トラウマ治療のその後③身体に起こった変化
トラウマ症状を「気持ちの問題」にしないために…。「根性論」で片付けられることがなくなるために…。
これらは、私がトラウマ治療についてnoteに書く理由のひとつです。
トラウマ治療を受けたあとの私について、シリーズ(?)で書いています。
今日はトラウマ治療で、私の状態の何が変わったのかという話にします。
変わったことは色々ありますが、主に「身体が『トラウマ仕様』じゃなくなるとはどういうことか」という話になると思います。
トラウマは「心の傷」という言い方をすることがあります。でも実際には、身体の問題が大きいことも伝われば嬉しいです。
トラウマ治療は武装解除に似ていると思うことがあります。
トラウマ症状が出ている時は、身体のあちこちが「トラウマ仕様」になっている状態なんですよね…。周りの状況は変わっても、身体が「命の危険モード」のまま。
だから眠れないし、神経がピリピリするし、「おい、今が危険だって忘れるなよ!」とばかりにフラッシュバックがバンバン起きる。
その状況から、身体が危険は過去になったのだと納得して、その設定を一つ一つ解除できるようにする。それがトラウマ治療なのかなと思います。
(ちなみに危険な状況で症状が出るかというとそうでもないです…。私の場合、大学進学による一人暮らし、結婚…と、実家から離れてしばらく経ったタイミングで症状が出ました。
安全だからこそ自分の状態が出せるようになったんでしょうね。
実家では、みんな怒りをむき出しにするのに、私
だけが怒りを出すことができませんでした。)
そして私の身体の「武装解除」が進んで、何が起きたかというと…。
1.フラッシュバック症状が、ほぼなくなる
これは驚きました。この症状がなくなると、「ああ、過去が過去になったんだな」と実感できます。
自分の変化を感じやすい症状でした。
フラッシュバックが起きると、悲しくなったり怒りが湧いたりするだけではありません。映像や音が白昼夢のように蘇るだけでなく、身体の感覚や力の入り方がその出来事が起こったときそのままになることがあります。
身体ごと、トラウマを何度も体験している状態です。恐怖でガチガチに力が入ったり、動けなくなったり…。実はこの動けないという状態もすごく疲れます。
身体がトラウマとなった出来事の状態になって戻ってくるまでに、すごくエネルギーを使って、疲労困憊してしまうんですよね。
そして何度も引っ張り戻される感じが、生きる気力を奪う。気持ちの面でも日常に戻るだけで、気力を使い果たしてしまう。
フラッシュバックが起きにくくなるということは、疲れにくくなると言うこと。逆にいうと、フラッシュバックを抱えて生きるということは、日常生活をろくにこなせていなくても、ただ生きているだけで疲労困憊してしまうということなんです。
2.「危険察知アラート」の誤作動が減った結果…
トラウマ治療が進むまえの私は、散々相手の顔色をうかがっても上手くいかないことばかりで、ずっと自分を責めてきました。
私は絶望的に空気を読めない人間なんだと絶望してきました。
ところがトラウマ治療を始めて3年経ったころ、目の前の相手が何に困っているのか、どんな言葉を掛けてほしいのかが、よく見えるようになったんです。
生まれて初めて、
「自分の立場を守るため」ではなく、
「目の前の相手が何に困っているのか。どうしたら喜んでくれるのか」を考えて、行動できるようになりました。
トラウマ治療以前の私は、ちょっとした刺激で、「危険だぞー」と警報が、ぐわんぐわんと鳴り響いているようなものでした。常にそんな状態では、自分や相手、その場の状況を見て感じることなんて不可能だったんでしょう。
それが初めて、トラウマ治療のおかげで脳のなかが静かになった。それが治療後の私です。
そして相手が見えるようになって、気付いたこともありました。
それは「相手も、自分がいい人だと思いたいのだ」ということです。だから、相手の好意を素直に受け取ることは、相手が喜ぶことでもあるのだと考えるようになりました。
(健全な相手、限定ですが…)
私が素直に受けとることを覚えたのは、この辺りからのことです。
3.そして解離がなくなった結果…
やはり治療を始めて3年ほど経ったころ、「私」は滅多なことで解離が起こらなくなりました。
ご飯がおいしくなったり、歯磨きの前後で歯のざらざら感が変わることに初めて気付いたのも、この頃です。
解離がなくなったことも、今起きていることをキャッチする助けになったと思います。
治療前の私は、解離でぼーっとして、脳内は危険を知らせるアラートが鳴りまくり。
元々私は対人恐怖がひどく、それを恥ずかしく思ってきました。でも、こんな状態で他者と関わるなんて怖くて当然だと思うこともできました。
トラウマ治療って、できない自分を許せるようになることが多いです。できないのが症状や、症状からくる経験の少なさのせいだと分かるから。
トラウマ治療の過程は、過去を過去に収めるだけでなく、自分と仲直りする旅でもあったと感じています。
解離症状が落ち着いてからの変化については、また詳しく書くことにします。
4.結果、寝込むことが、ほぼなくなる
トラウマ治療まっさかりの私の一日は、ひどいものでした。日中のほとんどを寝ていて、11時半に起き出して夫の昼食を作り、19時に起き出して夕食を作る。
夫よ、よく耐えてくれた…。
私の体調が良くなったあとで、夫も、
「あれは、きつかった…」と言っていました。それはそうだ…。
これは眠れなかったのも大きい(結局眠ることについては、まあまあ動ける今でもお薬の助けを借りています)のですが、ここで書いてきたように、身体がトラウマ仕様のときは常に疲れているんです。
身体の中から常に緊急事態だと、神経伝達物質とかホルモンとかぐちゃぐちゃにドバドバ出てて、たぶん身体にも良くないんだろうなと思います。
(ざっくりな所感)
トラウマ治療の結果、健康体とは、いかないまでも以前よりは疲れにくくなった。
寝込むことが少なくなった。
(ただし、これは双極性障害II型の診断が降りて、正確な見立てにあった薬を出してもらえるようになったことも大きい)
つまりトラウマの問題とは、気持ちや「つらい思い出」の問題ではなく、身体の不具合だということが、この記事を通して少しでも伝わっていれば嬉しいです。
今日もお付き合いいただき、ありがとうございました。次のnoteでは、トラウマ治療によるそれ以外のテーマについて書いていきませ。
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