「三国志、中国での一番人気は曹操」!? 周来友氏の話は虚偽か誤解か

昔『ここがヘンだよ日本人』というテレビ番組に出演していた有名中国人、周来友さん。

彼が書いたNewsweekの三国志コラムのなかで、私が大陸在住者から聞いた話や、中華圏SNSで眺めている事実とは異なる話がありました。

Twitterでもご本人に指摘させていただいたのですが、返信を読み、意図的な虚偽ではなく誤解の可能性もあるなと感じました。

(ところで周さんの完璧で美しい日本語には感動しました。在日暦が長くても、ここまで完璧な日本語の文を書ける外国の方は少ないように思います。いっぽう私のほうは攻撃キャラを演じるため失礼な返信をしてしまい、申し訳ないです)

一連の話をメモしておきます。

中国では曹操が一番人気で劉備は嫌われている… 30年前の常識

まず、問題の記事はこちら。

『「三国志」は日本人も中国人も大好き(でも決定的な相違点がある)』

画像1

引用:

日本人が最も好きな人物は、物語の主人公として聖人君子のように描かれる劉備だろう。一方、中国での一番人気は「悪役」曹操だ。
奸雄だが、武芸に秀で、詩人でもあった曹操は、才能ある部下を見いだすことにたけ、かつて敵陣にいた人材でも構わず重用した。それに比べ、文才はおろか武術もパッとしない劉備は、涙を利用し人を動かすような情けない主君。それがこの2人に対する中国での一般的な評価だ(私の個人的見解じゃないですからね……)。

確かにこれは文化大革命の時代に近い30年前の大陸なら、正しい状況報告と言えます。

私も当時のイメージ(来日した中国人たちから聞いた情報)のまま、

「中国では曹操が人気。劉備や諸葛亮は貶められて嫌われている」

と思っていました。数年前まで。

しかし下の記事で書いた通り、現代の大陸をよく知る方から「そうではない」とご指摘をいただいき、自分でも色々調べたところ今は評価が逆転していると知りました。逆転、と言うか昔のオーソドックスな『三國演義』イメージに戻ったのですね。

現実を言えば文革時代でも中国庶民の『三国志』人物に対する人気順位は昔と変わらなかったが、本音を言うと殺されてしまうので「曹操様が好きです! 劉備や関羽、諸葛亮は大嫌いです!!」と叫ぶしかなかったのだと思います。

さらに現代中国の若者は史実をよく学び、『演義』一辺倒だった大昔よりも正しく人物像を把握しているようで、素晴らしく教養が上がったなという印象です。※ただしこれは文学好きな胡錦涛政権時代に育った若者たち。毛沢東を崇拝する習近平政権となってから、また状況は変わっているはず

中国の30年と現在

何故に30年前の中国大陸人が「曹操様好き、劉備嫌い」と言わされていたのかというと、下の記事に書いた通り毛沢東の政策によります。

毛沢東は自分を曹操になぞらえて激賞したので、曹操を批判することは毛沢東を批判することに等しくなりました。つまり曹操を悪く言えば殺される状況だった。殺されたくないから、当時の中国人は必死で曹操を称え、学者も曹操を褒める論文を大量に書き続け、逆に曹操へ対立した蜀人物たち(特に人気の高い劉備・諸葛亮)を貶める悪口を叫び続けたのです。

【参考】

意外にも、周さんもこのような歴史事実をご存知で言及しています。堂々とこの事実を公開しているところを見ると、プロパガンダの意図を隠して日本人を洗脳するための記事を書いたわけではないのでしょう。周さん自身も自分がプロパガンダで教育されたとは思っていないのかもしれない。

周さんの記事より再び引用:

ちなみに、中国で劉備のマイナスイメージが広がったのは、毛沢東が曹操推しだったためだという。

なお、この毛沢東による「曹操推し」を受け継いで高めているのが日本人左翼と在日朝鮮人です。この者たちの声があまりにも大きいために、今は中国人よりも日本人のほうに曹操ファンが多いと思われています。

日本の状況については以下の記事で説明しています:

周さんの置かれた環境から、誤解である可能性も

周来友さんは1963年生まれ、まさに文化大革命時に幼少期を過ごした人です。

毛沢東の教育を浴びて育った世代なのですから、もしかしたら今も本気で「曹操は文才あって仁義ある素晴らしい人格者」と信じているかもしれません。

少なくとも、周さんと同世代の大陸人がまだ文革時代の歴史観を信じているということは事実だろうと思います。

また、若い世代でも共産党員や、共産党に近い考え方の人たちは毛沢東の思想通りに考えます。毛沢東崇拝の習近平政権となってからは、なおさら文革時代に近い考えをする若者が増えたでしょう。

このような共産党寄りのコミュニティで会話している限りは、「曹操は素晴らしい人格者で、劉備は最低最悪の劣等人間」という話になるはずです。そして、それが「中国人の一般的な評価だ」との認識になる。

実はそれは中国大陸人の1割に満たない人たちの考え方であるはずですが、周さんの環境からはそのことを把握するのはなかなか難しいかもしれません。

我々だって他のコミュニティや若い世代の考えを把握するのは難しいもの。それ以上に大陸人コミュニティは強固な“クラスター”で分かれているので、仕方ないと言えるでしょうか。

(略)

「曹操を好きだと言う日本人は道徳崩壊している!」これが中華圏の一般意見

“曹操は中国人に嫌われている”という裏付けとして、中国~台湾のメディアが書いた記事を引用しておきます。

これが現状の真実を著した「中華の一般意見」だと言えます。


■中国メディア「曹操を好む日本人、強者崇拝の愚か者」

こちらは意外にも大陸のメディアによる意見です。

『日本人はなぜ曹操を好むの? 中国ではあまり良いイメージじゃないのに=中国メディア』より引用

 中国4大名著の1つである三国志。日本でも三国志に関する小説やゲームなどが多く存在し、なかでも劉備玄徳や諸葛孔明などと並んで、曹操の人気が日本では非常に高い。
中国メディアの今日頭条は、「なぜ日本人は熱狂的なまで曹操を尊敬するのか」と題して、日本人から見た曹操について紹介する記事を掲載した。日本人の曹操好きは、一見すると日本人の国民性とは符合しないように見えるが、実際にはそうでもないという。

「日本で曹操人気が高い」という状況を知って中国人たちは驚いています。このような驚きは中国大陸人が利用するSNSなどでもよく書き込まれています。

オタ系SNSではもっと過激な感じで、「虐殺魔曹操を崇拝する日本の三国迷※、マジキチww(意訳)」と嘲笑されていますが。

※「三国迷」とは、史実を一切学ばずコーエーゲームや『蒼天航路』のフィクションを本気で信じ、おかしな説を吹聴して回る日本の三国志ファンを嘲笑した呼び方です

日本における曹操の評価は、……曹操がいなければ魏書はなく、魏書がなければ倭人伝もなかったため、邪馬台国時代の日本の歴史を知ることはできなかっただろうとしている。

これは笑える勘違いですね。日本の三国迷は、『魏志倭人伝』が三国時代の記録書だということさえ知りませんよ(笑)。無知ゆえに『蒼天航路』を史実と思い込んでいるのですから。

下記引用のような上級マニアはもちろん、「三国迷」の嘲笑から除かれます。

【参考。蒼天航路という漫画について、マニアの意見1】

BA回答:

史実に忠実か、と問われたら「そんな事はない」としか答えようがないんですよね、アレ。正史準拠だとか言われてますし実際に連載開始当初からそう触れ込んでいたのでかなりの人が誤解してますが、実のところ「演義準拠ではない」というだけの話で結局フィクション作品であることに変わりはありません。まあ、演義で出てこない人物を多数紹介した事は評価出来ますし、曹操を主人公に据えたのも斬新さがありましたが、そもそも初っ端から曹操と面識もなければ正史で何の絡みもない張奐を重要な役回りで登場させています。あれで「史実に忠実」とか言われたら鼻で笑ってしまうレベルですね。

【蒼天航路という漫画について、マニアの意見2】

BA回答:

感想を述べれる場なので回答させていただきますね。この作品の絶妙な気持ち悪さをどう表現すれば良いのか難しかったのですが、一言で言えば意識高い系レスバ自慰漫画だと思います。この作品の定番演出として
登場人物がキメ顔で格言めいた台詞を吐いて
悦に浸ったり相手にマウント取るのが随所に見られます。この作品内では言葉で相手を制圧する奴が偉いという序列になってます。基本的に曹操の言論は絶対でレスバ最強で精神的に常に優位に立ってます。
史実では失敗したり苦境に陥ってる箇所で意地でも恥ずかしい格言めいた言葉をキメ顔で語って自己満足してるのって何か宗教みたいで気持ち悪いじゃないですか。演義の被害者意識なのか無理矢理にでも曹操礼賛したいという気持ちが先走った自慰漫画だと思います。さらっと英雄視してる、って感じでもないですよね。北朝鮮の将軍様みたいに粉飾が行き過ぎるとかえって否定してやりたくなりますよね。


元のページに戻って。次の分析、

日本人は「強者を崇拝する」習慣があると主張。曹操については悪い面もあるものの、成功者であることには違いないため、日本人から好かれるのも理解できると論じた。それで最後に、「日本人からすると、政治家としての劉備は理想を追い求める理想主義者で、曹操は実際の状況を把握するのが得意な現実主義者なのだ」と結んだ。

などと書かれています。つくづく恥ずかしいですね……。

「強者を崇拝する」「虐殺しても独裁した者が正義」という思想は共産国の考え方ですが、まさか逆に共産国の人たちから日本人がこんなイメージを持たれることになるとは。情けない。

確かに現代日本人には「悪いことをしてのし上がった成功者を崇拝する」傾向があることは否めません。

ひろゆきや、ホリエモンなどを崇拝する若者。小山田圭吾の虐めをカルチャーと呼んで称賛する鬼畜たち。日本にはこんな人たちが増えた。「何をやっても言ってもとにかく金稼いだ者が正義、他者から奪って踏みにじった者が正義」という卑しい考え方、いったいどこで身に付けたのでしょうか? 自分のなかに義の心を一切持たないのですね。

かつては判官(ほうがん)びいきで同情心に富んでいた日本人。ここまで民度が落ちました。日教組やメディアによる左翼教育が蔓延した結果、暴力愛好家が増えたらしい。

――と、これも傾向であって日本人全員ではありません。

実は対外的に見えている「日本人の曹操ファン」は90%以上が左翼・反日団体の人たちです。ネットで大声で曹操崇拝を叫んでいる者たちは左翼の活動家ですし、「曹操は善良な正義の人だった」と評価書き替えのための書籍を出しているのも孔子学院の学者たち。(孔子学院は中国共産党のプロパガンダ機関ですが、日本では古典的な左翼学者が毛沢東思想を教えている様子)

劉備や孔明が好きだという日本人ファンは今も多いと思うのですが、ネットでは暴言を浴び脅迫を受けるので発言できなくなってしまいました。下の関連記事参照。

ただ、曹操=織田信長のような美形というイメージを『蒼天航路』で刷り込まれた結果、鵜呑みにして曹操ファンになっている愚かな日本人も一部にいるのは確かです。曹操が民衆虐殺したという史実さえも正当化して萌え萌え叫ぶのは異常。このような暴力愛好家の声が大きいのは、日本の恥と言えます。

【関連記事】

■「曹操ファンは人間として不完全」「曹操を忌み嫌うのは正常な道徳観の証」中華圏で日本の曹操崇拝は蔑みの的

もう一つ、カルチャー誌からマニアックな意見を引用。

ここには「中華圏」と書かれているのでたぶん大陸~台湾も含めた華人の一般意見だと思います。

『中華娯楽週報 第23回:『三国志』のここがヘンだよ日本人! 曹操や呂布が愛されて関帝が凌辱される!? 本場の人の疑問をぶつけていくぞ!』より引用。

本場の人と日本人との理解の違いを客観的に把握した上で、中華の考え方を日本の読者に伝えるために、それらの相違点をちょっとコミカルに表現したいと思う。決して日本人をバカにするわけではないので、勘違いしないようにね!

その通り、あくまでも中華圏で語られている意見を引用しただけであって日本人をバカにする目的で書かれたわけではないと思います。

それなのにコメントには「日本人に喧嘩売ってるのか!」という冷静ではない意見が殺到しています。そのようにネトウヨぶって攻撃している書き込み者は、おそらく日本人ではないのですが。

(雑談略)

本題。これが、中華圏の一般意見です。

曹操が嫌われないのってどういうことよ!?
これも原作を読まないのが原因であると思われる。小説『三国演義』では、曹操は才能にあふれ、誰とも違う独特な魅力を放っているが、同時に残忍な悪漢であり、死ぬ前は彼に殺された無数の人々が続々とその脳裏に浮かんでくるほどの殺人魔である。心がけが極めて悪いよこしまな逆賊であり、漢の忠臣である劉備と鮮明な対比を成している。「乱世の奸雄」という呼称は格好良く聞こえるかもしれないが、多くの見下げ果てた悪事を働いて、今日に至るまで中華圏の人々に罵られている悪者だ。
曹操に魅力を感じるのは奇妙なことではないが、かと言って彼が嫌われない理由にはならない。健全な倫理観を持った人ならば、曹操に憎しみの感情を覚えるのはごく普通のことである。『蒼天航路』の影響もあるだろうが、曹操に対して正義感に基づいたネガティブな感情を持たない者は、何か人間として不完全な気がする。
あるエピソードを紹介しよう。京劇で曹操を演じた役者があまりにも上手すぎた(=邪悪すぎた)ため、義憤に駆られた観客が刀を持って舞台に上がり、曹操の役者を殺したという惨劇が実際に発生したのだ。それくらい、歴史の巨悪である曹操は嫌われているキャラクターである。もちろん、この事件は極端だし、現実と演劇を混同して人を殺傷するのは言語道断だが、曹操を忌み嫌うのはある意味、正常な道徳観の証とも言える。

完全に同感ですね。太字の箇所、拍手です。

『蒼天航路』を史実だと教えられて鵜呑みにしている曹操ファンは、曹操が何をしたか本当のことを知らないで好きになっているのでしょう。織田信長と似た頭の切れる美形だと思い込んでいる。愚かだなと思いますが、無知による思い違いは本当の知識を与えれば治る見込みがあります。

しかしそうではなく、上記事に攻撃コメントを書き込んでいる者たちのように、史実を知ってもなお「我が曹操様は偉大な人格者だった」と呼ぶ者たちは明らかに人間として不完全。倫理観・道徳観が崩壊した鬼畜だと思います。

女子供・胎児・犬まで含め、無抵抗の弱者を好き放題に虐殺した者を「仁義の人」と呼ぶ異常さ。むしろその凶行ゆえに曹操を称え崇めていることが丸分かりで、おぞましく吐き気を覚えます。

前にも書いた通り、この曹操崇拝の信者たちは虐殺を無かったこととして歴史修正した話をばらまいているのですが、史実を突きつけられ言い逃れできなくなると

「当時は民衆虐殺も一般的に許されて称賛されていたことなんだ、だから曹操様のやったことは正義だ」

との異常な理屈で民衆ジェノサイドを擁護します。(人類史で民衆ジェノサイドが称賛されたことは一度もありません。三国時代でも曹操の凶行は激しく非難されました)

まるで中国共産党の鬼畜な主張を眺めているようだと思うのは、私だけではないでしょう。

おそらくこの「崩壊した倫理観」によって曹操のジェノサイドを擁護している者たちは、左翼に染まった暴力愛好家。ネットに曹操崇拝の書き込みを大量に投下している、左翼団体の構成員(またはアルバイト)だと思われます。

こんな公安警察にマークされた団体の人たちによる虐殺礼賛が、「日本人一般の考え」と見なされてしまう現状を心から悲しく思います。

いっぽうで今回、中華圏の人のまともな道徳観には安心しました。この人たちが存在していれば東アジアの未来にはまだ希望があると感じます。

まとめ 人間の道徳観は民族性ではなく思想による

以上の引用から、人間が道徳観を持つかどうかは、民族(血統)ではなく思想によって決まるのだと分かるのではないでしょうか?

左翼でもない日本人なのに曹操信者になっている人は、いい加減に歴史捏造の詐欺から目覚めて暴力愛好の癖を捨ててほしいです。

この国に人間らしい道徳心が戻ることを願っています。


〔この記事はブログからの転載で、一部省略しています。完全版はこちらURLへ https://shoku1800.tokyo/2021/08/post-3930/