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ブスを治す魔法

毎年正月、地元の集まりがある。20歳の時顔を出したが、それ以来予定が合わず、特別親しい友達はあまり乗り気でないので行っていなかった。

今年は暇だったので久しぶりに顔を出した。
誰が来るかわからなかったので、小中と仲良くしてくれていたマナちゃんを誘った。しばらく疎遠だったのに「会いたいって言ってくれるなら」と快諾してくれた。マナちゃんのことは個人的にすごく好きだったので「みんなで集まる前に二人だけで話そう」と誘ったらそれもOKしてくれた。

マナちゃんを最後に見たのは成人式。その時と髪型がずいぶん変わっていたので、一瞬誰かわからなかったが、フレンドリーに手を振ってくれて彼女だと気づいた。見た目が変わっても、かわいい声と、優しい話し方はそのままだった。

近状報告を簡単にできれば、と思っていたのだが、マナちゃんはあたしが想定していたよりも深い話までしてくれた。自分の家庭のこと、今の仕事、夢。センシティブな話題も多かった。田舎ではそういった話はすぐに広まってしまう。あたしのことを信頼して話してくれてるんだと思うと、うれしかった。

だからあたしも、正直に何があったか話すことにした。
大学在学中に顔で悩んだこと、風俗嬢になったこと、整形したこと。
彼女は驚いた顔はしたものの、否定せずに聞いてくれて、
「でもなんでそんなに顔で悩むの?だって中学の時も可愛いってみんな言ってたじゃん」
と言った。
「そうだったっけ」
そんな記憶、なかった。

マナちゃんのその言葉が、あたしをずっと温めている。
整形しても、誰に顔を褒められても「あたしはブサイクなの」と泣き続けてきた。
ここ数日中学の頃の記憶を掘り起こしてみた。確かにマナちゃんはあたしを可愛いと言ってくれていた。

整形する前の顔、肯定されたことがあったんだ。忘れちゃってた。
ずっと顔が嫌いで仕方なかった。でも顔で悩む前からそう言ってくれている友達がいたなら、あたし、もう少し前を向けるかもしれない。
初めて醜形恐怖症が治った気がした。

この子に会えて本当に良かった。
彼女の夢が叶いますように。その時を一緒に喜べる友達でいられますように。
マナちゃんありがとう、あたしは自分の顔が少し好きになれたよ。

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