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あるカーデザイナーのクルマ選び006

さて、本題に戻りましょう。
なんと!私は、そのカローラリフトバックでレースに出ることになったのです。

レースといっても、A級ライセンスを取るための模擬レースです。

その前には、B級ライセンスで競技に出場経験がないとA級取得の権利がありません。それを同時にやれるイベントがあり、参加することにしました。
ずっとレースを続けるほど、お金はなかったので、ただ、サーキットを走れるのが嬉しいというのとA級ライセンスが取れるというのだけの動機でした。
無事、ライセンスは取れたのですが、レース出場経験が何年かないと無効になってしまうので、持っていたのはその時だけでした。

申し込み説明会では、レンタカー以外ならどんな車でも大丈夫です。というので、排ガス規制エンジンのカローラリフトバックのハイデラックスでも全然問題ない、一応、アブソーバーは変えてるし、と意気込んで筑波サーキットに向かいました。

ところが、そこにはキャリアトラックからB110のTSサニー フルレース仕様を降ろして、整備してる人達がいたりしました。「話が違いません?」と一気に不安になってしまいました。

確かに、中にはノーマル車もいるけど、最新型のフェアレディZだったりと、それはそれは走る気満々のパドック裏でした。

車は、保安部品などが、もしもの衝突の際に飛び散らないようにテープを貼ることが義務付けられ、ドライバーはヘルメット、グローブを装着、服は化繊NG、靴はゴム底といった簡単なルールがありました。

私は友人のバイクのジェットヘルに軍手、彼女に編んでもらった手編みのセーターにGパンとコンバース。とてもサーキットには似つかない、バイトで配達中のお兄さんという感じでした。

そこで同行した友人が「もっとサーキット仕様っぽくしようぜ!」とスペアタイアを外し、降ろせる荷物は車載工具類までも降ろし、さすがにシートは外す時間もなく断念しましたが、軽量化を行いしました。スペアタイアを外したものだから、ますますフロントヘビーのライトバンチューニングになってしまいました。

それでもゼッケンを貼ると、何となく格好良くなり、いざスタート。タイムアタックもサニーのTSレース車や最新型フェアレディZがいる中で、上位3分の1くらいには入り、気を良くして、いよいよ模擬レースに臨みました。

タイムアタックというB級ライセンスで出場できる競技は1台づつでしか走れないのですが、A級となると何台もが同時に走る事が許され、その分、様々なルールに従い、競い合わないといけなくなります。

でも、おそらくほぼ全員が、大手を振ってレースするなんて初めてな訳で、当然熱くなるので、「ゼッケン何番、走行妨害しないように」となるのです。

そうして始まった素人による模擬レース、そう簡単に抜いたりできるものではなく、私のカローラの周りにも何台かが絡まるように走っていました。

その中には、パドック裏で見たピカピカの真っ赤なフェアレディZの姿も。直線では排気量や馬力の違いもあり当然置いていかれるのですが、コーナーではテールトゥノーズ。一瞬でも抜いて見たいが、成長した2代目フェアレディZの大きなボディ(今の車からすればそれでも小ぶりだが)が左右に揺れテールを振り振りするのでので、近づけない。それなりのスピードでお互い走っているのですが、運転してるドライバーからは全ての挙動がスローモーション。最近はオンボードカメラ映像なんてYouTubeで簡単に観る事ができるが、その頃はそんな景色を見るのも初めてだし、全てがドキドキ。何とか、Zにぶつけることもなく無事終了。レースはぶつけても基本は自己責任という誓約のもとに行うのですが、流石に新車のZに突っ込みたくはありませんでした。

つづく

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