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楢崎龍の日記  元治元年皐月一

元治元年皐月一  


夕七つ頃、坂本さまがいらっしゃり、食事をする。
「ここの鰹料理もうまいが、土佐の皿鉢にはかなわんき。」
「それは、どうのような料理どすか?」
「大皿に、鰹を山のように並べて薬味を山のようにかけた料理じゃ。」
「それは、大雑把な料理どすな。」
「ちがうちゃ、鰹がな、今の時期が一番旨い。
それを一番旨く食べる料理っうことじゃ。」
「ここの鰹料理はどうです。」
「ここのも、上手いが、鰹がすくないき。
ところで、名は何という。」
「お龍と言います。龍と書きますえ。」
「ほぉ、わしと同じじゃ。わしゃ龍馬と言うきに。」
「坂本さまは、龍馬さまどすか。私と同じおすな。
京は土佐と違い海が遠いおす。そんなに鰹は手にはいりません。」
「まぁ、しょうがないき。
それは、そうとデートはどないしようか?」
「デートどすか?」
「そうじゃ、デートじゃ、お龍は可愛いき、デートしようぜよ。」
「お店に聞いてきますよって、お待ちくださいな。」
「おぅ、それじゃ飲んでまっちょる。」
お店に聞きに行ったら、お得意さんなので、もう上がって良いと言われ、
坂本さまに言いに行く。
「よっしゃ、じゃぁ、デートに行こう。」と、
私の手を引いて表にでる。
表に出ると、街の人が何事とこちらを見ているので恥ずかしい。
「坂本さま、はずかしいどす。」
「ないが、はずかしいぜよ。
デートとは人目をはばからず手を繋いで歩くことぜよ。」
恥ずかしいので手を振りほどこうとするが、しっかり握っていて外せない。
「誰も、こげなデートはしたことは無いちゃ。
あしらが日の本で最初のデートぜよ。」
人目が集まり恥ずかしい。

だんだら羽織の新選組の人にまた声を掛けられる。
組長らしい若い人が、
「斬れます。」と物騒なことをいいはるので、睨んでいると、
坂本さまが、
「斬られちゃかなわんき、注意するぜよ。」と言い、分かれ、
坂本さまの宿までデートを続ける。
宿で、坂本さまが夫婦にならないかと言うが、
嘘でも騙されたい気がして、了承する。

  

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