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流行り廃りと自己責任
X(旧Twitter)を見ていると、山本貴嗣先生のこんなポストが流れてきました。山本先生は劇画村塾で高橋留美子先生とともに学び、大学在学中の1978年にデビュー。46年目のベテランです。説得力があります。
「今の絵柄はこうでなきゃ」
— 山本貴嗣 (@atsuji_yamamoto) April 8, 2024
という「今の絵柄」が次々と車窓の外を過ぎ去っていく風景のように「過去の絵柄」になっていくのを四十数年見てきました。
「今」などというものにこだわるのもいいけど、こだわらずに生き残っていった絵描きが歴史上山のようにいますし、それでいいと思います
「今の絵柄はこうでなきゃ」
という「今の絵柄」が次々と車窓の外を過ぎ去っていく風景のように「過去の絵柄」になっていくのを四十数年見てきました。
「今」などというものにこだわるのもいいけど、こだわらずに生き残っていった絵描きが歴史上山のようにいますし、それでいいと思います
全くそのとおりだと思いますので、いささか本論から打線しつつ、雑感を付け加えたいと思います。
①昔からいる編集者
今の絵柄を作家に求める編集者は、「どうせ数年で異動になるし、流行に乗っかって無難な小ヒットを飛ばしたい。冒険して大失敗はしたくない、出世に響くし。定年後の漫画文化なんて興味ないし、漫画家の人生なんてもっと興味ないので、ひとつパクリとバレないレベルで、よろしく」の、言い換えだと思って良いです。
身も蓋もない言い方ですが、そういう編集者は伝説のトキワ荘の昔からいて。この作家の絵柄を参考にしろというパクリ命令に嫌気が差し、筆を折った方もいたと、藤子不二雄先生が語っておられた記憶が。そういう意味では、1950年代からある悪癖でしょうね。
②営業・販売部の壁
この件に関しては、Twitterではこんな意見もいただきました。
営業「ただでさえ縮小傾向だとか売り上げ減とか言ってる状況で当たるか分からない博打の責任なんて取りたくないし、数字が見える絵柄やネタしかGOを出しませんよ」というのも追加でhttps://t.co/BW9zweMOhU
— 真上犬太(まさがみいぬた) (@plumpdog) April 8, 2024
営業「ただでさえ縮小傾向だとか売り上げ減とか言ってる状況で当たるか分からない博打の責任なんて取りたくないし、数字が見える絵柄やネタしかGOを出しませんよ」というのも追加で
販売部は、売れる理由を求めます。でも、心身の初連載に、そんな根拠はありますか? 漫画なら、雑誌のアンケートという指標もありますが。これが新人小説家の初単行本なら。「今売れてる〇〇先生に作風が似ています」「●万部売れた作品と同じジャンルです」とか、そういう物を求めていたら、新しい才能は出てきづらくなりますよね。
③強いギャンブラー
話は脇道にそれますが、こんな意見が流れてきました。
小説においてプロとアマチュアの境界線を引くのは難しいけど、多くの小説家さんと仕事するなかで『ブレが少ない』作家さんが現場で重宝されるっていうのはあるかなと。
— オタクペンギン(社長) (@NovelPengin) April 9, 2024
スケジュールって意味でもそうだけど、メンタルやクオリティにおいてブレを軽減する術を持っている人は生存率めちゃくちゃ上がる。
小説においてプロとアマチュアの境界線を引くのは難しいけど、多くの小説家さんと仕事するなかで『ブレが少ない』作家さんが現場で重宝されるっていうのはあるかなと。
スケジュールって意味でもそうだけど、メンタルやクオリティにおいてブレを軽減する術を持っている人は生存率めちゃくちゃ上がる。
神戸大学の宮原泰之教授でしたか、ギャンブルに強い人の特徴をラジオ番組で聞かれて、自分なりの方法論を一貫させる人、みたいなことを語っておられました。
こういう状況ではこうする、という法補論があり、たとえそれで目先の勝負で負けることがあっても、ぶれない。そういう人が、トータルでは勝つと。
作家に関しても
④老舗料亭の生存策
今風の絵柄を取り入れろ論とも重なりますが。「今はこれが流行りだから」と編集者に言われ、付和雷同するタイプは、けっきょくは生き残らないような気がします。
ただ、老舗の料亭は頑固に味を守っているかといえば、実際は流行に合わせて変えているんですよね。
でもそれは、流行りを何でも取り入れているわけではなく。
家伝の味の基本があり、その上で不易と流行を両方持っているのでしょう。
潰れる老舗は、蕎麦うどん屋なのに、流行ってるからとカレー屋を始めるタイプ。
生き残る老舗は、蕎麦の出汁をカレーに入れることで美味しいカレーうどんを出すタイプかと。
⑤己を守るのは自身
そして、著作権の非親告罪化についての、こんな意見も。
著作権は、作者の権利だからです。作品は自分のものであるという主張をしたい人達が、非親告罪化をしようとするのは明らかに矛盾です。著作権が、創作的な表現の作者だけの権利であり、独占的で排他的で一身専属である限り、親告罪でなければなりません。なぜ他人が俺の作品の権利に口を出すのか。 https://t.co/JnIoDuuanM
— 未識🐟 (@mishiki) April 8, 2024
著作権は、作者の権利だからです。作品は自分のものであるという主張をしたい人達が、非親告罪化をしようとするのは明らかに矛盾です。著作権が、創作的な表現の作者だけの権利であり、独占的で排他的で一身専属である限り、親告罪でなければなりません。なぜ他人が俺の作品の権利に口を出すのか。
親告罪である以上目が行き届かない状態は避けられないかもしれない。色々と怪しい表現が生まれたとしても、「作者の権利」を守るなら親告罪以外考えられず、他人が口を挟みだす、ましてや警察が勝手に取り締まりでもしたら、それは自分の表現の権利を勝手に国家が召し上げてる状態になります。
— 未識🐟 (@mishiki) April 9, 2024
親告罪である以上目が行き届かない状態は避けられないかもしれない。色々と怪しい表現が生まれたとしても、「作者の権利」を守るなら親告罪以外考えられず、他人が口を挟みだす、ましてや警察が勝手に取り締まりでもしたら、それは自分の表現の権利を勝手に国家が召し上げてる状態になります。
「オマエの表現の権利を守りたいならオマエが動くしか無い」になってるのは、それ以外にするとディストピアになるからです。「国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」のです。
— 未識🐟 (@mishiki) April 9, 2024
「オマエの表現の権利を守りたいならオマエが動くしか無い」になってるのは、それ以外にするとディストピアになるからです。「国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」のです。
まさに、自分の権利とか財産を守るのは、自分です。編集者のアドバイスは一切聞かないというのは、自分は違うと思うのです。ちゃんと自分の中で判断基準があり、その上でその基準に照らして、全面的に取り入れる・部分的に取り入れる・全面的に排除するを、決めるのは自分です。
漫画家というか作家は、個人事業主。責任は重くのしかかりますが、逆に宮仕えよりも自由です。どっちを選ぶかもまた、自己責任ですから。
以下は諸々、個人的なお知らせです。読み飛ばしていただいても構いません。
筆者の小説(電子書籍版)でございます。お買い上げいただければうれしゅうございます。
文章読本……っぽいものです。POD版もあります。
筆者がカバーデザイン(装幀)を担当した、叶精作先生の画集です。POD版もあります。
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