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「子どもが泣くことを特別視してない?」保育園の先生の言葉にハッとした。

「お母さん、もしかして子どもが泣くことを、特別扱いしていませんか?」

4歳息子の保育園の担任の先生のひとことに、私はギクッとしました。たしかに私は息子が泣くと、いち早く泣きやませようと、あの手この手の手段をつかっていたからです。


4歳の長男、モリが「保育園に行きたくない」と毎朝泣くようになり、ずっと悩んでいた私。担任の男の先生が「ちょっと面談しましょうか?」と声をかけてくれました。

モリは保育園の玄関に到着するやいなや、

「ママぁ今日ははやくお迎えにきてぇ・・・」

"泣くモーニングルーティーン”に突入。園の玄関で抱っこしながら、10分も15分もモリの話を聞き、なぐさめます。次々と登園してくる同じクラスのお友達が不思議そうに、その光景を見ています。

今すぐ仕事へ行き、やるべきことを終わらせたい私。
ついつい「うーん・・・わかった。じゃあ1時間早い4時半に迎えに行くから。それでいいね?」などと譲歩してしまうことが、ここ何日も続いていました。モリが泣きやみ、しぶしぶ園に入っていってくれるからです。


「お母さんは、朝のこの状況をどうしたいですか?」

先生の質問に、私は「もちろんサッサと保育園に行って欲しいに決まってるじゃん」と瞬時に思いました。ですが焦らず、説明します。

「そうですね、もちろんモリには泣かずに保育園に行ってほしいと思っています。そして私自身も、日中に仕事ができないと、早朝や深夜まで仕事がずれこんでしまうので、心身ともによくない状況が続いています。できれば朝はすんなり、そして夕方も5時半まで、保育園に行ってくれるといいのですが・・・」

先生はまあそうだよね、という風に頷きました。私自身がどうしたいかを再確認させるために、質問してくれたようでした。

「自分が泣けば、お母さんが早く迎えに来てくれると学習しちゃってるのかもしれません。お母さんが行ったあと、『いつまで泣いてるんですか』ってしばらく放って様子をみるんです。すると、数分してすぐに友達と遊び出すんですよ」

そう、それは私も知っていました。朝どんなに泣いていても、しばらくするとキャッキャと遊んでいることを(笑)忘れものを届けに行ったとき見た光景は、この記事でも書きました。なので保育園がいやなのではなく、ただ私と離れるのがいやで甘えているようなのです。

「お母さん、もしかして子どもが泣くことを、特別扱いしていませんか?」

ギクッ。冒頭の先生の質問は、このタイミングで聞かれました。

「うーん、そうかもしれません。子どもが泣くとハラハラして、一刻も早く泣きやませなくちゃと思ってしまって。それで抱っこしたり、子どもの話を聞いたりしていると、どんどん時間がなくなってしまいます」

「そうなんですね。泣くっていうのはね、喜怒哀楽の表現のうちのひとつにすぎないんです。笑うとか、怒るとかと一緒。だから泣いていても、そんなに大げさに扱うことはないんですよ」

へええ、そうなんだ。たしかに、晴れの日もあれば、雨の日もあって、それと一緒なのかな。先生に聞いてみたら「そうそう」とのこと。

「もうモリくんも4歳ですから。お母さんが仕事に行かなくちゃいけないとか、朝は時間がないとか、話せばちゃんと理解できる年齢なんです。朝話す時間がなければ『いま時間がないから、夕方帰ってきてからじっくり話を聞くからね』と説明すればわかってくれます」

そっか、朝は時間がないなら、夕方聞くよって言えばいいんだ。どうしても朝のその場で聞かなければいけないと思っていた私。聞けば簡単なことなのに、その手があったか!と思いました。

「この間どうしても朝急いでいて、モリが玄関で泣いているのに、片手でバイバイして『5時に来るから!』とだけ言い残して、自転車で園をあとにしてしまったんです。それがちょっと罪悪感で。そこにいた他のお母さんからも、ダメなママと思われてるような視線を感じました(笑)」

先生は笑いながら、手でそんなことない、として言いました。

「いえいえ、お母さんにはお母さんの時間も、やることもありますから。それはちゃんと説明すればいいだけです。家の中で、子どもたちが主役なんじゃなくて、家族の一員としてモリくんたちがいます。むしろ親のほうが主導権を持っていいんですよ」

なるほど。私はこの先生のひとことに、すーっと肩の力が抜けるような気がしたんです。

私は息子のモリが朝泣いていたら、なんとしてでも抱っこして、なだめて、話を聞いてあげなければいけないと思っていました。毎朝のそのルーティンをこなすだけで、もうクタクタ。出勤後はむしろホッとして、一息つきたい気持ちになるくらいでした。

「モリくんは今は泣く、ということで感情を表現しようとしています。でもこのさき小学校に上がって、自分の気持ちを泣くことで表現したら、友達もびっくりしますよね。泣くんじゃなくて、言葉で表現するほうが、ちゃんと伝わるし便利だとわかる必要があります」

なるほど。そのためには私自身が、毅然とした態度でちゃんと説明して、わかってもらうこと。親がその姿勢を見せることで、私自身が楽になるだけでなく、息子にも「言葉で説明すること」を体現できると思いました。泣かれたから抱っこする、付け焼き刃の約束をする、とかではなく。


「モリくんはここ最近、とても自信をつけています。園でも楽しそうな表情を見せることが多いし、クラスでひとりだけカニを捕まえられて、みんなから羨望のまなざしを受けたり(笑)この間はボールを隣のアパートに投げてしまって、怒られたりもしたんですけど、そうした失敗もふくめてどんどん体験させてあげたほうがいいです」

私は先生がこんなにもよくモリを見てくれていることを知り、ちょっと胸が熱くなりました。目がじんわりうるうるし、もう少しで涙が出そうでした。

モリがもっともっと自信をつけられるように、まだまだ私にできることはありそう。少なくとも泣いて感情を伝えることを擁護するのではなく、言葉で伝えることをサポートするのは私の役目だ。やるべきことが見えて、私はすっきりと、晴れやかな気持ちになりました。

保育園の先生は子どもだけでなく、親のこともサポートしてくれているような気がします。近ごろは悲しい保育園のニュースをよく見かけますが、こんな温かなプロフェッショナルな先生もいるってことを知ってもらいたくて、書いてみました。

子育ては、まだ見ぬ道を進むジャングルのようです。でもそのジャングルの中で、時にプロの方が案内してくれたり、仲間と出会えたり、その道のりは案外悪くない。毎日のように発見があって、私自身が成長している気がします。

育児中のみなさま。一緒に頑張っていきましょう。たのしい1週間になりますように。

小森谷 友美
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