見出し画像

この後どうする

押し問答であった。

私がどうしたいか。

その答えは用意されていたが、私の口から出してはいけないと、私の頭の中では結論ができていた。

とはいえ、その場面で答えられる言葉は何もなく、ただ私は有耶無耶な返事を繰り返しながら、電車に揺られていた。

おそらくこう考えていることだろう。

私にはあらかた予想が出来ていた。無言で手渡された台本を読み上げられないまま、時間が過ぎる。

いつしかを思い返す。

あぁ、あのときもそうだ。

私は移動する電車の窓に反射する自分の姿を眺めていた。

なんて情けない姿だろう。

まともに物事を決める事もできない、そんな情けない男がそこにいた。

目の前の感情に振り回されまいと、ありもしない未来を想像する。

やはりバッドエンドだ。

この先にどんな幸せがあるのか、私の想像力ではとても補完できない。

きっとこの出来事を物語にしてしまうのだと、私自身に呆れていた。

「まだ帰りたくない」

ヒロインはとろけるような瞳で私を見つめる。

真意がどうであれ、彼女は自らの与えたその配役に従順である。

なら、その舞台を完成させるのは、私の演技以外に何があるだろう。

絡みついて離れない手、預けられた体の重力。

紅く火照る頬に、こちらを見上げる視線。

目の前にいるのは一人の女であった。

なら、その隣りにいるのは紛れもなく一人の男に違いない。

美味しいご飯を食べます。