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女を使い過ぎた女の左手

女を使い過ぎた女の左手
突き放すために必要な距離の圧縮が
大胆にも炎のすれ違いを境界線とする
別れの合図には事欠かないけれども
女が女を掻き抱こうとする間際の
未知の喘ぎの妨げにはなるだろう
左手が招き寄せようとする期限切れの芳香
包まれていたいと願う誰も彼もが
死の褥に変わり果てていて
女を包んでいた事実に気づかない悪夢
女の失神にはいつも蚕の希望が付き纏う
繭の切開だけが見せる偽りの楽園に似て
陰部の湿潤を開かれた手の穴へと差し出している
舐める前に入れろの指令が
出会いの合図を蔑ろにすることで
色のない性行為の風景に浸れる機会を作るだろう
遠くの女より近くの女に絶望的な遠さを付与する
あの灰の糸でもって女は自分自身を抱きしめるのだ

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