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京都の交差点、東西と南北のどちらが前なのか

 久しぶりに記事を書きます。連休でゆっくりする時間が取れているので、以前から気になっていたことを調べてみました。「京都の交差点、東西と南北のどちらが前なのか」問題です(勝手に命名しました)。京都に詳しくない方もいると思うので(私もその一人です)、どういうことなのか簡単に説明します。

 京都の市街地は、東西と南北に碁盤目状に道路が走っています。そして、交差点に東西と南北の通りの名称を組み合わせた名称が付けられていることが多いです。たとえば、東西の四条通と南北の烏丸通の交差点は「四条烏丸」です。しかし、東西の丸太町通と南北の烏丸通の交差点では、「烏丸今出川」です。このように、交差点によって「東西」が前になることもあれば「南北」が前になることもあるのです。

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 インターネットで検索すると、交差点名についてはいくつかのサイトが見つかりました(記事の末尾で紹介します)。この交差点の名称問題への関心は高いようです。ただ、具体例をいくつか紹介した記事はあっても、市内全体を地図で表したものは見つけられませんでした。また、通りごとに集計をした結果なども、探した限り見つかりません。

 そこで今回は、京都の交差点の名称で東西と南北の通り名のどちらが前になっているか、空間的な分布を把握し、呼称の決め方の背景を考える基礎的検討を行うことを目的に、作業を進めました。ステイホームで暇だったんですね(笑)。とは言っても京都を歩き回って交差点を見て回ることはできないので、今回は便宜的に以下の方法で進めました。

①Google Mapの平面地図とストリートビューで交差点の名称を把握
②交差点の上で右クリックして座標(緯度・経度)を取得
③交差点名と東西・南北の通り名、車線の数、座標をエクセルに記録
④交差点を(1)東西が前(2)南北が前(3)その他の三つに分類
⑤地理院地図の作図機能で、座標から交差点のポイントを描画

京都の交差点の名称を地図化する

 さっそくですが、地図にすると、こんな感じになりました。地図化した範囲は、北は北山通、南は十条通、東は東大路通、西は天神川通までです。確認した交差点は202地点です(暇だったんですね…)。

210503交差点の地図(凡例加筆版)

 青の■:東西が前(四条河原町など)
    橙の▲:南北が前(烏丸御池など)
    緑の○:その他(百万遍など)
地図を見ると、何らかの傾向がありそうですね。東西が前になる交差点は、北部より南部に多いです。また、南北が大通りの場合は基本的に南北が前です。ただし、四条通や五条通(どちらも東西の通り)の交差点では、東西が前になる場合が多いですね。

 画像で出力した地図では、どの通りの交差点か分かりにくいと思いますので、今回は、Google Mapのマイマップの形式も公開します。Google Mapの中で実際に交差点を確認してみてください。

 連休に出かけられなかった皆さん、ぜひオンラインで京都の交差点を巡る旅に出かけてください。そして、ぜひいつか実際に京都を訪ねて、観光のついでに交差点を確認してみてくださいね。

通りの車線数を集計する

 次に、東西と南北の通りの広さが交差点の名称と関係するのか考えるために、車線数をGoogle Mapで確認し、東西[E]の車線数を南北の車線数[N]で割ったE/N比という数値を計算してみました(思い付きです)。車線数は、右折レーンを広げてある場合などは少し戻った地点の通常の広さを確認し、交差点の前後で幅が違う場合は広い方を採用しています。

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 簡単に傾向を説明します。全体の傾向では、交差点の半分以上は「南北が前」(106地点,52.7%)であり、「東西が前」(54地点,26.9%)と「その他」(41地点,20.4%)が残り半々くらいでした。車線数との関係を見ると、東西が南北の半分の広さ(E/N比が0.5)のときは「南北が前」の交差点が多く(例:河原町三条)、東西と南北が同じ幅(E/N比が1.0)の場合、72地点のうち42地点(58.3%)が「南北が前」でした。
 そして、東西が南北の2倍(E/N比が2.0)のときは「東西が前」の方が多くなり(37地点のうち20地点,54%,例:四条西洞院)、4倍のときは13地点のうち10地点(例:四条新町)、8倍のときはすべてが「東西が前」となっていました(例:五条新町)。広い通りが前に来るということは数値でもある程度確認できたといえます。

 ただ、興味深いのは、四条通の場合、図の東側(南北の河原町、烏丸などと交差する範囲)では「東西が前」であるのに対し、西側にいくと「南北が前」となることです(例:西大路四条、西小路四条、葛野大路四条、天神川四条)。この東西での違いは興味深いですね。

考え出すと奥が深い交差点問題

 さて、ツイッターに画像を昨日公開したところ、とても多くの方に見ていただき、コメントもしていただきました。ありがとうございます。この図はせっかく作ったので、もう少し詳しく集計したり、時代による変化も考えてみたいと思います。京都にはかつて路面電車も走っていたようなので、その電停名との関係を見てみるのも面白そうです。

 その他、これまでに京都の交差点の名称について紹介したネット記事のリンクも貼っておきます。せっかくなので、皆さん自身で地図を眺め、傾向や法則を考えた後に読んでいただくと、理解が深まると思います。




 今回の地図作成は、難しいGIS(地理情報システム)のソフトは使っていません。エクセルで表を作ったあと、地図化はWeb上の地理院地図、凡例の加筆はパワポです。この記事を読んで、皆さんが地理的な事象で疑問に思ったことを地図化したりして実際に調べるきっかけになれば嬉しいです。

 ということで、また他にもいろいろ考えてみてから、続報を書きます。みんなで楽しく京都の不思議を考えていきましょう!


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