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新作「アーマード・コア6」世界に向けて。

今年の「The Game Awards(TGA)」にて、
ACVDから10年
ACfAから15年
シリーズ始まってから25年というこの年に、ついに、ようやく、新作
ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF RUBICON」が発表された。



今年は25周年

1997年からはじまった「アーマード・コア(AC)」は2008年頃まで毎年のように新作が発売され、作品数は既に20近い。
そんな長寿シリーズの記念すべき年に新作発表というのは、今思えば納得する状況だったと言えるが、正直そこまで期待してなかった。

エルデンリング」が2022年の「Game Of The Year(GOTY)」を見事勝ち取るほどに全世界が注目し、その開発規模も長大なエンドロールを見れば一目瞭然なほど、これまでのフロムソフトウェア作品とは比べものにならないほど大規模かつ海外スタッフを多く起用したグローバルな作品だった。
しかしながら、これほどの注目作を近年送り出してきた一方、
スクウェア・エニックスやカプコンといった、世界に目を向けた作品を立て続けに出すほど体力がある会社ではないという現実がある。
今回の「エルデンリング」はフロムソフトウェア自らが持ち合わせている技術力の試金石にもなっていると考えられ、
その表れか、現在「エルデンリング」を取り巻く環境はあまり良いものとは言えない。
TGA開催前に実装された闘技場の評判もあまり良くなく、発売後時間が経った今ではユーザーの評価というのも比較的落ち着いていおり、TGAではユーザー投票で選ばれなった。(選ばれたのは「原神」)
実際プレイしてクリアした自分も2022年にもなっていまだに13年前の操作やUIを引きずっているのはいささか無頓着過ぎないか?と言わざる得ないぐらいに「エルデンリング」には失敗点が多い。

そんな折にやってきた25周年の節目の年。
フロムソフトウェア史上最大規模の作品である「エルデンリング」と同時進行で開発していたということに、自分は信じられなった。



初めて世界に大々的に発表したAC

今回の発表にはこれまでのACシリーズでは起きなかった状況が生まれつつある。
TGAはゲームジャーナリストのジェフ・キーリー氏が制作と司会を務める、その年のベストゲームを決めるショー。映画で言えばアメリカのアカデミー賞に近い。
豪華ゲストを迎える華々しいショーではあるが、初回は2014年とそれほど歴史があるわけではない。
にも関わらずゲーム製作者本人が会場に訪れてスピーチしたり、ハリウッド俳優がゲストとして登壇したりするほど、今ではゲーム業界に興味がある人には見逃せない存在となっている。
(ちなみに今年はアルパチーノやダニエル・クレイグがコメントを出したりしていた)

初回が2014年ということは、ACで言うところの「アーマード・コア ヴァーディクトディ(ACVD)」の発売年。
次回作である今回の新作まではそれから9年もの時間を要したということになる。
25周年の長い歴史を持つACをこれまで大々的に発表していたのは、毎年春ごろに行われる「E3」ということになるが、TGAのようにSONY、Microsoft、任天堂の垣根を超えたものではないため、個々を比較すると規模は小さく、
おまけにAC自体は日本での販売を重視しているためか、発表されたとしても会場で大々的にではなく、ネットで同じ時間帯に公式サイトに載せるといったことが多かった。

今回の「AC6」は、TGAという世界中のユーザーがひとつの場所、同じ時間に集う状況の中で発表された、これまでにない注目を得たものになったことは間違いない
しかもそれがショーの目玉であるGOTYの直前で、FF16の吉田プロデューサ登壇の直前に発表されたという、山場中の山場でティザートレイラーが公開されたという、これまでにない状況
勿論それはここ10年間のフロムソフトウェアのネームバリューあるからこそ配置されたものであると考えられるが、
それにしたとしても、「AC6」は「エルデンリング」に匹敵するほど注目されるべき作品だという判断が下されたことは間違いないだろう。



縦マルチから生じる不安

今回の「AC6」は2023年発売予定ながら、PS4といった一世代前でもプレイできるようになっているとのこと。
以前に書いたように「エルデンリング」自体が大手AAAタイトルのようなビジュアルインパクトに長けた作品ではなく、あくまで過去作の延長線上に存在する作品であり、
次世代機が発売されても尚変化乏しいビジュアルのままであることから、フロムソフトウェアには最新ハードの性能を生かしきった作品を開発するノウハウが無いように見える。
実際にこの点については社長の宮崎英高氏自らが自覚しており、Blupointによってリメイクされた「デモンズソウル」のビジュアルに思うところがあると語っており、フロムソフトウェアが他社との開発競争に後れをとっている状況であると言わざる得ないのは確かだ。

今年の9月にはこういうニュースも。
ダークソウル以降、鰻登りの世の中への浸透率に対処するために、ようやく重い腰を上げ始めたと言えなくもないが、それが果たして「AC6」で実るのかどうかはわからない。
(まだゲーム画面が出ていないというのも不安要素に拍車をかける)



至上命題となった「シンプル化」

ACVの操作解説画像

TGAで全世界的に、大々的に発表したことで、
これまでのシリーズには比べ物にならないほどグローバルな方向性を打ち出していると考えられる。
それこそシリーズ未経験者も楽しめるようなわかりやすく、歯ごたえあるものを目指すはず
それは長年のシリーズが抱えていた問題でもある。

「ACV」発売当初に話題になった操作方法を表すこの画像。
「○○ブースト」という名前がいくつもあって、なにがどう違うのが普通はわからないが、これでも過去作と比べれば単純化されており、当時の公式生放送では「簡単にした」とプロデューサーであった鍋島俊文氏は語っていた

というのも、1997年から発売されたこのシリーズは2004年まで左右のアナログスティックは押し込みしか機能していなかったからだ
左右旋回、上下視点変更という、いまでならFPSでおなじみの操作方法が、1997年当時のコントローラにはアナログスティックが普及されていなかったため、そのままの操作方法をずっと続けていたのだ
(ここらへんの体質が「エルデンリング」でも垣間見えるところがなんとも不安にさせる・・・)
専ら十字キーで前進後退・左右旋回。L1とR1で左右平行移動。
そしてL2とR2で上下視点移動を入力するという実質コントローラを持ち支えているのが薬指と小指だけになるという狂気の操作方法を余儀なくされる始末
(プレイヤーの中には上下視点移動を諦めている人もいた)

ACNXから一応アナログスティックでの入力も可能にはなったが、本格的にスティック操作が導入されたのはPlayStation3/Xbox360の時代になってからの「アーマードコア4(AC4)」から。
その2006、2007年という年は、あの「Call of Duty 4 : Modern Warfare」がコンシューマ版として発売された時期であり、今日まで続くFPSブームの最初期。ここからFPSでおなじみの操作方法が世の中に一気に広まった。
一見すると「AC4」はFPSでよくある操作方法として難しいものではないように思えるが、過去作と違ってゲーム速度の大幅増加が災いし、操作難度はそれほど変わっておらず、
高速移動するためのブースト操作がほぼ常時押しっぱなしという状態にもなっていたため、(過去作よりは優しくなったとは言えるが)操作方法の不親切さは拭いきれなかったというのが結論。

画像の「ACV」の操作方法は、「AC4」で常時押しっぱなしを余儀なくされたブースト移動がON/OFF形式となり、
一度ボタンを押せば再度ボタンを押さない限り常にブースト移動する単純化が図らわれた。
他にも壁際でボタンを押しっぱなしにしとけば壁に接触したときに自動的に壁蹴り(ブーストドライブ)するようになっていたり、UIの方にも各種弾数とエネルギー残量が中央に集約されるものになっていたりと、かなりの改革が行われたと言える。

今回TGAで世界に向けて発表した事を契機に、
シリーズには無かった極めて大きな変更が用意されている可能性がある



色々なものが”無い”

トレイラーには過去にはあったものが”無い”

予想されるシンプル化を彷彿とさせるのはトレイラーの中でも見受けられる。
元々1997年から始まった「AC」は形式として右手の射撃武器、左手の近接武器(ブレード等)。背中にミサイルやキャノンという構成だったが、シリーズ重ねるごとに(マンネリ化を防ぐため)足し算的に要素を増やしていった。
熱関連のシステムの追加でラジエータが追加されたり、追加に装備する武装が追加されたり、挙句の果てには前後左右毎にブースターがそれぞれ違うものを付けたりと、シリーズ進めば進むほどシステムの複雑化が進んだ

今回のトレイラーの中で特に目を引いたのが、両手に射撃武器を持った機体がいないということだ

初代の「AC」同様に右手には射撃武器らしきものを持っているが、左手には今回のトレイラーで大々的に見せていた近接武器のパイルバンカー、あるいはシールドといったものだけ。
これは、プレイヤーは左右射撃武器をリアルタイムで射撃するしないの操作をする必要がなくなったということを意味する
敵と距離が離れていれば右手の射撃。近かったら左手の武器・・・といったぐあいにプレイヤーが戦闘中に判断し操作しなければならないことをある程度シンプルにしていると言っていい
旧来のように装備した武器をガチャガチャ切り替えながら動き回る複雑なことをしなくてもよいものになっている可能性がある。

他には武装類が左右腕と背部の計4つしかないこと。
これまでは内臓兵装や肩の横に取り付ける補助武装などがあったが、今回そういったものが見当たらない。
そのせいか機体全体のフォルムは旧作のように極めてシンプルだ。巷では今回のトレイラーを見たファン達が旧作の「AC」を彷彿とさせると言うのはこれが要因と言える。



期待される駆け引き

シールド持ちとパイルバンカー持ちの戦闘

目を見張ったのが左手に装備している近接武器の種類。
片方の四脚タイプはシールドを発生させながらも、それを攻撃手段として使用しているシーンがある。
一方のパイルバンカーを左手に持っている機体は、なにやらコア(胴体)から光を放って相手のシールドを無効化しているように見える。

過去作にも左手に装備するシールドは存在していたが、今回のトレイラーを見る限り、このシールドもまた武器として使用できるようだ

このことから、旧作では問題だった「弾切れを起こすと何もできなくなる」という問題が解消されているようにも見えると同時に、全体的な火力の増加が考えられる
というのも今回射撃武器が右手、あるいは背部と、左右両手に射撃武器を持っていたときよりも装備できる射撃武器の数が少ない(左手がまるまる近接武器になっているため)。
ゲームバランスを考えた場合、右手の射撃武器だけでも相手を倒すことが出来るほどの瞬間火力や総火力を考えている可能性がある。つまりは旧作と似たような感じ。

一方でトレイラーの中では相手のシールドを無効化させるギミックも見られた。
コアから発せられていると思われるギミックのことから、これ自体は左手のパイルバンカーに備わっている機能というより機体そのものに備わっている可能性があるので、相手方となるシールド持ちの機体のコアにも備わっているかもしれない。
ただ、トレイラーの中ではシールドをかざすことなく相手攻撃を防ぐバリアのようなものを展開しているシーンもあるため、
恐らくはコアに備わっているギミックは、シールドを装備した場合のみ、全方位を防ぐバリアとそこから転じることができる攻撃に派生が可能で、通常時は今回のトレイラーで相手シールドを無効化した機能を備わっていると考えられる。

これらのことから、シンプルながら弾丸一発毎の火力の大きさと、それを防ぐか否かの左手武器の選択、
一撃必殺のパイルバンカーの選択をプレイヤーが選ぶ駆け引きを生んでいるかもしれない

こういった要素は今までのACにはそれほどメインとなっていなかった。



5年前から始まっていた

2017年末の特番にて、今回「AC6」のプロデューサー(当時は広報担当)が「今は仕込みの時期なので」という発言をしていたのを思い出した。
実はこの5年前というのは「エルデンリング」の企画が開始された時期でもある。
当時は「隻狼」で大盛り上がりになる前でもあったわけだが、この時から既にフロムソフトウェアの中ではアーマードコアを世界に向けたものへと考えていたということになる
2013年に発売されたACVも、実は色々と紆余曲折があった。

2010年に公開された「AC"5"」は、後に当時のプロデューサである鍋島俊文氏の判断でお蔵入りになった。
長年積み重ねてきたシリーズではあったが、変わり映えしない現状と常に局地的なファン層に向けたものであり続けることに危機感を覚えて、大変革をもたらした。

それが上手く行ったかどうかは別として、
10年前から既に存在していたこの危機感を、今、TGAという場所で大々的にお披露目したのは、
フロムソフトウェアが世界に向けてアーマードコアを発信させる確たる自信を持った瞬間だと言える
そのための期間がこの5年間だったと。

未だゲーム画面が出ていないため、色々と不安要素は拭えないが、
その意志に関してだけは、重く受け止めて次回情報を待ちたい。

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