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短編『何も気にならなくなる薬』その82

輪廻転生

登下校

美容室

今回はこの三つ。


「お客さん、今日の髪型はどうしましょう」
「スキンヘッドでお願いします」
「あの、うちは1000円カットなので、そういうのは美容院でお願いしたいのですが……」
「できないんですか?」
「うちでは剃る行為の許可がおりませんので」
「そうですか、ではバリカンで坊主にしてください」
「何ミリにしましょう」
「なるべく短く」
「わかりました。では0.4ミリで」
ウィ~ン
「こんな感じでどうでしょうか」
「あの、すみません。やっぱりスキンヘッドは無理ですか」
「はい、だめなんですよ」
「だって、残り0.4ですよ?殆どスキンヘッドと変わらないじゃないですか」
「すみません。ご期待に答えられず。では軽くシャンプーをしますので頭をこちらへ」
「ねぇ、店員さん」
「痒いところでもありますか?」
「そうじゃなくて、輪廻転生って信じます」
「あー、まぁ、聞いたことはありますけど」
「こうして髪を切るのも生まれ変わるみたいでいいですよね」
「そうですね、気分もなんだか晴れますよね。これからどこか行かれるのですか」
「えぇ、登下校の見守りを」
「登下校の見守り」
「はい、地域で子どもたちを見守るのあるじゃないですか、あれを」
「あぁ、あの黄色い旗を持って」
「そう、それです」
「それをスキンヘッドでやる予定だったんですか?」
「その方が不審者も近づかないでしょう」
「どっちかというと子供のほうが逃げそうですが」
「いやー、むしろそれが見たいんですよ」

美味しいご飯を食べます。