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チノアソビ大全

Podcast「チノアソビ」では語れなかったことをつらつらと。リベラル・アーツを中心に置くことを意識しつつも、政治・経済・その他時事ニュースも交えながら林田(専門:総務省地域力創…
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#哲学

意識現象学におけるアルコールについての一考察 篇

1. サービスはウィンブルドンの真ん中で 夜が更けて、時刻は深夜に差しかかろうとする頃、男性客が一人、入り口からズイズイッとカウンターへと歩を進めてくる。  この日は、平日の夜だというのに、店内は結構、混み合っていて、空いているカウンターも残り一席となっていた。ぼくが、その空いている一席を、右手でどうぞと促すと、男性客はそっと座って間もなくこう言った。  「いま、ご飯を食べて来ました。お酒もたくさん飲んで来ました。あと一杯だけ、飲んで帰りたいと思います。何か適当なものを

カエルとの対話 篇

 皆がもう寝静まってしまった、或る蒸し暑い夜。  一匹のカエルが泣きだす。  そうすると、釣られてか釣られないでか、カエルたちは一斉に叫びだす。  瞬時に。それはもう、おそろしいまでのスピードで。  静かだった辺りは、まるで都会の真昼のような喧噪に包まれる。  しかも、暗闇のまま。  「カエルよ。お前たちは、何故、そんなに懸命に泣くのだ。」  ぼくは、その力強くも悲しげな声の理由を問う。  すると、中でもいちばん年寄のカエルという奴が、ぼくの前にピョンと飛び出してきて

死生観-輪廻(リング)-篇

1.  唯物論者の夏 暑くなってきた。夏が来る。  妥協しない、アセらない、寂しさに負けない夏が近づいてくると、この話をフと思い出す。  ところで齢も五十に近くなって来ると、  「ひょっとして、ぼくの霊感って強いんじゃないのかッ?」 と感じるようになってくる。とにかく色んな意味で、見てはいけないものを見てしまったり、そこにあるはずの無いものの存在を、ガッチリと受け止めてしまったりすることがあるのだ。  だが多分、気のせいだ、と思っている。  ぼくは、学生時分から経