1.疫病神

物分かりのいいふりをしている自分が嫌だった。

2024年3月13日、なんてことないただの水曜日。
私は推しメン(MIGMA SHELTER タマネちゃん)に会いに渋谷に向かっていた。
先日推しメンが飲んだゴンチャの新作を飲んで、遅れている電車に乗って、夕飯を済ませるために開場時間よりだいぶ早く渋谷についた途端、その知らせがあった。

今年の1月には定まってなかった主現場がMIGMA SHELTERになり、他のメンバーともチェキを撮ったりし始めた矢先の発表。
なのに不思議と涙は出なかった。
「決まっちゃったもんは仕方ないね」などという受け止めたふりをしたツイートをしながら道玄坂へ向かったが、途中で気力がなくなって、道端に座り込んだ。

現在進行形で通っているグループが「終わる」のは約6年ぶり。
その6年の間にも「推し」の卒業を何回も見送ってきた。
一時的にアイドルヲタクを辞めたりもした。
それでも色んな点が繋がって今の現場、今の推しメンに落ち着いて、心底これからだと思っていた。

実際そんなことはないはずだが、自分が好きになったアイドルは割とすぐ「大切なお知らせ」をする気がして、その度に自分が疫病神になった気分になる。
自分が好きにならなかったら、こうならなかったのだろうか。
それとも終わりに向かうアイドル特有の何かに無意識に惹かれてしまっているのだろうか。

そんなことばかり考えて、夕飯を食べる気もなくして会場に着いた。
しばらくして知り合いのヲタクが現れたが、私は大して言葉を発することもできずにO-Crestの階段を登った。それどころじゃないからなのかあっという間に5階に着いた気がした。

なぜか優先のチケットを買っていた過去の自分に感謝して下手の2列目に入った。
開演の15分前くらいにオープニングトーク的なものがあって、QUEENSさんのメンバーお2人とミシェルからはワニャ+とスイミイが出てきた。
2人は元気すぎるくらい元気に見えた。
多分、そう振る舞ってくれたのだと思う。

19:30になって、会場は暗転し、ミシェルのRAVEが始まった。
あと何回、「ガンギマっていきまっしょい!」できるんだろう。
あと何回、逆光の中の推しのシルエットの美しさにハッとするんだろう。
あと何回、推しのパートでケチャするだろう。
余計なことばかり考えながらRAVEを観ていた。

『Any Colours』が終わった静寂の中、私より全然長くミシェルを観てきた知り合いのヲタクが小さな声で「終わんなよ。」と言った。
その声が全員に届いたと思わされるくらいの静寂だった。

ゲストで呼んでもらったツーマンだし、主催のQUEENSのステージもちゃんと観ようと思ったが、Zeppでのワンマンを控えている彼女たちのあまりにも前向きなエネルギーを受け止めるのが今は辛くて、後ろに下がった。

特典会が始まる前にメンバーから改めて報告があった。メンバーに、タマネちゃんに言わせたくないことばっかり言わせてしまっている悔しさが心に滲んだ。

チェキを4周したにも関わらずタマネちゃんには言いたいことの半分も言えなかったけど、それでも私がこれから前を向くのに必要な時間だったと思う。
ただ、1周目でタマネちゃんが「ごめんね」と言って泣き始めた時間は本当に辛かったし、私まで泣いてどうするんだと思いながらも泣いた。

特典会中にたくさん泣いて多少スッキリしたのか、さすがに空腹を感じることができるくらいにはメンタルが回復したようだったので、元々入場前にするつもりだったひとり焼肉をして帰った。

無期限活動休止まであと2ヶ月半。
正直短いとは思うけど、忘れられない時間にしたいし、それは今までもそうしてきたつもりだった。
今は1秒でも長く、タマネちゃんを観ていたい。

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