ヴィクトリア時代を舞台とする乳脂肪分過多なファンタジー 岩波少年文庫を全部読む。(142) エリザベス・グージ『まぼろしの白馬』
1842年、首都からウェストカントリーへ
エリザベス・グージ『まぼろしの白馬』(1946。石井桃子訳、岩波少年文庫)は、約100年前の初期ヴィクトリア時代を舞台とする、芳醇なファンタジー小説です。
1842年、ロンドン。赤毛でそばかすのあるマリア・メリウェザーは父をなくし、13歳で孤児となりました。
マリアは、食い意地の張ったスパニエルのウィギンズを連れて、家庭教師のジェイン・ヘリオトロープ先生に導かれ、ウェストカントリー(イングランド南西部)のシルヴァリーデュー村にあるムーンエイカー館に送られることになります。
ヘリオトロープ先生はとても背が高く、青い瞳をして、むかし気質の考えかたの人です。
マリアを乗せた馬車を操るのは、ベンジャミン卿の馭者兼庭師のディグウィード。歯のない、しわだらけの小柄な老人。
ムーンエイカーの不思議な世界
ムーンエイカーの領主である老紳士ベンジャミン・メリウェザー卿は、マリアの遠縁(石井訳ではcousinを〈遠いいとこ〉と訳してます。太字強調は原文では傍点)で後見人でした。いちばん近い親戚が彼なのでした。
マリアを丁重に迎え入れますが、彼にはなにかしら重い過去がありそうです。
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