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あるカーデザイナーのクルマ選び005

ここで少しだけ、この時代のカローラ30のバリエーションについて触れておきましょう。

写真にあるように、基本のボディ形状はこの5バリエーション。写真にはないですが、セダンベースのライトバンというボディもありましたので、10種+1です。
バンにはカローラ/スプリンターの作り分けはなかったと思います。そこもさすがトヨタ、商売用の車には無駄なコストをかけずに価格を抑える狙いもあったのだと思います。

しかし、今は全く見なくなった2ドアセダンというのがあったのが懐かしいです。

サニーも昔は2ドアセダンが基本で4ドアというのはワンクラス上のイメージがありました。あのBMW3シリーズも初めは2ドアセダンですからね。

カローラのこの30世代は”ひろびろカローラ”というキャッチフレーズで4ドアをメインに打ち出していました。ハーフタレントのジェリー藤尾夫妻がイメージキャラクターとして採用されていました。日本人より少し規格外という訴求だったのかもですね。(ご存知かなぁ??笑)
2ドアは営業車的な位置づけで上級グレードの設定もありませんでした。

また、セダンとハードトップは排気量によってフロント周りのデザインが差別化してありました。1200ccと1500cc以上とではボンネットフードも作り分けられていました。1200がプレーンなのに対し、1500以上は立体的な造形になって、クラス感表現に大きく貢献していました。テールランプも外形は同じにして、内側のターン、バックアップ、リアリフレクター、テール/ストップの配列を変えて差別化してありました。

そのセダンのセンターピラーから前を流用しながら、実はドアがサッシュレス化されて作られていたのが2ドアハードトップです。

サッシュ、つまりサイドウインドウの窓枠がないだけなのですが、これはドアシール(雨など水滴が侵入しないようにする構造)の設計が違うのでボディ側も同じ部品のままではダメなのです。これをドアセクションを共通にしながら大胆にも変更している点が注目でした。

しかし、それにより、上級車で人気だった”ハードトップ”、本来は硬い素材の屋根(ルーフ)を意味するのですが、この当時の日本ではセンターピターがなく、全部のサイドウインドウを下げると気持ちのいい解放感が得られる、ものを指していました。その当時、大流行りのこの形式を採用し、ワンクラス上の演出としては申し分なかったと思います。

そして、セダンベースよりは全高を低く抑えた、クーペとリフトバック。
これらは基本2ドアなのでフロントのみのサッシュレスドアを共用し、後ろ半分をトランク形式にするかハッチバックにするかの作り分けを採用。
顔周りはカローラは親しみやすいフレンドリーな印象に対し、スプリンターは彫りの深い立体的な雰囲気でダイナックな印象を演出していました。

2ドアハードトップと2ドアクーペには1600ccDOHCエンジンを搭載したレビン/トレノが設定され、後にリフトバックにもGTという名称で同じエンジンが搭載されました。このように、概要だけでもこれだけの作り分けがあり、でもトータルとしては数多くのユーザーニーズに最大限に応えられる工夫満載の力の入れ方は、トヨタがこの車に賭けた想いがいかに強かったかを感じ取ることができます。

この時のライバル車サニーは1200ccに対し1400ccをサニーエクセレントとサブネームを与えていましたが、ボデイ形状は2ドア/4ドアセダンと3ドアハッチバッククーペと商用バンの4つだけでした。

つづく

(読者の方から情報を頂き、一部、追記しました。Yさん、ありがとうございます)

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