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売れる方法を教えるのが講師の仕事?

X(旧Twitter)に、こんなポストが流れてきました。

「ボクが作っていて楽しいものだけ作って、売れるようになる方法を教えるのが、お前みたいに学費取ってる先生だろ」

期待してくれてるのは嬉しいけど、それはバイヤーとかの仕事だ。

「自分は全く楽しめない映画だったけど売ってみせた」

そんな話をバイヤーさんから聞いたことは何度もあるし(続

https://x.com/game_sennin/status/1814511700747690167

そしてそれは相応のお金、時間、人を費やして実現したことだから、教わったとしても再現できるかは別の話で、まして「タダで出来ることを教えろ」なんて話になるなら、先生どころかバイヤーでも無理。
だから、自分も楽しい、他人も楽しい題材で創作すること、がいちばん建設的っていう話に戻る

https://x.com/game_sennin/status/1814511702626726029




①攻略本文化世代

なんとも、ゲーム世代の攻略本文化というか……。お金を払えば、作家になるゲームを攻略できて、誰でも作家になれるならば、世の中はお金持ちが作家になって、印税生活ですね。もちろん昔の文豪は、宮沢賢治や太宰治などのように実家が裕福な人間が、多いのですが。それは、文化環境の優越的な面ではありますが。作家自体が少なく、市場が未成熟な時代ならともかく、ラノベ作家でも10000人近い現在、それは難しいでしょう。

私はこういう事を言われた事が無いけど、正直、ごく一部の運と才能に恵まれた大天才でもない限り、『ボクが(中略)売れる』なんて状況は無いよ。
『ごく一部でもあるじゃん!』というかもしれないが、先にも書いた通りそれは天才の中の天才なので、『ボク』くんではない。

https://x.com/ichiro_sakaki/status/1814815242456871052

そもそも、売れる・売れないは、運の要素が大きいです。作家をやっていれば、自分よりも才能に恵まれ、努力ももっとやっていて、でも売れてない人なんて、たくさん見ます。運の要素が大きくて、鍋島雅治先生は7割が運だと語っておられました。9割だという人もいます。作家になるのをなにか資格試験で、お金を払えばヒットすると思っているなら、詐欺師に騙される危険性があるので、気をつけたほうが良いですよ、としかアドバイスする言葉はないです。

②才能は嚢中の錐

機動戦士ガンダムなど数々のヒット作で知られる富野由悠季監督も、「自分に技術とか個性がありゃもう20歳までで売れてるよ。売れてないってことはボンクラなんだからお互いに。ボンクラが他のボンクラに勝とうと思ったら勉強しかない。勉強ってのは、出来るやつのとか、皆が言ってることは正しいだろうって思ってそれを自分のものにしちゃえ。それだけのこと。」と、厳しい言葉を述べておられます。才能とは袋の中の錐のようなもので、必ず外に出るという意味で、『嚢中の錐』という言葉さえあります。

講師やってた時はまず1発目に「まだ教室にいる時点で君たちは天才ではない。天才ならとっくにデビューしてヒットを飛ばしている。事実、十代で成功している先人はいる」とカマしている。

https://x.com/kasai_sinya/status/1814815762537984026

上條淳士先生が『ZINGY』や『To-y』の連載をされていた時、アシスタントに入っていたのが中津賢也先生に斉藤むねお先生、きたがわ翔先生などなど、共同執筆社のYoko先生も含め、10代でデビューを決めた人間が、片手の数以上でやっていたそうで。そうやって、才能は偏在し。ほとんどが、30年40年経っても、まだ現役なわけで。才能とは、残酷な現実です。であるならば、自分が先ずの嚢の中に入る必要があります。

③天才はいるが…

MANZEMIの講師陣は、合計で3桁近くの人間のデビューに関わってきましたが、ある講師が「こいつは間違いなく天才だ」と思った学生は、デビューに至らなかったとか。また、赤信号わたる・中川まなぶ・カメントツ・八重垣十束各位は講座の同期で、この期からは他にアニメのプロデューサーなども出てるのですが。一番絵が上手く、キャラ立てもオリジナリティも高レベルだった受講生は、プロの道を選ばず就職しました。

あえて一つだけ。
二十年ばかり専門学校だの大学だので教えさせてもらってるが、一人だけ、『あ、コイツ天才』『多分、私じゃコイツみたいなのは書けない』って生徒さんと会った事がある。
後にSF大賞新人賞をとった照下土竜氏だが。

https://x.com/ichiro_sakaki/status/1814818175328141751

デビューする・しない、売れる・売れないは、つくづく環境や運だと思いますね。ただ、才能に恵まれないが、執着心という好きの虫を飼ってる人間が、あんがいデビューいていく気がします。浪曲の世界には「名人に美声無し」という言葉があるそうです。

そういえば、西原理恵子先生が美大時代、同期の誰もが、彼の才能と自分の才能を取り替えられるなら、悪魔に魂を売っても良いと思った方は、事故で亡くなったとき「建設現場アルバイトAさん」と報じられただけだった、とか。

曲がりなりにも表現や創作でご飯が食べられるというのは、とても幸運なことなのでは、つくづく思います。


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