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ギターは語るーEric Clapton Live at Budokan 2023.4.24


 2023年4月24日、エリッククラプトンのライブ最終日に武道館へ行ってきました。

 ステージはシンプルで、楽器やマイクの他は後ろに街灯のようなライトが4本立っているだけ。スクリーンは恐らくは舞台横(斜め後ろの席までびっしりと観客を入れていました)の席の人にも見えるように左右にふたつ。余計なライティングもなし、飾りといったらクラプトンの足元に敷かれたカーペットぐらい。そのシンプルさが音楽を本当に引き立てていた。

 2階席の後ろの通路にもみっちりと立ち見の方々が。中学の時に当日券でDURAN DURANを観に来たことを思い出す…最近は行ってないけど、やっぱり「外タレ」のライブは、なんとなく雰囲気が違う。アーティストが日本に来て演奏する場所なのに、こちらが海外に行ってライブを観ているような気持になる。どうしてだろ? 単純なだけかもしれない。

 クラプトンは、ずーっとギターを弾いていた。
一曲目が終わって「コンバンワ、Good evening!」と言ったきりMCもほとんどなく、ずっとギター弾いていた。

いや、それ当たり前でしょう、と思うだろうが、通常のギターを弾くアーティストのライブでも、1,2曲は伴奏をバンドに任せて歌だけ歌ったり、ギターを置いてキーボードで歌ったりするもんなんである。が、この方は全くブレずずーっとギターを背負って歌を歌う。

 椅子が置かれていたので、やっぱりトシだし座ってやるのかしらね、なんて思っていたら、演出として座って数曲演奏しただけで、あとはすくっと立ってギターを弾き、歌を歌っていた。すごい。

 途中で、本当に少しだけ話をしたけれど、これが本当に唯一の言葉だったのではないだろうか。
「世界中ライブで訪れているけど、日本は本当に好き。みんなが大好きだよ」
「もうそろそろサヨナラって言う頃なんだと思うんだけど…(プツクサプツクサ。よく聞き取れなかった)、でもまだやり続けていくよ」
と言ったと思うんだけど…これが日本のライブが最後だよ、という意味なのか、これからの彼の活動の話なのかはちょっとわからなかった。

あとはずーっと、ギター弾いてる。他のアーティストだったら「では次の曲です」とか、もう少ししゃべると思うんだけど、そういう曲紹介も、クラプトンはギターでする。曲と曲の合間にも、なんかピロピロローンと、ずっとギターを奏でている。バンドメンバーと顔を見合わせてギターを弾く。時に小さい音でつぶやくように、また時にはスタッカートで短く、観客席を見渡して即興のメロディーを、そう、クラプトンはギターでしゃべるのだ。

 新しい言語を初めて聴いたとき、我々はそれが何かを伝えようとしているんだってことはわかるけど、何を言っているのか意味はわからないことがある。クラプトンのギターを聴いていると、そういう感覚になった。私にはギター語というかクラプトン語というか、何かを伝えていることはわかるけど、何を言っているのかはわからないのだ。

 でも不思議なことに、それは全くイヤでもストレスでもない。だって、エリッククラプトンだよ? 聴いていてイヤになるわけがない。
外国語が好きっていう人は、わからなくてもとにかく聞いて覚えていくでしょ、それと近いかもしれない。知らない言語だけど、心地よくて、わからないなりに楽しめる感覚。何回も聞きたいし聞いているうちに覚えていく。はず。

 だから、ほんのちょっとのイントロ(しかもアレンジが加わってる)で、うおー(と言ったかどうかはわからないけど)と立ち上がり、指笛を吹いたり、拍手をしたりする人は、だいぶクラプトン語がわかる人で、もちろんライブに来ているのはそんな人たちばっかり。

 そして声が出せるライブだったということも、とってもよかった。久しぶりの『ライブ感』がありました。

 ベースはネイザン・イーストで、この方は小田さんのレコーディングにもちょいちょい参加しているベーシストです。最初から最後まで、とっても楽しそうに演奏していました。

ライブの最後にネイザンは、自分のケータイを出して私たち観客をバックに写真を撮ったり、「ミナサン、オツカレサマデシタ!」と言ったりしてました。個人的には「mata-ne!」って言ってほしかったけどね(小田さんとメールのやりとりをしているときに必ず最後にネイザンが「mata-ne」と書いていた、それでネイザンに手伝ってもらった曲のタイトルが『mata-ne』になった、っていうエピソードがあったので)。

 とにもかくにもものすごいライブでした。昼間から出かけていて、このライブの座席に座ったときは、疲れているし席はきちきち狭いし、あんまり実は気持ちとしては良くなかったのだけど、聴いているうちにそんな疲れはどこかへ吹っ飛んでいました。78歳とは思えない演奏と歌声!オフコースのみなさんも、まだまだ頑張ってほしい…!と思った春の夜でした。




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