感染予防の観点から─
Ⅴ章 蜂窩織炎/丹毒の診療で注意しておきたい近縁病態編
〈壊死性筋膜炎〉
32 壊死性軟部組織感染症(NSTI)総論 ─壊死性筋膜炎以外に何がありますか?─
33 壊死性筋膜炎のリスクと症状・身体診察を深める ─早期症状のうちに見抜くために─
34 Tips “昨日元気で今日ショック,皮疹があればもうけもの”
35 壊死性筋膜炎の画像検査を深める
36 壊死性筋膜炎の予測スコアの使い方と診断のための侵襲的検査 ─踏み切る決め手は何ですか?─
37 Tips 壊死性軟部組織感染症診療に役立つグラム染色の使いどき
38 壊死性筋膜炎の原因菌と初期抗菌薬選択を深める
39 デブリードマンについてジェネラリストが知っておくべきこと ─goldentime から周術期管理まで─
40 Tips 抗菌薬・デブリードマン以外の治療はありますか?
41 壊死性筋膜炎の治療期間を深める
〈褥瘡感染〉
42 褥瘡感染の疫学・リスク
43 褥瘡感染の臨床症状と局所所見を深める ─見抜きかたのコツは?─
44 Tips 骨髄炎合併の評価
45 褥瘡感染の培養検査を深める ─原因菌を見極めるために─
46 褥瘡感染に対する抗菌薬選択と治療期間を深める
47 褥瘡感染における軟膏・ドレッシング材選択のコツと注意点
48 褥瘡感染に対する外科的処置
Ⅵ章 押さえておきたい周辺知識編
49 手術部位感染症
50 化膿性筋炎
51 ガス壊疽
52 海外渡航と皮膚感染症
53 小児の皮膚軟部組織感染症 ─蜂窩織炎・丹毒・伝染性膿痂疹を中心に─
54 βラクタムアレルギーがあるときの蜂窩織炎治療選択
55 Tips D-test:クリンダマイシンの感受性解釈のピットフォール
56 蜂窩織炎診療における抗MRSA薬の使い分け

編集部目線の編集後記

この企画のきっかけは「とことん極める!腎盂腎炎」の書籍が完成した時に著者の一人であった佐藤先生より、「ジェネラリストがよく診ることになるコモンな感染症の解説本」というコンセプトに共感をいただいて、腎盂腎炎の次は皮膚軟部組織感染症でしょう!ということでスタートした企画なのでした。
自分の担当した「終末期の肺炎」とあわせて正式には別々の本ですが、‟コモンな感染症をちゃんと診るのがジェネラリストのカッコよさなんだぜ”シリーズと思っています。

今回は皮膚の写真も多くなっていることから全ページカラーになっています。症例写真はショッキングなものも入ってくるので、シリアス感の調整と読みやすさを考えて、章ごとにテーマカラーを変えたり、見出しのデザインを調整したりと細かいことを考えておりました。

装丁は蜂窩織炎ということでハチの巣をモチーフにする案もあったのですが、生々しさを感じてしまうと雰囲気に合わないというのと、もう犬がかわいくて「犬にしよ?ねっ?」という感じで深掘りに焦点を当てたデザインに決まりました。

目次をみていただくとわかるように、誤嚥性肺炎、腎盂腎炎と比べると扱う範囲が広く、項目数もページ数もぐんと多くなっておりますが、ご編集いただいた佐藤直行先生と長野広之先生にしっかり率いていただいて、気鋭のジェネラリストの先生、専門医の先生にご協力いただいて集大成、という感じのする1冊になっていると思います。
お力添えいただいた先生方には改めて深謝いたします。

文責:編集部 カーター

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