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岩波少年文庫を全部読む。(55) ナニーの顔も3度まで パミラ・リンドン・トラヴァーズ『公園のメアリー・ポピンズ』

パミラ・リンドン・トラヴァーズの《メアリー・ポピンズ》シリーズ第4作です。

メアリー・ポピンズが去ったあとのことはいっさい不明

第3作『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』は、前回書いたように、第2作から8年おいて、第2次世界大戦のさいちゅうに刊行されています。

これで完結! ということで、もうメアリー・ポピンズは二度と戻ってこない。

メアリー・ポピンズがいなくなっちゃったあと、子どもたちやバンクス家の人たちがどうなったのかってことにかんして、いっさい触れていません。

このあたり、お祭りが終わったあと、人々が日常に帰るところは語らないよ、っていうような感じもするんです。

ナニーの顔も三度まで

で、この第4作。
これはですね、あの3冊目が出てから9年経って、戦後の1952年に刊行されています。
日本でいうならば、サンフランシスコ講和条約で日本の占領が明けた年です。

メアリー・ポピンズの1作目から3作目までのような、各章1話完結あるいはそれに近いスタイルで、連作短篇集のようにお話が続いていくというスタイルは、このシリーズではおそらく、この作品が最後なんじゃないかな。

この『公園のメアリー・ポピンズ』はしかし、過去3冊と違うところもあります。
先述のとおり、最初の3冊はメアリー・ポピンズがいきなりやってきて、いろんなことをやらかして、最後いきなり去っていくというパターン、これを3回繰り返しています。

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