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福音館文庫を全部読む。(3)ジブリではなく、朝ドラふうのファンタジー。 いぬいとみこ『木かげの家の小人たち』

いぬいとみこ『木かげの家の小人たち』(福音館文庫)は、英国由来の「ファンタジー文学」が日本で手探り状態にあった1959年に刊行されました。

とはいえこれはまた、第2次世界大戦の体験から出発した紛れもない「戦後文学」でもあります。

戦前戦中のインテリ家庭に小人が棲む

大正2(1913)年、東京の尋常小学校3年生・森山達夫は、横浜から英国に帰る英語教師ミス・マクラクランに、小人のアッシュ夫妻(バルボーとその妻ファーン)の身柄を託されました。
この「日本の歴史上の年号」と「小人という英国民話のキャラクター」との同居は、1959年という早い時代にあっては恐るべき新機軸だっただろうと思われます。

注意点はふたつ。
カップ1杯の牛乳を毎朝かかさず用意する。
小人の姿がよその人に見つからないようにする。

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1,739字
21世紀の児童文学を牽引してきた存在のひとつ、福音館文庫のレパートリーを取り上げていきます。不定期更新。

福音館文庫創刊20周年を勝手に祝います。 「岩波少年文庫を全部読む。」( https://note.com/chinobox/m/mc4c…

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