古今集巻第十六 哀傷歌 852番
河原の左のおほいまうちぎみの身まかりてのち、かの家にまかりてありけるに、塩釜といふ所のさまをつくれりけるを見てよめる
つらゆき
君まさで煙たえにししほがまのうらさびしくも見え渡るかな
河原の左大臣が亡くなった後、その家に行っていた時に、塩釜という所の情景を箱庭に作ったものを見て詠んだ歌
紀貫之
あなたがいらっしゃらないので、煙が途絶えた塩釜でさえ、なんとなく寂しく見えるものだ
河原の左大臣(かはらのひだりのおほいまうちぎみ)は、源融(みなもとのとおる)のことです。
塩釜は、宮城県の歌枕の一つ、塩釜のことですが、どのような作り物かは分かりません。煙が途絶えたと言っているので、海辺で塩焼きをするような風景に、塩焼き釜として香炉でも置いたのかもしれません。塩釜は、多賀城が近く港として使われており、製塩も盛んだったそうです。
塩釜の煙が絶えたというのは、火葬が終わったことも意味していると思います。
「君まさで」の、「ます」は、「いる」の尊敬語、「で」は否定の接続詞で、「あなたがいらっしゃらないので」の意味。
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