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中国での投資家の探し方

北京で会社を作ってはや数ヶ月。我々も資金調達を行おうということで、色々と動いてみてわかったことをシェアしてみます。このコロナ禍ではなかなか中国で起業しようという人は少ないかと思いますが、来年以降でコロナが落ち着いたタイミングで中国進出しようと思っている人には参考になる内容ではないでしょうか。

目次
◆中国市場の現状
◆投資家探しの方法
 1、とにかくメール
 2、マッチングアプリ経由
 3、FA経由
 4、コンペで入賞し賞金をゲット
◆注意点


■中国市場の現状

中国の投資家事情としては、コロナの影響がまだ多少残っているのと、さまざまな政府規制によって若干及び腰との噂があります。新規より今までの投資先のケアが中心になっている様子です。

そんな状況であっても中国はトレンドの移り変わりが非常に早い。本当にびっくりするくらい早いです。オンラインやネットニュースで記事になっていることはすでに過去であり、日本に出ているネットニュースでは最新のリアルな実情は得にくいというのが実際のところです。またニュース記事は恣意的なものも多く、時に鵜呑みにするのは非常に危険です。

そんな移り変わりの早い中国の投資家はというと、当然社会の流れに沿って彼らの興味も移り変わっていくスピードが早いようです。

例えば、2021年は春頃からメタバース、バーチャル、DXなどが注目(再度注目?)を浴びるとともに、投資家の興味と資金も注目分野へ集中し、投資合戦が行われ半年〜1年でその分野への投資熱は冷め、次に移るようです。そしてそのタイミングで投資を受けれなかったスタートアップはそのジャンルの残り物として見向きもされなくなる、という恐ろしい話を聞いたので、僕らも若干焦っているのが実際のところ。

この特定ジャンルの投資熱は、春節前で一区切りし、春節後は新しい分野に目を向ける傾向があるという。

次の注目されるジャンルは何になるのか非常に興味津々であり、このスピード感は逆に非常に怖くもあります。投資のトレンドとタイミングを逃すと、興味だけでなく、予算も他の分野に移るので、一層調達のハードルが上がるようです。

■投資家探しの方法

恐らく無数にあるであろう投資家へのアプローチ方法のうち、僕らが試している方法を紹介したいと思います。他にも色々と方法はあると思うので、ぜひもっといい方法がある場合は教えていただけると嬉しいです。


1、とにかくメール 

これはとにかく中国VCをネット検索しウェブサイトからメールを送る手法です。非常に地味で人海戦術的な方法になります。

この手法を初めてすぐに、「日本以上にたくさん存在する魑魅魍魎系スタートアップたちから日々メールをもらっているVCが、きちんと1件ずつメールを見るはずがない」という結論に至り、10件ほど送って方針転換をすることになりました。事実成果はゼロ。この時に送ったVCからは返信はもらえませんでした。


2、マッチングアプリ経由

その後、僕が探したのは中国国内に存在するマッチングアプリの存在です。日本にもタップルやらOmiaiなどのマッチングアプリがありますが、男女のマッチングではなく、エンジェル投資家とVCとスタートアップをつなぐマッチングアプリやプラットフォームが多数存在します。

chuangyebang英語名はCYZONEというらしい

まず最初に『创业邦』というプラットフォームを発見しました。このプラットフォームにはアプリがあり、有料会員になるとVCやエンジェルへ直接メッセージを送れるようになっています。無料部分でも、エンジェルやVCの検索、各ポートフォリオがわかり、どの分野に興味があるかがデータでわかりますし、どのシリーズへ多く投資しているかもわかります。

エンジェルのリスト 投資領域や金額レンジも記載
こちらはVCのリスト 有名どころが並びます
投資分野、シリーズ、場所での検索も可能
セコイアキャピタルのポートフォリオ(恐らくチャイナのみ)隣にシリーズ別のチャートもあり

年会費は高級会員で2998元/年(約5万円)一般会員で1098元/年(約1万8千円)となっています。さんざん迷った挙句、結局無料部分のみを利用。

有料は申し込んだことないので、有料会員の方は使い心地を教えてほしい

ここで僕らが取ったのは無料部分でwebサイトへアクセスし、BP(ビジネスプラン)を送りつけるという、以前の焼石に水と同じ戦法。ただし今回は投資分野、シリーズ、都市で絞り込んで角度を上げているのと、メールの見出しにかなり気を使いました。ちょっと挑発的なタイトルにすることで目をひく工夫をします。

ここでは100件ほどメールを送り、返信は10件と、10%の確率。

その後、返信があったところと面談していきました。返信のあったVCとはほぼ面談をしている、もしくは約束がある状況。


3、FA経由

FA(ファイナンシャルアドバイザー)という職業があり、恐らく日本のファイナンシャルアドバイザーとは仕事内容が違うように思いますが(よくわかってませんが汗)、彼らがスタートアップと投資家を繋いでくれます。以前、香港MBA時代に知り合ったスタートアップ経営者(香港人で深圳で起業)と話していたところ、「まずは優秀なFAを見つけるべきだ」とのアドバイスをもらったのを思いだし、FAを探すことに。FAのネットワークと人脈を駆使して、スタートアップの意向にあった投資家たちを紹介してもらいます。

僕らは2つのFAと契約。条件は投資成立後、調達金額の3〜8%前後が多いようだが、そのほか着手金がある場合などで、パーセンテージが変わる場合もあるようです。

こちらではFAがアプローチをしてくれ、興味を持ってくれたVCと面談をし始め、現在も進行中という感じです。


4、コンペに出場し賞金をゲット

中国国内では各種コンペが行われています。主催者はさまざまで、北京市などの市や省が主催するものもあれば、VCや企業が主催するものもあります。僕らは北京市が主催するコンペで優秀賞を獲得したので、賞金が20万元(約320万円)もらえることになっています。(この賞金が振り込まれるまでのプロセスは非常に大変なので、正直外資で外国人の会社には一概におすすめできません。会社を現地で登記すること、創業者全員の社保加入と外国人用のIDカードの取得、そして現地で法人設立後3ヶ月の事業実態があることなどの条件があり、これをクリアするのが結構大変です。これはまた別の機会があれば触れます)ちなみにこのコンペの1位の賞金は200万元(約3200万円)でした。

基本的に各省や市主催のコンペでは、そのエリアでの起業(登記、もしくは社会保険登録)が必要になることがほとんどです。なので自分が起業したいエリアのコンペに申し込むのがいいと思います。僕らの調べた状況では上海はすでにスタートアップも飽和状態なのであまり優遇政策を受けられないイメージです。北京はまだなんとかという感じ。そのほか成都などでは政府主導で特区を作っていたりしますので、今まさに企業誘致している最中、また武漢や海南島などでも積極的に企業誘致をしています。そのようなところで起業することで、オフィスの無償提供、税金面での優遇措置などの優遇措置を受けれたりします。

僕らは武漢、杭州のコンペにも参加したことがあります。ただし、地方都市によっては主催がしっかりしていなく、コンペ自体の仕切りが非常に悪かったり、蓋を開けてみると地元の参加者しか入賞していないなどもありました。その辺りは実際にやり取りをしながら判断するしかありません。

僕らが入賞したコンペ 世界から4000組以上が参加したとされているようです

僕らが参加した北京のコンペでは、有名VCも審査員として参加しているので、興味があるVCからアプローチがあったりします。

現在3〜4社が興味を持ってくれているので、これから面談予定。


■注意点

実際に僕らが色々なVCと話していくうちに思ったことと、FAからもらったアドバイスからいくつかご紹介します。恐らく中国に限らず、どの国でも共通する内容ではないかと思います。

・勉強のためにアプローチしてくるVC
読んでそのままですが、僕らの事業分野への興味があるが知識や経験はないVCが、知識を得るためだけにアプローチをしてくることがあります。実際には投資をするつもりがなくても、上記で紹介したプラットフォームなどでは見分けがつかないので、面談を設定してしまいます。アプローチがあった時点で、VCについての下調べ、担当者のチェックはしたほうがいいと思います。僕らはレクチャーをするために時間を割いているわけではありません。本気度のあるVCと面談したいのです。

・アイデアをパクりにくるVC
これも読んでそのまま、すでに同ジャンルへのスタートアップに投資済みだが興味本意でアプローチしてくるVC。もしくは新規参入をしようとしている大手のエンタメ会社系CVC。これは上記の勉強したいVCよりも悪質ですが、正直見抜けません。なので対策として、プレゼン資料にコア技術・ビジネスモデル・運用のポイントなどの核心的なことは入れず、質問があった場合にAppendix的に見せたり説明をする、ミーティング開始時にすでに同ジャンルへの投資経験があるかどうか、などを聞いています。

スタートアップにとっては、VCが興味を持ってくれるのは嬉しいものです。ミーティングを設定したり、質問にどんどん答えてしまうのもわかりますが、中には投資する気がないのにアプローチをしてくる人がいることは頭に入れておいたほうがよさそうです。

VCとの面談はかなりカロリーが高く、会社のキャッシュフローとの戦いだったり、精神的に追い詰められたり、焦ったりなどもすると思います。以前TechCrunch の記事だったと思いますが、資金調達は数十社と面談して2〜3社が投資してくれるのが普通、というものを見た記憶があります。僕らもまだ調達途中。その言葉を信じて同じような状況のスタートアップ経営者のみなさん、頑張っていきましょう!

それでは再见~


日本と中国をエンタメで繋ぐのが目標です。青島ビールを毎週末飲んでいます。サポートいただいた場合は、美味しい青島ビールの購入費用にさせていただきます。