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風の香

沈金(ちんきん)とは、江戸時代から日本に伝わる伝統工芸の一つです。塗り終わり完成した漆器に専用のノミを当て、文様を彫ります。

全て彫り終わってから漆を接着剤に、彫った溝に金粉を沈めます。「金」が溝に「沈む」ことから「沈金」と呼ばれる、漆芸の加飾方法の一つです。

彫る加飾技法のため、光の当たる角度によって表情が大きく変わる事が大きな特徴と言えます。

伝統工芸とは、その形状を最低100年保つことが出来なければ「伝統工芸」と呼ぶことは出来ません。

ー作品についてー

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友人が大事に飼っていた猫の写真が元になった作品です。

朝、窓を開けて空気の入れ替えをしていた時に撮った1枚だそうで、幸せでリラックスしているこの猫の空気感にとても惹かれました。

この彫り方は、こすりノミというノミを使い、柔らかい毛の表現、同じノミで毛彫りを施し、何より柔らかさ優しさを表現したいと想い続けながら彫りました。

既に亡くなっているこのモデルの猫ですが、どうか作品の中で蘇り生き返って欲しいと強く思いました。

ー作品制作にあたりー

どの作品においても、私はその作品に「生きて」欲しいと願い祈りながら
ノミを当て彫っています。色入れの際も同様に祈りながら。

動物や人物がモチーフの時は特にその想いは強くなりますが、般若心経のように文字のみの作品であっても風景であっても、想いは同じです。「生きた」作品が、どなたかの心に「生きて」何かを届けたとしたら、それが私の本望です。

また、伝統について語るとすれば、本来ならば伝統工芸という縛りの中で
アクリル板に沈金とは、考えられない事なのかもしれません。

しかし、「伝統」とは、時代時代によってその都度変化し少しずつ形を変えながら「伝統」として後世に残っていく物だと、私は考えます。

今後も、もしかしたら漆でもなくアクリル板でもない何か違う素材に沈金を施すのかも知れません。

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