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短編『何も気にならなくなる薬』その50

全身鏡を用意した。
いや、厳密には2/3身鏡か。
正座をすると丁度全身が映るくらいの大きさ。
普段あまり家の中で自分の姿を鏡で見ることはない。
いや、もちろん髭を剃るときなどで、顔はみる。
全身を見ることはあまりない。
これを気に身だしなみをもう少し意識したい。
そんなことを気にしながらビールを呑む。
しばらく痩せられそうにない。


紅茶が有り余っている。
これを浴槽に投げ込んだら、小規模なボストン茶会事件になるのではないかとくだらないことを考えている。
近頃は便利なもので、検索をするとすぐに結果が出てくる。
今の時代、誰の意見も聞かずに挑戦する人は少ないような気がする。
紅茶お風呂。検索結果がでた。
実際にやってみてもいいのだが、どうにも飲んだほうが美味しくていいのではなかろうか?
何にせよ贅沢な入浴法だ。

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トイレの建付けが悪い。
これもまた検索すると出てくる。
やはり無鉄砲に挑戦する人は少なくなってる気がする。
下が擦れて引っかかる。これを治すには下の蝶番を緩めると逆に下が浮いて擦れなくなるそうだ。
緩めたところにとりあえず要らなくなった紙袋を切り取って挟み込む。
見てくれは良くないが、扉の建付けを得られるならどうってことはないだろう。
昔の人はなんでも自分で直してたようだが、こういうのもたまには悪くない。
途端に部屋の中の不自由を探したくなる。
意外と今の家に不満がないことに気づく。

美味しいご飯を食べます。