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満員バスで泣く赤ちゃんと、焦る新米パパを、救ったかもしれない話

ひとりめの育休明け。
私だけで電車やバスに乗っていると、不思議な感覚がありました。

「ウァァエェェェン」「ェェェン・・!」

うちの子が泣いてる!

ハッとして泣き声がする方向に即座に目をやると、別の子が泣いているんです。私は赤ちゃんの声を聞くと、息子がいないはずの場所でも「うちの子!?」と本能的に反応してしまうようになっていました。

そして「ここにも頑張っているママやパパがいる」と、仲間を応援するような気持ちになったりもしました。


ある日の夕方、仕事が終わって、バスに乗ったときもそうでした。

発車前のバスの中は、ちょうど通勤ラッシュの時間で、ぞくぞくと人が乗ってきます。夏前で、じめじめと暑く、車内はムッとした空気に包まれていました。

私は運よく座れたのですが、そのすぐ斜め前に、抱っこひもをつけた30代前半くらいの男性が立っていました。中には、まだ生まれて数ヶ月もしないような、小さな小さな赤ちゃんが。

その新米パパと思われる方は、片手にオムツの大きな袋、もう片手にはぱんぱんに詰まったスーパーのレジ袋を持っています。うわあ、大変そう。席をゆずろうかな・・と思ったそのとき、赤ちゃんが泣き出してしまったんです。

赤ちゃんってふしぎなもので、立って抱っこされたほうが落ち着くことが多いんですよね。座ろうものなら「サボらないで!立って!」と言わんばかりに、もっと泣き出します。

パパは両手に大きな荷物を抱えたまま、泣いている赤ちゃんを立ってゆらゆらと揺らします。

「もうちょっとで発車だからね。がんばって、がんばって・・」

私はすぐ後ろでそれを見ながら、祈るように時がすぎるのを待ちました。

しかしそんな祈りはもちろん赤ちゃんには届かず、

ェェエエエン、ェェェエン

だった泣き声は、いつの間にか、

フンギャーーーーー!!ウンギャーーーーーー!!!!

とギャン泣き状態へ変わっていくのです。

困ったように、一生懸命からだを揺らす新米パパ。でもそんなの効果ないとばかりに、赤ちゃんはますます声を大きくして泣きわめきます。
額に汗をかいてあやすパパの焦りは、周りにもひしひしと伝わってきました。

早く帰りたい人がギュウギュウに押しこめられた、発車前のバス。梅雨のむんとした空気がたちこめる中、赤ちゃんの泣き声だけが響いています。イライラした雰囲気はMAXです。

私は「何かオモチャでもあればいいな」と、あわててバッグの中を探しました。でもいつも入っているミニカーや電車も、こんな時にかぎってない!

その代わりに見つけたのが、これでした。

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マスクの袋・・・!!!えーーー。

イチかバチかわからないけど、とりあえず急いで、このマスクの袋を両手に持ってカシャカシャと音を立て、泣いている赤ちゃんに後ろから聞かせてみたんです。

すると。


「・・・・・・・・」


この世の終わりみたいに泣きわめいていた赤ちゃんが、ピタッと泣きやみました。まさかこんなに即効性があると思わず、私もビックリ。パパも急にマスクの袋で音を立てた私と、泣き止んだ赤ちゃんを交互に見て、驚いた顔をしていました。

マスクには「超快適」って書いてあるけど、まさにバスの中が超快適な空間に(笑)ちょうどそのときバスが発車し、焦りとイライラがつのっていた車内に、ほっと安堵する空気が流れました。

パパは丁寧にお礼を言ってくれ、私の前の停留所で降りて行きました。

まさか私の育児経験が、こんなところで役に立つとは思わなかった。私はずっとじぶんの息子を泣きやませるために、ビニール袋をカシャカシャ鳴らしていたんです。調べたところ、その音はどうやら胎内音に近いとかで、赤ちゃんは安心できるんだそうです。


そういえばヨーロッパに行った時、長距離電車で泣いた赤ちゃんを、かわるがわる周りの人があやしたり、抱っこしていた光景を思い出しました。

日本でもこんなふうに、周りの人が気軽に手を差しのべられ、それを受け取る人も寛容であれたらいいな、と思いました。泣き止まなくても、周りの人の温かい目線があるとわかるだけで、ホッと安心できることもありますから。


今でもたまに思い出す、あのバスの光景。今ごろあの赤ちゃんも、息子と同じくらいに大きくなっているのかな。

きょうは水曜日。今週もあと半分。
はやく梅雨が終わって欲しいな〜。よい1日を。

小森谷 友美
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