「エルデンリング」について記しておきたいこと

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魔法使いキャラ

早いもので2022年の2月に発売された「エルデンリング」から一年。
発売日に購入してエンディングを迎えたのは4月1日。約一か月の狭間の地の旅でした。
プレイ時間約166時間。一周クリアするのにこんなに時間をかけるとは思わなかった・・・と言っても、そのうちの40時間ぐらいは無意味な探索と迷子に費やされていたので、ゲームクリアに直接的に影響した時間という意味では120時間程度・・・いやそれでも結構長い・・・。
フロム史上最大規模」と事前に言われた通り、ゲームのボリュームもさることながら、エンディングのスタッフロールもこれまでより長いうえ、海外スタッフの多さが目立った。
グローバルな作品ということで、今後こういった海外との繋がりが強くなっていくんだろうなぁと今更ながらに感じている(もっとも、それは前作「隻狼」がActivisionのもとで作られていたという前例があるが)。

偶然にもエルデンリング発売一週間前には、あの「Horizon Forbidden West」も発売されており、前作をプレイして楽しんだ身としてはそちらも見逃せなく、
エルデンリング発売前にホライゾンをクリアしてしまおう!」なんて、横道を無視してメインクエストを一直線するも、ホライゾンはホライゾンで歯ごたえもあり・・・結局未クリアのままエルデンリングへと移行した次第。

しかしながら今回のフロムソフトウェア最新作「エルデンリング」。
クリアしてからわかる諸々の問題点の多さを痛感せざるえない複雑な感情が芽生えたのも確かであり、
そのことについて、大手レビューサイトが手放しで褒めたたえた実情についても考えざる得ないなとも。


世間一般の評価

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2022年GOTYに選ばれた作品として相応しい高評価

各国の大手メディアレビューサイトの平均値をしめすメタクリティックは驚異の95以上。任天堂のあの「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」に匹敵するほどの数字をたたき出している。
当然その数字に似合う賞賛の言葉がたくさん並んだことは言わずもがな。
各国のレビューサイトを翻訳した記事がIGNJapanにある。

しかし一方で、ゲーム開発側としては「ホライゾン」チームからはこんな声もある。
実際PC版ではフレームレートの問題等々の細かな部分の不平不満があり、以前自分も記事にしたようにグラフィックについての部分にも色々な意見が存在する。
そういった声のせいか、メタスコアが95以上なのに対してユーザースコアはそれほど高いわけではない。画像のようにPC版に至っては控えめなものになっている(去年中ごろの数字)。

とはいえ、SNS等でエルデンリングについての感想を検索すれば「面白い!」という感想が飛び交っているのは事実であるため、この数字の差だけを見て色々と言うつもりはないのだけども、それにしても今回は色々と考えさせられる点が多すぎた



"体験"を重視したゲーム

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手描き調の曖昧な地図と、マップに一切反映されない文字だけの情報群

一通りプレイした感想としては、「エルデンリング」は世界を体験することに重きを置いたゲームであるということ。
それはこれまでの宮崎英高作品他、数々のフロムソフトウェアにありがちだった明示しない設定による、景色や状況、NPCの反応からプレイヤーが自発的に事情を感じ取る要素が、オープンワールドというジャンルで本領発揮したと言っても過言ではない

オープンワールドとは、プレイヤーの行動可能範囲が極端に広いゲームのことを指す。
広大な土地にプレイヤーを放り出して、行き先自由なプレイ体験を味わうことが出来るのが特徴であるが故に、プレイヤーによって攻略ルートが違ったり、遭遇するNPCやフィールドに違いが生じる。

今じゃそれほど珍しくもないオープンワールドというジャンルだが、こと「エルデンリング」においてはオープンワールドにおける最大の特徴を強調させたものであるという部分が、今日の高評価に繋がっていると言っていい
人が描いたような抽象的な表現にとどめている地図や、商人から購入できる情報が地図等にガイドラインとして表示されず、インベントリからアイテムテキストとという形で読むという、プレイヤーの想像力とそこから生じる「探索したい」という意気込みを掻き立てるつくりになっていることが、結果としてあの世界で冒険しているという体験を強固なものにしている

その時、その状況での出会いという、プレイヤーの数だけ違う体験をなによりも重視していることを表している。



新規タイトルであることを疑う

新規タイトルではあるものの、この作品は過去の、いわゆるソウルシリーズの進化系として作られたものであるというのがインタビュー等で明かされている。

過去の宮崎英高作品をどれかひとつでも遊んだ人なら、なんとなく既視感がある設定なり光景がエルデンリング内で見つかると思う。それぐらいエルデンリングという作品はソウルシリーズの集大成と言っても過言ではない
それはなにも物語や設定だけでなく、システム周りや操作系統に関しても過去作とほぼ同じなものになっており、ソウルシリーズの最終形態と言ってもいい。
しかしながら、「ダークソウル」というネームバリューを捨てることまでしたにも関わらず、何故今回ここまでダークソウル"イズム"なものを打ち出してきたのかという点には疑問を感じずにはいられないというのも事実



シリーズ作品としての宿命

2009年発売のデモンズソウルから始まった

「エルデンリング」がソウルシリーズ系列である以上は醍醐味のひとつである「高難易度」は欠かせない。
2009年の「デモンズソウル」を皮切りに、"死にゲー"といういちジャンルを築き上げていく中で、
より難しく、より強い達成感をという方向性で、作品を重ねるごとに難易度は上がっていった。
恐らくダークソウルシリーズ、ないし近年のフロムソフトウェアの代表作を体験したことがある人ならば、14年前の「デモンズソウル」はひどく簡単に感じるだろう。

これは個人的な推察ではあるけども、「デモンズソウル」以降のフロムソフトウェアが築き上げた”死にゲー”と呼ばれるシリーズによって、ゲームプレイヤーの全体的なプレイスキルの上昇が起きたと考えられる
勿論それは今日まで続くFPSの大流行によって、左右スティックを同時に操作することにそれほど違和感感じることなく出来るようになったというのもあるが。

ゲームに触れてこなかった人たちは基本的に左右スティックを同時に操作すること自体ハードルが高かったりする。
「星のカービィ ディスカバリー」
のこのページでは、開発者自らの言葉で左右スティックで移動とカメラを同時に操作するのは初心者には難しいものであるとしており、ゲームをやる人とやらない人では操作の仕方1つとってもかなりの差がある
実際、自分も幼い頃はそれに四苦八苦していた記憶がある。
現代では昔と比べてデジタル配信やYouTuber達のゲーム実況動画をキッカケにして、ゲームを買ってプレイするということに対するハードルが低くく、
プレイヤーに対するゲーム側の間口は広いが、そのゲームを楽めるか否かという点に置いては昔とそれほど変わっていない問題がある。

そんな中で高難易度を謳い文句にするゲームである以上は、
ニッチなゲームとして、ニッチなゲームを欲する数少ないプレイヤーに向けて製作するのは当たり前で、
そのプレイヤー達が成長するのならば、ゲームもまた成長していかなくてはならない

「デモンズソウル」以降の鰻登りの難易度は必要なものであり、避けられない要素でもあったと言える。



14年間進化しなかった

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話題になったエルデンリングのレビュー

しかしながらシリーズ重ねるごとに上がっていく難易度に対して、今回の「エルデンリング」は悪い意味での難易度上昇と言わざる得ない
エルデンリングを表すものとして半ばネットミームとまで化したこの「敵だけ楽しそう」という言葉。
正直自分もそう思うほどに、今作の敵やマップ構造を含む全体的な難易度が明らかにやりすぎている

左右スティックで移動とカメラ操作。
LRボタンでそれぞれ左右の手に持った武器を振る。
この操作方法は14年前の2009年に発売された「デモンズソウル」からそう変わっていない
「エルデンリング」を精神的続編であり集大成といった意味の言葉を度々発言してきた宮崎ディレクターのことを考えれば、システムの流用自体は別に悪いことでもないし、コスト面でも恐らく得しかないだろう。
しかしこの14年の間に進歩した他社作品と比べて、シビアなプレイが要求される高難易度ゲームとして相応しいものであるかという点については明確に「NO!」だ

スプリントと回避が同じボタンに割り当てられている以上、咄嗟に出てほしい回避(ローリング)アクションが、ボタンを離したときに反応するようになっているため、
その際の判定(プレイヤーが長押しをするのかどうかを見極めるための僅かな時間)によってプレイヤーの意志と操作がおぼつかなくなることがあるのが「エルデンリング」をプレイするという意味では致命的。
昔と同じ操作ではあるものの、難易度上昇に伴ってどうにも無視できないレベルにまでなってきたと言える
しかもこの操作のラグはアップデートで多少軽減されており、当初は今よりもっと酷いものでプレイさせようとしていたというところに、フロムソフトウェアのゲームの難易度に対する考え方を今一度見直さなければならない

昔からある投擲物に関しても、構える体勢や着弾点はおろか、どこに狙おうとしているのかといった部分は14年前同様に何も無い
標的を固定して投げても、飛距離の調節はしてくれないため当たらないうえに投げるモーション自体も遅くやる気の無いもの。
折角アイテムをクラフトできるようになったというのに、正直無くてもいいシステムになっているのは、14年前から進化していない部分を流用しているからと言っても不思議ではない。

ユーザーインターフェースに関しても、いまだに目的のアイテムあるいは魔法を選ぶために十字キーを何回も押さなくてはならないうえ、
一度順番を通り越してしまったら再度数回押さなければならないといった煩わしいシステムをいまだに継承している始末。
リングメニューも珍しくもない昨今、
最新作・集大成・最高傑作と呼ばれながら時代遅れの代物でもある



無意味な不親切さ

左はジャンプしなくても行けるが右はジャンプが必要

「エルデンリング」では明確に”迷わせるためのマップ”というものが存在する。
忌み捨ての地下や一部地下墓地には同じような構図を繰り返すように作られているものがあるため、迷って当たり前のつくりになっているが、
行き先が明確にプレイヤーには伝わりづらいこの作品で、一部で行き先までの道のりが極めて不親切なつくりになっているのは無意味なものとしか言いようがない

画像の左側は永遠の都、ノクローン。
画像の右側は王都ローデイルだが、左は本筋とは関係ない道であるが右は進まなければならない道である。
御覧のように先へ進む必要があるにも関わらず画像右のローデイルのほうはこれが通れる道なのかどうかもわからないうえ、通れるかどうか判断するための行き先自体も隠れて目視することができない
角度によってはジャンプでは登れなかったりするなど、明らかにゲームとしての楽しさに直結しない無意味な不親切さである。

プレイヤーが休息できる祝福においても、目的地を指し示す光の筋が目立たないうえ、その光が目的地を指していることもあれば別の祝福の方角を指していることもある。
おまけに、雰囲気を重視してか、そのシステムを伝えるためのテキストが従来のフレーバーテキストのように書かれているため、
比喩表現なのかゲーム的な説明なのかわかりにくい

キーアイテムの取得ないしイベント時に画面下に表示されるウィンドウが規定のボタンを押さない限り消えないうえ、そのウィンドウが表示されている間は移動以外のアクションが出来ない。
目立たないウィンドウに気付かずに接敵しようものなら、敵の目の前で何も出来ない棒立ち状態に陥ることも。
何故ひとつのボタンでしかウィンドウを消せないようにしたのかわからない。

円卓から移動する際の説明があまりないことや、いまだに壁を貫通して攻撃されることがあったりするなど、不親切だからこそ楽しめるものとはほど遠い欠陥部分と言わざる得ない



ゲームバランスについて

出血武器が強いというより敵がタフ過ぎる

システム周りの不平不満もさることながら、難易度において重要な部分となる武器性能や敵の強さにも色々と悩まされる。

従来シリーズでは能力値による攻撃力の伸び代が40ほどをピークにして、それ以上は緩やかになっていくのに対し、今作は敵の体力が比較的高くなったこともあってか、80まで引き上げられた。
しかしそれでも敵の体力は十分多く、上限値が99であることもあって、それ以上の攻撃力を目指そうとすると魔法や奇跡による自己強化が必要になってくる。
そうした環境もあってか、より効率的に敵を倒すために状態異常の出血や凍傷が用いられることが多く、
特に出血に関しては割合ダメージを与える仕様から、自身の能力値の高さは関係ないうえ、出血が起きた段階で敵を確実に怯ませることが出来るため防御面でも優秀。
筋力や技術を80まで上げてやるよりも、装備条件の最低値で出血を繰り返し発生させた方が素早くダメージを出すことができるし、敵も怯んでくれるとなれば、他の武器を使用する理由はない。
過去の作品であれば敵の体力もそれほど高くなかったため、バランスとしては(少なくとも攻略という意味においては)壊れていると言われるほど目立つものではなかった。
おまけに今作は戦技によるダメージは自身の能力値よりも武器の強化度合に大きく影響されているうえ、プレイヤーの攻撃に対してボスは全くと言っていいほど怯まず、その分出血武器による怯みが目立っている始末。

相変わらず実用性が皆無な攻撃モーションも多々あり、最終的には両手に武器を持ってひたすらジャンプ攻撃をする通称「バッタ」が最効率となってしまう有様で、出血武器なら尚更効率が良いものになってしまっている。
ボスのモーションには不自然なほど攻撃タイミングをズラしてきたりするなど、難しいと感じる部分にはそこかしこにわざとらしく、作為的な部分が目立つのも、今作のゲームバランスの悪さに拍車をかけている。



オープンワールドに関して

約一週間前に発売された「ホライゾン」はあらゆる意味で対照的

「エルデンリング」における上記の点は欠点・欠陥と言えるが、そもそものオープンワールドというジャンル自体の難しさもある。
広大なマップによる探索の必然性と体験は没入感とやりごたえを生んでいると同時に、
自由に行き先を決められる分、ゲームの進行順がプレイヤーによって違うため、必ずしも製作の意図した物語の順序立てにはなりづらいということだ
「エルデンリング」の場合、ローデイルを抜けた先の物語の展開において、突然全く違う場所に飛ばされて、そこにいる理由も目的もわからないまま、なんとなくボスを倒して物語を進めるという、最初からストーリーのことなんざ何も考えていないような構成になっている
それが良いことかどうかは別として、オープンワールドにおいて物語の順序立てが難しいことである以上、プレイヤーの体験そのものを物語としてゲーム側からは語ろうとしないというのはひとつの手段ではある

一方で「エルデンリング」の一週間前に発売された「ホライゾン」は執拗なまでに物語を語ろうと主人公のアーロイの独白をもって、アーロイを操作しているというよりアーロイが我々プレイヤーを案内しているような感覚に陥る
勿論それはオープンワールドという自由度の高さが故に存在する難しさをフォローするためのガイドラインなわけだが、逆にそれがプレイヤーの冒険している感覚、探索したいという気持ちを薄くさせているとも言える。これは「エルデンリング」とは真逆のもの。

目的地までの道のりをマップに表示させる「ホライゾン」と、
マップにはシンボルとなるマークしか置かれない「エルデンリング」。

一方で「ホライゾン」にはオープンワールドの理想的な部分もある。
主人公のアーロイの武器の弓やスリンガーには、当然矢などの消費アイテムが必要不可欠。
ゲームプレイにおいて最重要物資とも言うべきそれら消費アイテムは、マップに生息(?)している機械獣達の部品から一部を取り出して製作する必要がある。
そのサバイバル要素によって、広いマップで敵を倒さなければならない理由付けと報酬によって、寄り道をする必然性があるのが「ホライゾン」。
「エルデンリング」の場合はそのサバイバル要素が薄い。
同じようにアイテムを製作および使用できるが、その重要性がまるで違うため、「エルデンリング」は道中の敵を倒す理由がほぼ無いに等しく、無理してやられるぐらいなら無視したほうが良いケースが多々ある。
オープンワールドという広大なマップがそれを後押しする形になってしまったとも言える。

両ゲーム、どちらも良いところ悪いところが存在し、
オープンワールドゲームの解釈の違いという意味で見比べてみると非常に面白い



クリアして思ったこと

不平不満あれど、面白かったことは面白かったが、
それも最初のうちだけだったということを考えると、やはり今作はフロムソフトウェアにとってオープンワールドゲームの実験作だったと言ってもいいのかもしれない。
これを書いているときにDLCの発表も来たが、正直マレニアと同等あるいは超えるほどの強さ(めんどくささ and 理不尽さ and つまらなさ)の敵を倒してまであの世界の秘密を知りたいか?と言われると「別に」と言わざるえないのが率直な感想

2022年のGame of The Yearを獲得したものの、それ以外の賞がほとんど取れなかったというのは、なんとなく納得できるなぁ・・・なんて。

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