目の前の一杯
落ち着くとは程遠いが、体中の力が抜けて、楽になる。
考えることも単調で、くだらない言葉が口から溢れていく。
そして、免罪符に「酔っているから」と付け加えれば何もかも許される。
私はそんな彼が許せなかった。
感情の赴くままの彼は、自分だけが良くなればいい。餌を食べる動物に似ていた。
調理の工程も、盛り付けも、全て意味のないことだったと言わんばかりに、平らげていく。
「ごちそうさま」
これもまた免罪符。最後に付け加えておけば何もかも許されると思っている。
彼には足りない。
「それでも私には彼しかいない」
私にも免罪符が付きまとっている。
美味しいご飯を食べます。