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課長 志摩うめこ 35才 (2)

広島の駅から、二人並んでバスの座席に座ると、 
「大丈夫かなぁ?」 
「えっ?」 
「いや、お土産はうめこさんの言うように、 
東京駅で買ったけど、喜んでもらえるだろうか?」 
「大丈夫よ、うちの親はそれ好きだもの。」 
「そうかなぁ、心配だなぁ。」 
家の近くのバス停に着くまで、汗を拭きながら、 
彼は何時までも心配だとつぶやいている。 
彼の手を引いて、家の玄関まで来て、 
「ちょっと待って。」と言い、ネクタイを締めなおして、 
ぎゅっと手を握るのを合図の様に、 
「ただいまぁ!」と声を掛ける。 
バタバタと母が玄関を開けると、 
「初めまして、」とあいさつを始める彼を遮るように、 
「よう、おりんさった。 さぁ、上がって、上がって。」と 
彼を家に引き上げながら、 
「お父さん!帰って来たわよ!」と声を掛けて、居間に通される。
「おとうさん、ただいま。」
すっていたタバコを消しながらうなずくと、
彼がおもむろにお土産をお父さんの前に置いて、
「うめこさんとお付き合いさせてもらっています。
今日は、うめこさんとの結婚をお願いしに来ました。」
「幾つになる? ずいぶんと年下の様だが、」
「はい、八つほど下になります。」
「うちのうめこで良いのかい?」
「はい、よろしくお願いします。」
と床に頭が付くほど頭を下げてた彼を脇で見ていると、
母が、
「まぁ、そんなにしなくても大丈夫よ、ねぇ、お父さん。」
「売れ残りの長女をもらってくれる奇特な人を断るわけはないなぁ。」
「ありがとうございます。」
「お腹は減っていない? 食事を用意してあるから、食べて。」
そう言いながら、煮アナゴや、ワニの刺し身などの料理と、
お酒をどんどん運び始める。
私の方を見て
「あぁ、良かった。」とつぶやく彼が愛おしい。
「まぁ、まずは飲め。」
醉心をコップに注いで乾杯を始めるおとうさんと彼を見ながら
胸をなでおろし、
「飲みやすいからって、そんなに飲むと酔っ払うわよ。」
と注意をしながら、
「久しぶり!」とワニの刺し身に手を伸ばすと
「お客さんが先よ。」
「うん。」
彼にワニの刺し身を取り分けながら、シアワセを噛みしめる。


何時までも続く宴会の合間に、母に言われて、
二階の自室に布団を二つ並べて準備していると
酔っぱらった彼はお風呂を勧められているようだ。
お風呂場に入った彼に声を掛ける。
「背中を流そうか?」
「えっ? 大丈夫? お父さんに怒られない?」
「大丈夫よ。 二人で入るのには狭いわよね。」
「お風呂は広い方が良いな。」
彼はそう言いながら、酔っぱらっているのか、
後ろから胸に手をまわしてきた。
泡で滑る彼の手指が気持ちよくて、声が出そうになる。
体を洗い、狭い湯船に二人つかると、
「シアワセだなぁ」と彼がつぶやく。
「うん、シアワセ。」と答える。
体を拭いて、居間をのぞくと、母がかたずけをしている。
「後は、良いから、湯冷めしない様に、早く寝なさい。」
「はーい」と答えて、二階に上がると、
「ここで、うめこさんが学生時代を過ごしたのか」
「ほとんど、今のアパートに荷物は運んでしまっているので、
卒業写真ぐらいしかないわよ。」
「それは、見たいなぁ。」と言うので、
しまってあった卒業写真を引っ張り出す。
卒業写真には、ポニーテールの私が笑っている。 
「へぇ、うめこさんはこの頃から、うめこさんらしいなぁ。」
「クラブ活動は何をしていたの?」
「ハンドボール部で、キャプテンをしていたわ。」
「ふーん、道理で二の腕の筋肉が凄いんだ。」
「馬鹿ねぇ、もう昔、昔の話よ。 
筋肉なんて今はもうないわよ。」
「そうかなぁ。」と言い、二の腕にキスをする。
なし崩しの様に、ブラジャーを外し、抱きしめられると、
息が上がっていく。
そして、シアワセな夜が過ぎ去っていく。 

・・・
これは創作で、主人公に似た名前の人もフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。 
あくまで、妄想ですので事実と誤認しないようにお願いいたします。
・・・

うめこさんのあえぎ声を聞いてみたい気がするのは、
自分だけではないでしょう。

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